連載
第10回ゲスト「新谷真弓のオレ哲学」第1週
連載対談「川本成のオレ哲学」(略してオレ哲)。10回目のゲストは、ナイロン100℃所属の女優であり、声優としても活躍中の新谷真弓さん! 時速246億には2013年12月の『theatrcial』に登場! 川本さんの女優観をある意味くつがえした、個性派女優・新谷真弓さんの哲学に迫る!
COLUMN 2014 10/22 UPDATE
川本:新谷さんには、会うたびに言ってるんですが、初めて僕が観た演劇は、ナイロン100℃だったんですよ。
新谷:何回も聞いてる(笑)。
川本:『テニスの王子様』で声優の仕事をやっているときに、喜安(浩平)くんのお誘いで、新宿にあったシアターアプルに観に行ったんですけど。「演劇ってどういうもんかな?」って軽い感じで行ったら、もう衝撃的で! おもしろかったな~! ガツンときた。そのときに、男の子の役で舞台の真ん中にいたのが新谷さん。
新谷:そうそう。
川本:「何なんだこの人は!」という感じでしたよ。ものすごかった!
新谷:ふふ、ありがとうございます。
川本:見たことないタイプだったんですよ。びっくりした。これまで描いていた「女優さん」っていう概念を覆すというか。声といい、演じ方といい。
新谷:そうですね。テレビに出てる女優さんとか、あるいは女芸人さんとかとも、また違いますから。
川本:違いますね。僕らもコンビだから、お笑いライブとか出ることもあったんで、それも一応舞台ではあるけれども、それとは全然違うなと。
新谷:うんうん。
川本:僕は、もともと役者になりたかったんだけど、かといって、芝居を観に行ったりとか演技の勉強したりとかは全然してなくて。そんなときに初めて観て・・・正直、あせった! ヤバイと思った。こんな面白いものがあるんだと。
新谷:そんなに言っていただけて光栄です(笑)。
川本:それで小劇場の芝居を始めて、何年かずっとやってきて、そして去年ようやく時速246億で、やっと新谷さんをお招きして、一緒にやることができました。
新谷:私が「出して!」って言ったんですよ。
川本:まさかそういう風に言ってくれるって思わなかったから、「え、いいんですか!」って、僕、言ったと思うよ。
新谷:去年の作品は、川尻(恵太)さんが作・演出で、成さんが真ん中で、ってことでしたから、それは、私も一枚かませていただけたらいいのになって思いますよ。
川本:そもそもなんで知り合いになったんでしたっけ?
新谷:川尻さん経由? でも、なんか「飲み」の席でしたよね(笑)。
川本:大体が、「飲み」の席(笑)。なぎら健壱さんみたい(笑)。
新谷:この「飲み」に行けば、面白い人に会える・・・っていつの時代の人たちだ(笑)。タイミング的にはSUGAR BOY『Fruits』の公演を観に行ったときかな?
川本:でも、実際に観て「すごいな」と思った人たちと一緒に舞台に立てるっていうのは、幸せなことだなと思いますよ。
新谷:「やりたい」って言ってたら、叶うんだね!
