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SPECIAL!花組梅田芸術劇場『ベルサイユのばら-フェルゼンとマリー・アントワネット編-』『宝塚幻想曲(タカラヅカ ファンタジア)』レポート
INTERVIEW & SPECIAL 2015 8/13 UPDATE
2013年の台湾公演が大成功したのを受け、早くも第2回台湾公演が決定。花組トップスター・明日海りおさんを中心とする総勢40名が、8月8日~16日まで国立中正文化中心 台北国家戯劇院にて、『ベルサイユのばら-フェルゼンとマリー・アントワネット編-』『宝塚幻想曲』を上演中です。その日本でのプレ公演が7月10日~16日、梅田芸術劇場限定で上演されました。
お芝居は1974年の初演以来500万人の観客動員を誇る『ベルサイユのばら』。今回は「フェルゼンとマリー・アントワネット編」を約1時間半で上演するため、植田紳爾氏が新たに脚本を練り直しました。明日海りおさんが昨年の中日劇場公演に引き続きハンス・アクセル・フォン・フェルゼンを演じ、花組トップ娘役の花乃まりあさんが初のマリー・アントワネット役に挑戦。さらに芹香斗亜さんのアンドレ・グランディエ、柚香 光さんのオスカル・フランソワ・ド・ジャルジェという配役で、美形揃いの麗しき“ベルばら”となりました。
まずプロローグで、華麗な“ベルばら”の世界を台湾バージョンでしっかり魅せます。オープニングの歌「ごらんなさい ごらんなさい」の冒頭は中国語なのが新鮮。そして明日海フェルゼンが原作の肖像画の後ろから登場、「愛の面影」をしっとりと歌い、アントワネットとの仮面舞踏会での出会いを語ります。そこへ柚香オスカルが肖像画の後ろから走り寄り、「無礼者!」とアントワネット王妃の近衛隊として、フェルゼンの頬をたたきます。さらにアントワネットの肖像画が上がり、真っ赤なドレスの花乃アントワネットが中央に現れます。この流れで、一気に3人のトライアングルをプロローグ中に見せる演出はなかなかのもの。
明日海はこの後「愛あればこそ」を熱唱。宝塚きっての歌姫・美穂圭子さんがさらに歌い継ぎ、男役の群舞も展開、とても豪華なプロローグです。さらには“ベルばら”を象徴するパレードが始まり、この10分ほどで、充分華やかな世界観が表現されてゆきます。
そこからはフランス革命の足音が聞こえる情勢、フェルゼンとアントワネットとの道ならぬ逢瀬のシーンなどが展開。特にフェルゼンのスウェーデン帰国までを足早に進め、後半のアントワネットの王妃としての目覚めや、フェルゼンの命懸けの愛に焦点を当てた流れで、情感溢れる芝居を引きだしてゆきます。
明日海フェルゼンは、立ち姿から貴族としての品格が漂い、柔らかな表情の中に秘めた苦悩と深い愛を、数々の名曲で力強く吐露します。「愛に帰れ」「アン・ドゥ・トロア」など、ここまで聴かせてくれるのはさすが。ラストの、断頭台に消える王妃を見つめる正面の眼差しもとてもリアルで、「王妃さまー!」という絶叫と共にその哀しみが表情にくっきりと張り付き、幕が降りるまで長い見せ場で感動を誘います。
花乃アントワネットは、声からいつもの役作りとは違う俗世離れした王妃像を構築。フェルゼンとの愛はもちろん、ルイ16世や二人の子どもとの関係性もしっかりと表現し、特に母親としての強さを見せる後半の演技は、ボロボロの衣裳とは対照的に神々しく輝いていました。
芹香斗亜さんが演じるアンドレは、オスカルとのシーンがほとんどないものの、フェルゼンに自分の気持ちを打ち明け、どこか吹っ切れたような笑みを浮かべて歌う「白ばらのひと」で真っ直ぐな愛を表現。そのスター性も手伝って、影のあるアンドレのイメージからさらに劇画に近い、大きな懐をもった男性像として見せてくれました。柚香 光さん演じるオスカルは抜群の美しさ。バスティーユの場面では、橋の上で撃たれるアンドレに向かっての叫びが、女性としてのオスカルの叫びになっていたのは心打たれました。さらにアンドレが死んだ後、膝をつき打ちのめされるも、立ち上がって雄々しく、まさに猛々しく攻撃してゆくダンスシーンは鬼気迫るものがありました。
