連載

第17回ゲスト「根本宗子のオレ哲学」第2週

_DSC2188連載対談「川本成のオレ哲学」(略してオレ哲)。17回目のゲストは、劇団、月刊「根本宗子」の主宰、根本宗子さんです。2回目は、川本さんと根本さんの作品との出会い、成さんの月刊「根本宗子」出演作などに具体的に迫ります!

COLUMN 2018 5/12 UPDATE

川本:宗子ちゃんの作品は、(宮下)雄也から誘われてゴールデン街劇場で観たのが最初だったんだけど。

根本::唯一私が出てなかった本公演です。

川本::そうだ!西山(宏幸)くんと…

根本::新谷(真弓)さんと、大竹(沙絵子)さんと梨木さんと宮下さんの5人。

川本::5人だ。あの時ゴールデン街劇場だったもんね、まだね。

根本::ゴールデン街劇場も埋まらなかったんですよ。

川本::あ、そうなの? 今では信じられないね。

根本::あの公演の初日の客席はほとんど宮下さんのファンしかいなかったんですよ。初日と楽日はそんな感じですよね。全然ガラガラで、15人くらいしかいない時とかありましたよ。

川本::ものすごい面白くて、雄也が「成さん、オモロイっすよ。今オモロイやつ出てますんで観に来てください」って、なんかもうチンピラみたいに言うわけ(笑)。じゃあ行くよって…。あの時、西山くんともまだ知り合いじゃなくて。

根本::あ、ホントですか? これ(オレ哲)の前ですか?

川本::まだやってない時。新谷さんは面識はあったけど。観てビックリした。どんな人が作ってるの?って思ってご挨拶させてもらったんだよね、確か。

根本::で、ゴハン食べに行ったんですよ。

川本::そうだ行った行った。妻も一緒に。

根本::そうですよ、まだ結婚してない時。今の奥様と観に来て下さって。

川本::宗子ちゃんにその時言われたもん。なんか2人顔が似てますねって。

根本::そう、似てたんですよ。

川本::でもホントに面白くてね、どんな過激な人が書いてるのかなって思ったら、なんかおっとりした女子だったから…。で、また次の公演も観に行ったんだよね。

根本::そうです。次もその次も来て下さって。

川本::あれ何年前になるの?

根本::5年くらい前だと思います。月刊「根本宗子」第6号『恋に生きる人』。震災後で、あの時、振り切ったものしかやりたくなかったんですよね。で、そのあとに月刊「根本宗子」第7号『中野の処女がイクッ』を…。

川本::『中野の処女がイクッ』はホントにすごかったね。震災を取り上げた作品が、当時はいっぱいあったんだけど、ぶっちぎりの1位だったね。結局、あの頃は震災っていうものに、物作る人はみんな触れてたじゃん。けど震災がアートになっちゃうケースが多くて。

根本::なんか特別な物として扱われてる感じがありましたよね。

川本::なんか戦争モノみたいに感じたんだよね。戦争モノって、「日本は戦争をしたけど、二度と繰り返したくないと思います。」みたいな感じになるじゃん。震災モノも大概がそんな感じだったけど、『中野の処女がイクッ』は痛快だったね。

根本::なんかこう日常の中に、普通に暮らしてたところに震災が起きたっていうのをどうにか上手く書きたかったんですけど思いつかなくて、まず『恋に生きる人』みたいなバカな作品書いて、それからだったらなんか書けそうかなと思って。

川本::『中野の処女がイクッ』はメイド喫茶の話なんだよね。

根本::私、メイド喫茶でバイトしてましたから、書けるかなと。冒頭で1人の子の財布がなくなっちゃって、ずっと財布がないないないっていう話をしてるんです。

_DSC2153

川本::で、ちょっと不思議ちゃんな役の桃ちゃん(尾崎桃子)が親身になって探してあげる。でも結局、そいつが犯人だった、と。なんといっても、盗んだ理由は特にないっていうのが衝撃だったよね。

根本::なんか面白いからお金燃やしちゃった、みたいな。

川本::確かに理由がないってことは最近起きるよね、と思って。大体、物を作ったり構成を考えたり脚本にするとさ、面白い理由を考えたりとか、なぜそうなるのかを考えたりするんだけど、「理由がない」っていうのが、これは確かに盲点だなって思った。それから、話の最後にバコンと揺れるんですよ。それが3.11の地震だってことをお客さんに気づかせてくれるんですよ。そしたらその犯人の子が東北出身だってことがわかって、みんな親身になり始めるんだよね。

根本::盗んだ子の方をみんなかばい出しちゃって。

川本::「可哀想じゃん!」とか言って。だけど、「ちょっと待ってよ、私の財布どこいったのよ!?」って、正論同士でモメ出す話なんだけど。そのやり取りで、お客さんが爆笑なんですよ。オレも爆笑してて、震災モノなのに爆笑してるって気づいたという…。でも「これだよな、震災モノで観たかったエンタメは」と思って。

根本::あの頃って、震災があったのだから、自分に起きた些細なことは言えない、みたいな感じがあったじゃないですか。

川本::あった!

