連載
第9回ゲスト「水野美紀のオレ哲学」第1週
連載対談「川本成のオレ哲学」(略してオレ哲)。9回目のゲストは、女優であり、自らも演劇ユニットプロペラ犬を脚本家・構成作家楠野一郎と共同主宰している水野美紀さん! おふたりの出会いから今回のプロペラ犬+時速246億 SPECIALコラボ公演『ハッピーセット』が実現したいきさつなど、いろいろ語っていただきました!(撮影/熊谷仁男、文/中村恵美)
COLUMN 2014 7/19 UPDATE
川本 これ、哲学を聞く連載なんです。
水野 哲学ね。哲学って・・・何だ?(笑)。
川本 (笑)。その人の「持論」ですね。持論に興味があってね。人となりを伺いつつ、その人の持論を聞くんです。それで、今回は美紀ちゃんにスペシャルゲストとして、ご登場いただきました。
水野 よろしくお願いいたします。
川本 お願いします! なぜか一緒に舞台をやることになりまして、ね。
水野 ね! やろう、って話してからあっという間。早かった。
川本 早かったね~。
水野 1年半くらい?
川本 うん。そうだね。
水野 それがもう稽古してるんだもんね。
川本 なかなかビックリですよね。今日は、美紀ちゃんのなんたるかっていうのをじっくり聞いたことがなかったから、改めてこの機会にぜひ聞いてみたいなと。
水野 確かに(笑)。
川本 そもそもどうして舞台をやってるのかとか、どうして一緒にやろうと思ったのかとかね。それにしても、不思議な縁だよね。同い年だしね。
水野 その同い年っていうのが、一緒にやることになった理由として、結構大きいんですよね。最初、成くんが時速246億の舞台のチラシを事務所に送ってくれたでしょ。
川本 うん。
水野 成くんのことはもちろん「いいとも青年隊」でテレビに出てたから知ってたし、その人が「ああ、こういうお芝居をされているんだ」と思って。それでプロフィールのところを見たら、「あ、同い年だ!」と。
川本 うんうん。
水野 お芝居を作ってると感じるのは、自分が見てきたものや文化、肌で感じてきたものの蓄積って、自分の中で絶対的ですごく大きく占めているなあって。そういうときに、同い年とか同世代の人には、感覚的に絶対的な共通項があると思うの。
水野 だから、興味が沸いたというか、心に引っかかったんだと思う。これまでどんな映画を観てきたとか、どんなドラマを観てきたとか、同い年だとそういう話が共通しているから、感覚的な話もスムーズにできるし。
川本 僕は一番最初、美紀ちゃんの舞台を見て、ぜひ246億も観に来てほしいなって思って、面識もないのにチラシ送ったら、来てくれたんだよね。そこから「どうもどうもはじめまして」と楽屋で初対面の挨拶をしてね。それで、ほんとに一緒にやるってことはなかなか珍しいことだよね。
水野 大体「やりましょうね」といいながら、やらないもんですよね(笑)。
川本 一度知り合いになって、距離が縮まったら、一緒にやると怖さがあるじゃない。
水野 怖さ?
川本 いざ一緒にやってみると、ひょっとしたら合わないかもしれない、決裂しちゃうかもしれないと思って。怖くなる。そうなるくらいなら、あえて距離を縮めないってことが人にはあると思うんだよね。恋愛と一緒で、付き合っちゃうと関係性が変わっちゃうかもしれないからこのままでいたいってね(笑)。
水野 恋愛ね。確かにあるかも。でも、男性同士のほうが、その傾向が強いかもしれないね。
川本 ああ、そう? 女子はそういう場合は、もう付き合っちゃうか。
水野 うん。男の人って揺るがない感覚とか自分自身を強く持ってるけど、女性って意外とフレキシブルというか、相手を受け止めて、まずはこの流れに乗っかってみよか!ってなる気がする。
川本 なるほど。なにかさ、37、8歳ぐらいに出会う人って、お互いにいろんな紆余曲折があっての後に出会うから、そう考えるとすごい貴重な出会いだなって思う。しかも、このごろ同世代の人と会うことが多いんだよ。
水野 わたしも、そう!
川本 だから、出会いや経験もそれぞれが2周か3周してんじゃないのかな。2週3周して出会ってるから、ちょっとやそっとのことじゃ心折れないし、一緒にやることの恐怖よりもワクワクのほうが勝つんだよね。合うところも合わないとこもそれはそれで面白いと感じられるし。この10年ぐらいの間に出会う同世代の人は、ずっと長く仕事をしていくような気がしてる。
水野 そうだよね。何かすごい不思議。成くんが言うように、映像の現場へ行っても舞台の現場行っても、同世代の人と出会うことが多くなってて。でもそういう年齢なのかな?
川本 そうかもなぁ、たくさんの人が演劇の世界に入ってきてたくさんの人がやめちゃうけど、出会うのは結局残って続けてる人だからね。
水野 先輩たちの作った演劇の流れがあって、そこに、私はもともと映像メインで女優をやっていて、成くんは芸人の世界でやっていて、別の場所にいたのが、この数年で演劇の世界に集まってきて、そこで、本気でお芝居を作ろうってなった。そう考えると、私たちは次の時代を担っていく世代なのかなって思う。
川本 次の世代か。美紀ちゃんは、そもそもなんで演劇をやろうと思ったの?