川本:新谷さんの中のどこかに、俺、引っかかったのかな、と思うと、それが嬉しい。
新谷:だって、見てますもん。それに私、ずっと言ってたでしょ。「成さんは押さえ・脇のポジションやってるから、そうじゃなくて、自分でせっかく主宰をしているんだし、成さんがガッツリ主役をやったらいいのに」って。
川本:あ、そうそう。
新谷:そう言ってたところに、『theatrical』で、成さんらしい役で主役をやったので、嬉しくなって「いいじゃないですか!」って言って。そしたら、「いや~主役やろうと思って」と、さも自分が思いついたように話してたから。
川本:(笑)。
新谷:「だから、言ってたのに!」と(笑)。
川本:(笑)。新谷さんに言われたんだ…。
新谷:そうですよ(笑)。
川本:当たり前のように、自分の考えだと思ってた(笑)。そうだそうだ、思い出した! 「成さん、もっと真ん中でやったほうがいいよ」ってね。
新谷:そう。すごくうまくて軽々とやってるから。で、ポイントポイントで出てきて、お客さんを笑わせて和ませて、スマートに去っていく。その仕事っぷりがよかった。
川本:楽したいんですよ(笑)。そんなに出たくない。
新谷:いやいやいや(笑)、せっかく主宰をしてるんだし。
川本:だって、面倒だしコワイし(笑)。でも、実際のところ、『theatrical』は同世代の俳優さんとやったじゃないですか。そのことも、真ん中でやる理由のひとつになったかも。それまでは、同世代とからむことってあんまりなくて、年下の子とやることが多かったからね。
新谷:そうなんですよね。私も今一緒にやる子たちっていうのは、年下が多くって。そうするとやっぱり、押さえの役、お母さん役とかお姉さん役とかになっちゃう。主役っていうよりはサポートになりますよね。
川本:『theatrical』を、今、振り返ってみれば、もっと新谷さんとからみたかったですね。二人のシーンは、楽しかったし。
新谷:楽しかったですしね。
川本:そう考えると、もっともっと同世代とやるべきかもしれませんね。
新谷:同世代としかできないこともありますからね。フラットな関係からつくれますから。カップルの役ひとつとっても、年下とだと、年の差カップルとかファンタジーな設定になっちゃいますから(笑)。
川本:新谷さんのルーツを伺いたいんですけど、演劇を始めたきっかけは?
新谷:もともとお芝居やりたかったんですよ。私、中学生ぐらいのときから、緑魔子さんになりたかったんですよ。
川本:緑魔子さんね! 今の人、わかるかなー?
新谷:名前からもうすごいでしょ? この名前の人がつまんないはずがない! もちろんすごい美人でね。妖艶で、でも少女のような方。
川本:70年代ですよね。そういえば、今はああいう女優さん、いないですね。
新谷:いないです。
川本:でも、そう聞くと、新谷さんもそんな雰囲気がしますね。
新谷:またまたまた~(笑)。かけ離れたところにいますよ。
川本:当時は、加賀まりこさんなんかも、小悪魔的で。
新谷:そうですね。加賀まりこさんと緑魔子さんで、小悪魔的女優の人気を、二分してたという感じでしたね。
川本:新谷さんだって小悪魔女優じゃないですか!
新谷:ちがうでしょ! オモシロ女優でしょ。おっちょこちょい女優でしょ(笑)。
川本:(笑)。オモシロ女優でおっちょこちょい女優だけど、小悪魔女優じゃないですか。
新谷:若いときはまだ、そういう役もやらせていただきましたけど・・・。
川本:存在がそうですよ。
新谷:そうだと嬉しいですけどね~(笑)。話は戻るけど、中学生でそんなこと思ってた人は、周りにいなかったので、演劇部に入っても、みんなは反戦演劇をやったり、スクールラブコメディーとかをやっているので、まったく気が合わず(笑)。私の居場所はここじゃない!(笑)と。
川本:そうなんだ(笑)。
新谷:私は、堺正章さんの『西遊記』で、緑魔子さんがやっていたゲスト妖怪の「バッタ女王」がやりたいんだ!!と。
川本:(爆笑)。
新谷:ほんと、アンダーグラウンドのものに憧れていたというか、惹かれてましたね。
川本:なるほど。
新谷:退廃的なムードが漂って、ちょっと妖艶で色気があって。毒があるものが好きだったんですね。
川本:はぁ~。すごい・・・。
新谷:みんなが、トレンディードラマの女優みたいになりたい、鈴木保奈美さんみたいになりたい!とか言ってるのに、わたしは「バッタ女王」がやりたい!でしたから。でもバッタ女王は、名前はひどいけど、コスチュームも素敵で、物悲しい良い話だったんですよ。
川本:(笑)。ちょっとおかしな中学生だったんですね。
新谷:頭がおかしいよね(笑)。中学生にして、市川雷蔵特集の映画館に通ったり。寺山修司の短編映画を全部観たり。
川本:(笑)。高校では?