根本::それをどうにか書けないかなと思って、財布盗まれてお金燃やされた人がいたらね、いくら地震になったとしても怒るよなと思って。

川本::あれは見事だったね。

根本::毎回役者にあて書きなので、あれも多分桃ちゃんがいなかったら書けなかったというか。「なんとなく燃やしちゃった」って言える役者だったから。

川本::あの悲壮感のなさってすごいよね。

根本::あんな女優はなかなかいない。彼女、欲はあるんですよ。上手いと思われたいとか。変なプライドはあるんですけど、別にそこを探求したりとか、役作りみたいなことは興味ないんですよ。そういう桃ちゃんに何をやらせたら面白いかなと思った結果、理由がないけど「なんかやっちゃった」みたいに言う人が面白いな、と思って。

川本::演出家や役者仲間だったらふつう、そういう桃ちゃんに「お前もっと役作りしろよ。役のことを考えろよ。その時の感情はどう思ってるんだよ」とか言うかもしれないのに、そこを面白がるっていう…。

根本:イジワルなんですよ(笑)。

川本::オレはそれをポップだなぁと思って。気持ちの葛藤とか悩みとかドロドロしたものを描いてるのに、ポップ。それは何か意識してるとこあるの?

根本:ポップにやってくれそうな役者さんのチョイスは、すごく慎重に選んでます。

川本::猪股とか?(笑)

根本::猪股とか(笑)。もちろん成さんもそうですけど、なんか可哀想に見えすぎないというか。そのスレスレのところいってるのが大竹さんなんですけど、なんか可哀想だけど笑っちゃうなっていう。

川本::笑っちゃう笑っちゃう!

_DSC2110

根本::なかなか自分がそういう味を出そうとしても難しくて、私がやると過剰に可哀想って思ってほしい人に見える。それで笑えるというのもあると思うんですけど。リアルに可哀想すぎて、でもいるいるこういう人ってなって思わず笑っちゃうってのが出せる女優さんもいるし、いろんなタイプの役者が出てますね。ポップに見えるっていうのでいえば長井(短)さんとかね。

川本::そうなんだよね、なんか煌びやかに見えるし、色とりどりっていうイメージをいつも抱くんだけど、雄也が出てた『恋に生きる人』も結局すごい展開になるじゃない? けれど、なんかポップな感じがしてしまうという。

根本::そうですね。でもあれも どこかフィクションに見せたい というのがあって。私、あるあるを面白く書く女流作家みたいに書かれることが多いんですけど、そんなにあるあるを突き詰めてるわけでもなくて。

川本::だって、これ、矢が刺さってたよね。

根本::あるあると言われすぎて、もう弓矢ぐらい飛んできてオッケーみたいな感じとか。でもあれもね、納得できる世界観というか、あり得ないことではなくて、矢を飛ばしたヤツがいるかもしれないっていうのもあるし。実は、最近、本が遅くはなってきてるんですよ。

川本::あ、そうなの?

根本::ギリギリまで上がらないってことはないんですけど、稽古初日に1/3くらい。この人が何をやったら面白いとかをあんまり1人で考えないようにしてるかもしれない。何度もそのシーンを稽古場で見て、この人がやるこの人だったらこうするかも、というようにして作るようになってきました。

川本::じゃあ自分で構成したいというよりも、もうちょっと広がって周りを見てっていうのになってきてるんだ。

根本::そうかもしれない。月刊「根本宗子」第7号『今、出来る、精一杯』は稽古初日に完本していて、そこからほとんどイジってない。そういうのもあれば、さっきのメイド喫茶の『中野の処女がイクッ』は女の子を見ながら稽古しながら書いたんです。あれは、地震がくるのも正確には決めてなかったんですよ。

川本::あ、そうなんだ。

根本::お財布がなくなっちゃって、ちょっと正義がズレるみたいな話は書こうと思ってたんですけど、地震はホントにそのシーンがきて、やってみてサムい感じになったらやめようと思ってて。

川本::『中野の処女がイクッ』を観て思ったのが、震災の時に(ビート)たけしさんが「何万人が亡くなったってニュースで言うけど、何万件の事例があるってことなんだよね。一つとして同じ事例がない。何万件の事故が起きたってことなんだよね」ってことを言ってたのを思い出した。『プライベート・ライアン』もそうだけど、あれも戦争というものがあって、その中のライアンだけの話を描いてるっていうのが、やっぱこういうことだな、と思って。多くの人は、戦争っていったら戦争、震災っていったら震災をもっとザックリ俯瞰で描きがちなのに、宗子ちゃんていう人は若いのに、そこに着眼点がいくのはすごいなって思ったなぁ。

根本::あんまり物事や世界情勢とかも詳しくないので、知ったかぶって書けない ってのもあるのかもしれない。1コに焦点を絞って、自分が知ってること見てきたことに近いことをフィクションにして書くことしかできないから、そうなってるのかもしれないです。

(3週目に続く。5月24日アップ予定です)

 