他にも、そのこぶしに怒りを込めた瀬戸かずやさんの押し出しのあるベルナール、王妃としての最期を一番理解し献身的に務める城妃美伶さんのロザリー、大切な回想シーンを担いフェルゼンとの芝居にも忠誠心が表れていた鳳 真由さんのジェローデル。さらに、専科・汝鳥 伶さんの温かなメルシー伯爵が、この芝居の大きな要となっていました。
レヴューロマン『宝塚幻想曲(タカラヅカ ファンタジア)』は、6月14日まで東京宝塚劇場で上演されていた本公演の台湾公演バージョン。オープニングから白一色、羽根扇を使ったクラシカルなレヴューが、和太鼓の響きを伴ってリズミカルに押し寄せてくる感じで、場内は一気にヒートアップ。主題歌も心地よく耳に残ります。全員の羽根扇がトップスター、明日海りおさんの両端を飾り大きな羽根となるシーンは拍手喝采。恐らく台湾公演でも大いに盛り上がるはず。その後の明日海りおさんの客席下りをはじめ、何度も出演者が客席に下りてきて作り上げる観客との一体感が、幸福の極みへといざないます。
芹香斗亜さん、柚香光さんが対で踊る「籠球男子 アオイハナ」は、バスケットボールのドリブルなどがヒップホップ系のダンスに見事融合したユニークな振付(桜木涼介)で、キレのある動きに釘付け。花魁姿の明日海りおさんが早替わりでダンディーな男になる「百花繚乱」は、新たに台湾のヒット曲「追追追」を歌い継ぐ形となり、ノリのいい楽曲で盛り上げます。ここでは下級生たちが和太鼓を演奏し、見事な側転なども披露して大活躍。レヴューの後半には芹香斗亜さんを筆頭とする男役スター4人が、台湾の国民的なアーティスト・五月天(メイデー)さんの「現在就是永遠」を歌うシーンも登場。ロックコンサートばりの楽しさに満ち、東洋のエルギッシュさを感じさせます。
謝 珠栄さん振付の「永遠 風に舞う花」は、花組生が一丸となって花の種に宿る生命力を、感動的な群舞で見せるシーン。手話のように表現力豊かに物語る手の動き、ひとつのものを作り上げる結束のパワー、“永遠の花”として中央で凛と咲く明日海りおさんの存在感が、宝塚の清々しさを象徴しているようです。
フィナーレは明日海さんの歌う「望春風」という台湾の有名な曲からスタート。春夏秋冬、様々に咲き誇る“花”を表現してきたレヴューは最後に春を迎え、大劇場公演でも話題となった男役たちのハードな群舞「さくら幻想曲」に。11段の階段を使い、フォーメーションを変えながら三味線が奏でる「さくら」のロックに合わせて躍動感たっぷりに踊り切ります。そして最後は、東日本大震災の復興支援ソング「花は咲く」に合わせての、トップコンビのデュエットダンス。ハートのこもった踊りを見せる二人から、日本人の慎ましさ、たくましさが垣間見えるよう。“日本人スピリッツ、ここにあり”というような感動を受けます。台湾の人々の心にも大いに届くはず。
終演後は2回のカーテンコールの後、スタンディングオベーション。明日海りおさんは「一人ひとりの熱が溢れた稽古場でした。『ベルサイユのばら』は上演時間が大幅に短くなり、ショーはぐっと人数が減り、それを乗り越えるのが大きなテーマでしたが、どうでしたでしょうか?」と語り、大きな拍手。「10周年を迎えたこの梅田芸術劇場で、ひと花咲かせたいと思います!」と頼もしく挨拶しました。この熱い花組の雰囲気のまま台湾に勢いよく乗り込んでいることでしょう。
【データ】
花組梅田芸術劇場公演
宝塚グランドロマン『ベルサイユのばら-フェルゼンとマリー・アントワネット編-』
~池田理代子原作「ベルサイユのばら」より~
脚本・演出:植田紳爾 演出:谷 正純
レヴューロマン『宝塚幻想曲(タカラヅカ ファンタジア)』
作・演出:稲葉太地
出演:宝塚歌劇団花組・明日海りお、花乃まりあ、
2015年7月10日(金)~16日(木)
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