新谷:高校に入ったら、そこにも一応、演劇部はあったんですけど、部室と部費はあるけど、実質誰も活動していないという状態で。これはもう、暴れたい放題じゃないか!と(笑)。というわけで、自分で作・演出・主演してました。もう、自分大好きですよね(笑)。
川本:一人でやってた?
新谷:他の出演者は、校門の前で待ち伏せして、「あなた、演劇出ませんか?」ってスカウトして。
川本:丹下段平と一緒じゃないですか! 「拳闘に興味ねぇか~」ってのと一緒。(笑)。
新谷:ワシのジョ~!(段平の物真似で)。
川本:演劇キ○○イですよ。演キチ!
新谷:ええ、完全に演キチのお姉さんでしたよ。
川本:新谷さん、出身はどちらでしたっけ。
新谷:広島です。別に演劇もそんなに盛んじゃないし、高校演劇は、土地柄もあって反戦劇が多かったですね。真面目な作品が多かった。そもそも大会目指してるような演劇部は、変な作品だと審査を通らないのでやらないですから。なので、私は孤高の輝きを放ってました(笑)。
川本:評判はよかったんでしょ?
新谷:割とね。ファンの人とかもいたんですよ。変わった人だったけど(笑)。学校外とかからも観に来てくれたりとかね。地区大会なんかも出てましたし。まぁ、変なものやってたので、審査を通りはしないですけどね(笑)。
川本:当時のもの、ビデオとか残ってないんですか?
新谷:戯曲とか写真とかはありますね。
川本:それ、上演しましょうよ!
新谷:出来はひどいですよ! 当時、アングラも好きだったけど、一方で、今、私が所属してるナイロン100℃のKERAさんの作るものも好きだったんですよ。そのときからKERAさんはすでにナンセンスコメディーをずっとやられてて。ビデオで観たりして、これも素敵だ、好きだって思ってたんです。だから、自分がやるときは、好きなもの全部入れたくて。アンダーグラウンドで退廃的なものと、ナンセンスコメディーを無理やりくっつけたものを書いてやってたので・・・演劇のセオリーとかも無茶苦茶で、今考えると、出来がいいとは言えないですね。
川本:それで卒業して、上京したんですか?
新谷:そうですね。お芝居やりたくて、寺山さんの天井桟敷、緑魔子さん・石橋蓮司さんの劇団「第七病棟」の系統にあるようなアングラの劇団に行くか、一方で好きだったKERAさんの方に行くかと二つの道を考えたんです。
川本:なるほど。
新谷:ちょうど、KERAさんがナイロン100℃を始めて2年目のときで、新しい劇団を始めたところらしいと聞いたので。それで、とにかく両方観てみることにしたんですね。そしたら、アングラは「コワイ!!」という印象が強くて、自分が抱いていた耽美なイメージとはちょっとかけ離れてたんです。そのあと、ナイロン100℃を観たらおしゃれだし面白いし、女優さんがみんな素敵だし、こういうところでできたらいいなぁと思って。それでオーディションを受けたら受かっちゃったというわけです。
川本:すごいですねー。
新谷:それで、19歳のときにナイロンに入って。でも、そのころはまだ劇団でも若手が頭角を現してなくて、有象無象が集まってた感じだったんです。そこに、子どもの役の劇団内オーディションがあって、「新谷もやってみて」と言われて受けたら、なぜかその役をいただけたんですよね。最初からそういう風に役をもらってましたね。KERAさんには本当にかわいがってもらって、今も劇団に所属しています。
川本:自分の好みがはっきりしてたんですね。それが合致したからすぐに使ってもらえた。
新谷:その世界が好きで、やりたいと思って出てきてるわけだから。わかってもらえたんだと思ます。下手なりに。
川本:好みが明確なんだと思います。好き嫌いがはっきりしてる。
新谷:そう。幼稚園ぐらいからはっきりしてた。ディ○ニー嫌い! 興味ない!
川本:(笑)。そんな子、いないよ、なかなか!