ゲストプロフィール 根本宗子(ねもと・しゅうこ)
19歳で劇団、月刊「根本宗子」を旗揚げ。以降、劇団公演ではすべての作品の作、演出を手掛け、女優としても外部作品にも多数出演。ドラマやショートムービーの脚本を手掛けるなど、演劇以外でも精力的に活動中。
2015年『夏果て幸せの果て』にて第60回岸田國士戯曲賞最終候補作品に選出された。
新宿ロフトプラスワンにてトークライブ『根本宗子の面談室』を毎月定例で開催。

ホストプロフィール 川本 成(かわもと・なる)
欽ちゃん劇団1期生として在籍。1994年“あさりど”結成。主な出演番組としてTV『笑っていいとも!』9代目いいとも青年隊、『王様のブランチ』他、TV・ラジオ・舞台に多数出演。現在はTV『スタイルプラス』、ラジオ『ナルウザクスダの!』、『おしゃべり会戦車部』へのレギュラー出演や、アニメ『テニスの王子様』、『遊戯王デュエルモンスターズGX』、『GON』、『義風堂々!!』他で声優として活躍の場を広げ、舞台では『小堺クンのおすましでSHOW』、『男子はだまってなさいよ!聖バカコント』、『ブルドッキングヘッドロック おい、キミ失格!』、『月刊「根本宗子」忍者、女子高生(仮)』他、自ら『時速246億』を主宰し、定期的かつ精力的に舞台をプロデュースしている。2016年に細川徹(男子はだまってなさいよ!主宰)を作・演出に迎え上演したSFコメディ「バック・トゥ・ザ・ホーム」の再演&続編を2018年秋に同時上演することが発表され話題を呼んでいる。趣味の分野では映画好きで、大の「バック・トゥ・ザ・フューチャー」ファン。この作品を語らせたら右に出る者
はいない、と本人が自負している。(あくまでも本人が)

★根本宗子さん お知らせ★
<舞台>
月刊「根本宗子」第15号『紛れもなく、私が真ん中の日』
作・演出:根本宗子
出演:オーディションで選ばれた21人の女性キャスト
2018年4月30日(月)〜5月13日(日)浅草九劇
http://gekkannemoto.wixsite.com/home/dai15gou

<ラジオ>
『根本宗子と長井短のオールナイトニッポン0(ZERO)』 毎週月曜深夜3:00~4:30 ニッポン放送
http://www.allnightnippon.com/nemonaga/

<トークイベント>
『根本宗子の面談室 vol.25』
MC:根本宗子 ゲスト:長坂まき子(大人計画)
2018 年5月23日(金)19:30 スタート 新宿ロフトプラスワン
http://www.loft-prj.co.jp/schedule/plusone

<舞台出演>
ナイロン100°C 46th SESSION『睾丸』
作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
・東京公演 2018年7月6日(金)~29日(日) 東京芸術劇場シアターウエスト
・新潟公演2018 年7月31日(火)〜8月1日(水) りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 劇場
・宮城公演2018 年8月4日(土) えずこホール(仙南芸術文化センター)
・いわき公演 2018 年8月11日(土・祝)〜12日(日)いわき芸術文化交流館アリオス 中劇場
http://sillywalk.com/nylon/

<イベント>
『吐夢の秘ダイエット手帖』発売記念 『真夏のダイエット (or リバウンド)歌謡ショー(仮)』
2018 年8月24日(金)東京キネマ倶楽部
http://otonakeikaku.jp/2018miyazakishow/

<雑誌>
RiCE(季刊発行)コラム『美味しいお芝居』連載
https://www.rice.press/

anan (毎週水曜日発売)コラム『根本宗子の妄想スイッチ』連載
https://magazineworld.jp/anan/

twitter @nemoshuu

★川本 成さん お知らせ★
<舞台>
劇団ズッキュン娘 第12回公演「夢で逢いま笑」
2018年5月10日(木)~20日(日)吉祥寺シアター
http://www.zqn-musume.com/

バクステ
2018年6月13日(水)~17日(日)赤坂レッドシアター
http://no-4.biz/bakusute/
*川本成初演出作品です

時速246億 川本成ソロ公演『独特』
2018年8月22日(水)~26日(日)中野・劇場MOMO
http://www.jisoku246.com/

時速246億「バック・トゥ・ザ・ホーム」再演&新作同時上演
2018年秋
http://www.jisoku246.com/

<LIVE>
ナルウザウクスダの!公開収録Vol.15
2018年5月26日(土)昼の部13:00/夜の部18:00 阿佐ヶ谷ロフトA
http://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/82791

<映画>
紅葉橋
2018年公開
http://no-4.biz/momijibashi/

ONLY SILVER FISH
2018年秋公開
http://www.mmj-pro.co.jp/onlysilverfish/

<テレビ>
アナログBANBAN
AT-X 初回放送 隔週日曜24:00~24:30
https://www.at-x.com/program/detail/7978

<ラジオ>
ナルウザクスダの!
インターネットラジオステーション音泉 毎週月曜配信
http://www.onsen.ag/
おしゃべり会 戦車部
インターネット放送局 ケーズステーション 不定期配信
http://www.kzstation.com/

blog「Naru’s blog’n boy」 http://ameblo.jp/kawamotonaru/
twitter @Runarurunaru

 

 

 

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