水野 一番最初は、小学校6年生のときに『ガラスの仮面』を読んで(笑)。
川本 『ガラスの仮面』タイプですか!(笑)
水野 「女優、すごい!」って思って、北島マヤに憧れて。劇団とかプロダクション、芸能事務所とかそういうことは何にもわからないから、漠然とオーディションを受けて、そのままテレビのほうに行っちゃんたんだけど(笑)。
川本 (笑)。流された!
水野 27歳ぐらいのときかな、「あれ?」と思って。「私、そういえば、演劇に興味があってこの世界に入ったんじゃなかったっけ?」って。
川本 『ガラスの仮面』のはずじゃあ…って?(笑)。
水野 それで、初めて舞台を観に行ったんですよ。最初に見たのが、劇団☆新感線の『轟天2』だったんですよ。めちゃくちゃ衝撃受けて。「なんだこれ!? こんな世界があって、エライおもしろい人たちがいて、こんなことをやってるんだ!」って。そこからお芝居をたくさん観に行くようになった。
川本 でも、テレビドラマとか映画とかで普通に女優さんやってれば順調だし、それはそれでいいわけじゃない? 演劇ユニットまで作るとはすごいよね。好奇心がくすぐられた?
水野 そう! なんとなく行き詰まりも感じてたし。テレビってひとつ役のイメージがつくと、大体似たキャラクターの仕事が続くことが多いから。そうすると私、飽き性だから、飽きてきちゃってね(笑)。
川本 別のことをやらないとバランスが取れない?
水野 その通り。バランスが取れなくなってたと思うんだ。だから舞台がやりたくって。それで、念願の初舞台を踏むわけなんですが……。
川本 うまくいかなかったの?
水野 いざ舞台に出たら、ぜんぜん自分が対応できないことを思い知らされた。テレビの芝居と舞台の芝居との違いもよくわかんないまま出たので。
川本 結構違った?
水野 全然違ってて、見せ方から何から、全くわかってないってことがわかった。舞台稽古に入ってすぐ、「これはやばい」と(笑)。でも、すごく楽しかった。
川本 楽しかったんだ!
水野 舞台はヒリヒリした気持ちになる。失敗しちゃいけないという、女優としては、一番がけっぷちに立たされる仕事だなと思った。
川本 ほう。
水野 ここで鍛えとかなきゃダメだなと思ったよ。
川本 なるほどなるほど。ドラマとは別の緊張感?
水野 ドラマは、間違えれば取り直しがきくから。確かにドラマにはドラマの緊張感はあるけど、舞台とは違う要素が必要なわけで。カメラ用の芝居をするから、そこに合わせるテクニックがいる。アップで寄るからまばたきをしないとか、抑える芝居が必要なんだよね。でも、それも舞台をやってからドラマに戻って、舞台とドラマの違いを発見したの。
川本 あ、そうなんだ。
水野 映像と舞台、両方をやることで相乗効果があった。だから、両方やれるのが一番幸せかな、私にとって。
(次回へ続く)
ゲスト・プロフィール 水野 美紀(みずの・みき)
三重県四日市市。女優。テレビドラマや映画、CM等映像分野で活躍しながら、舞台にも活動の場を広げる。2007年演劇ユニット「プロペラ犬」を、作家楠野一郎と共同主宰で設立。
ホスト・プロフィール 川本成(かわもと・なる)
欽ちゃん劇団1期生として在籍。1994年“あさりど”結成。主な出演番組としてTV『笑っていいとも!』9代目いいとも青年隊、『王様のブランチ』他、TV・ラジオ・舞台に多数出演。現在はTV『スタイルプラス』、ラジオ『ナルウザクスダの!』へのレギュラー出演や、アニメ『テニスの王子様』、『遊戯王デュエルモンスターズGX』、『GON』、『義風堂々!!』他で声優として活躍の場を広げ、舞台では『小堺クンのおすましでSHOW』、『冒険者たち』、『男子はだまってなさいよ!聖バカコント』他、自ら『時速246億』を主宰し、定期的かつ精力的に舞台をプロデュースしている。
★お知らせ その1★
川本成さん・水野美紀さん出演舞台のお知らせです!
プロペラ犬×時速246億SPECIALコラボ公演「ハッピーセット」
日程:7月19日(土)~8月3日(日)
劇場:赤坂レッドシアター
脚本:園子温、小林顕作(宇宙㋹コード・コンドルズ)、喜安浩平(ナイロン100℃・ブルドッキングヘッドロック)、福田雄一、水野美紀、川尻恵太
演出:川尻恵太(SUGARBOY)
出演:水野美紀(プロペラ犬)、川本成(時速246億)、大堀こういち、佐藤永典、竹井亮介(親族代表)、藤原祐規、諸岡立身(トーキョーハイライト)
詳細はオフィシャルサイトをご覧下さいhttp://propeller-246oku.com/
★お知らせ その2★
川本成さん出演舞台のお知らせです!
小堺クンのおすましでSHOW29 A GANG IS HARD ~ギャングはつらいよ~
日程:8月22日(金)~31日(日)
劇場:東京グローブ座
構成・演出:小堺一機
脚本:舘川範雄
構成補:小山協子
出演:小堺一機、松尾伴内、川本成、堀口文宏、伽代子、大澤恵、大野朱美
詳細は東京音協ホームページをご覧下さいhttp://t-onkyo.co.jp/