新谷:『シンデレラ』の絵本じゃなくて、『水木しげるの妖怪辞典』を選ぶ(笑)。
川本:(笑)。
新谷:で、怖くなって、夜眠れなくなるっていう子ども。ずっとそんな感じでしたから(笑)。
(2週目に続く)
ゲスト・プロフィール 新谷 真弓(しんたに・まゆみ)
広島県出身。NYLON100℃(ないろんひゃくどしー) 劇団員。
1995年よりケラリーノ・サンドロヴィッチ主宰「ナイロン100℃」劇団員として多くの公演に出演。客演も多く、性別を超え様々な役を演じる。映像作品では持ち前の個性を生かし、声優としても活動。自主企画“おちゃめいつ”を主宰、不定期に公演を行う。
近年の主な舞台出演作は「黒い十人の女〜version100℃〜」(ケラリーノ・サンドロヴィッチ演出)、「騒音歌舞伎 ボクの四谷怪談」(蜷川幸雄演出)、「ママと僕たち」(村上大樹演出)、時速246億vol.B「theatrical」(川尻恵太演出)等。声優としての出演作はアニメ「キルラキル」(蛇崩乃音役)、「黒執事 Book of Circus」(ウェンディ役)等。
公式サイト http://shintanya.com/
twitter @shintanimayumi
ホスト・プロフィール 川本成(かわもと・なる)
欽ちゃん劇団1期生として在籍。1994年“あさりど”結成。主な出演番組としてTV『笑っていいとも!』9代目いいとも青年隊、『王様のブランチ』他、TV・ラジオ・舞台に多数出演。現在はTV『スタイルプラス』、ラジオ『ナルウザクスダの!』へのレギュラー出演や、アニメ『テニスの王子様』、『遊戯王デュエルモンスターズGX』、『GON』、『義風堂々!!』他で声優として活躍の場を広げ、舞台では『小堺クンのおすましでSHOW』、『冒険者たち』、『男子はだまってなさいよ!聖バカコント』他、自ら『時速246億』を主宰し、定期的かつ精力的に舞台をプロデュースしている。趣味の分野では映画好きで、大の「バック・トゥ・ザ・フューチャー」ファン。この作品を語らせたら右に出る者はいない、と本人が自負している。(あくまでも本人が)
★お知らせ その1★
新谷真弓さん出演舞台のお知らせです!
本能中枢劇団「ウアクチンクエ」
日程:2014年10月24日(金)~25日(土)
会場:サラヴァ東京
作・演出:西島明
振付:山田うん
出演:猿飛佐助、吉原朱美、宮下今日子、横塚真之介
新谷真弓(ナイロン100℃)、森田ガンツ(猫のホテル)、福屋しし丸(フクヤクラス)
伊藤知奈美(Co.山田うん)
料金:2500円(ワンドリンク付)/全席自由席
チケット予約:http://enbu.shop21.makeshop.jp/shopbrand/ct791
詳細:http://honchu.net/
★お知らせ その2★
新谷真弓さん出演舞台のお知らせです!
『ママと僕たち』
日程:2015年2月7日(土)~15日(日)
劇場:AiiA Theater Tokyo(アイア シアタートーキョー)
作・演出:村上大樹(拙者ムニエル)
出演:鯨井康介、平野 良、味方良介、
安川純平、原嶋元久、矢田悠祐/
佐藤真弓、新谷真弓、大村彩子、千代田信一
中野咲希、小林煌真、杉浦樹子、茂木拓也/
今井ゆうぞう/廣川三憲
※シークレットBABY!(日替わり)
前売り開始:2014年12月7日(日)AM10:00
料金:6300円(前売・当日/全席指定/税込)
※チケット取り扱いなど詳細はこちらをご確認下さい。
http://www.nelke.co.jp/stage/mamaboku_fes/
★お知らせ その3★
川本成さん出演イベントのお知らせです!
ネルフェス2014 in 武道館
日時:2014年11月7日(金)17:00開場 18:00開演
会場:日本武道館
料金:前売・当日共¥5,000(全席指定・税込)
チケット:イープラス、ローソンチケット、チケットぴあ、カンフェティ、Walkerplusチケットにて発売中
詳しい情報はオフィシャルサイトをご覧下さい。http://www.nelke.co.jp/stage/nelfes2014/