インタビュー & 特集

INTERVIEW!『ダブリンの鐘つきカビ人間』佐藤隆太さん

『人間風車』、『MIDSUMMER CAROL~ガマ王子vsザリガニ魔人~』などで知られる後藤ひろひとさんの代表作の一つ、『ダブリンの鐘つきカビ人間』が10年ぶりに上演されます。2002年、2005年に演出を手掛けたG2さんが新たなチームを組み、まもなく10月に開幕します。タイトルロールのカビ人間を演じる佐藤隆太さんに話を聞きました。
(文:千葉玲子 撮影:笹井タカマサ ヘアメイク:西岡達也<vitamins> スタイリング:勝見宜人<Koa Hole inc.>)

INTERVIEW & SPECIAL 2015 9/25 UPDATE

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「再演から10年たって、またこうしてパルコ劇場で上演するというのは、この作品が本当に多くの人に愛されていて望まれてる作品だということですよね。そこに自分が出演できることは嬉しくもあり、正直プレッシャーでもあります。初演に携わっていない作品に再演から入るのは、どの作品でも怖いことなので。ですが、演出のG2さんも稽古に入る前に『新作を作る気持ちで取り組んでいきたい』とおっしゃってましたし、2015年版のカビ人間ができあがる期待感を持って稽古に臨んでいます」
物語の舞台は、中世を思わせる町。市民の9割は奇妙な病に冒されている。噂好きだったある者には伝書鳩ならぬ天使の羽が生え、ある者は驚異的な視力を手に入れてしまい、ある者の指は鳥のとまり木になってしまう…といった具合に、一人ひとりが異なる症状の奇病だ。町を救う方法は一つ。伝説の剣“ポーグマホーン”を見つけ出し、その剣で1000人を斬れば町は病から解放されるという。町の戦士たちは“ポーグマホーン”を探しにゆくが…というストーリー。後藤ひろひとならではのファンタジックなパラレルワールドに、軽妙な笑いも、冒険活劇も、ロマンスも、あらゆる要素がちりばめられている。
「一つの作品にいろんな要素が入っていて、振り幅が大きい作品です。ゲラゲラ笑いながら観てるんだけど、いつの間にか涙が出てくるような、いろんな感情を揺さぶられます。お客さまにも、観終わった後にさまざまな感情を持って帰ってもらえると思います」

DSC_4128佐藤が演じるのは、奇病によってカビ人間に変えられた青年。悪臭を放つ醜い姿で登場するが、カビ人間になる前は、容姿は美しいのに心が醜い青年だった。醜い外見を与えられたかわりに、内面は美しい心を手に入れたという設定だ。
「カビ人間は、町の人達からけむたがられている嫌われ者ですが、外見と内面が入れ替わっているので、中身はすごくピュア。まっすぐな心を持っています。実はカビ人間になる前は、まわりにひどいことをたくさんしてきた男なんです。皮肉なことに、病気にかかってカビ人間になったことで、以前はわからなかった人の痛みをわかっていく、そういう話なんじゃないかと僕は感じています」
伝説の剣“ポーグマホーン”探しとともに物語の軸となるのが、佐藤演じるカビ人間と、少女・おさえとのピュアなラブ・ロマンス。言葉が心と逆転してしまう病に苦しむおさえを演じるのは、東京パフォーマンスドールの上西星来。
「フレッシュですね。僕がパルコ劇場でデビューさせていただいたのが19歳のときで(宮本亜門演出ミュージカル『BOYS TIME』)、今の上西さんと同じ歳だったんです。だから色々思い出すこともあるし、一緒にやってて楽しいです。すごく刺激をもらってます。当時の自分とくらべると、おさえちゃん(上西)は大人です。ちゃんとしてます。僕は全然ちゃんとしてなかったですね(笑)」
DSC_4149稽古場の雰囲気は「楽しいです!」と顔をほころばせる佐藤。演出のG2とは初めてのタッグ。
「G2さんは、すごく細やかな演出をされる方という印象です。セリフや動きの一つひとつに、敏感に反応してくださいます。良いところは活かしつつ、さらに+アルファの感情を乗せてみてほしいとか。カビ人間は気持ちをあらわすセリフはあまり言わないんですが、『実はこんなふうに感じている』というのを、説明っぽくなりすぎずに醸し出さなければいけない。人間て、シンプルな生き物じゃないですよね。いろんな感情が同時に湧いてくるし、言葉を選ぶし。そういう複雑さを少しでも伝えたい。G2さんはそういう細やかな演出をされます。それをパーフェクトに表現するのはとても難しいことなんですけど、刺激的だし、勉強になります。毎日発見がありますね」

カビ人間の役作りについては、「やっぱり大事なのは、カビ人間のピュアなところだろうと思います。いつも笑顔でいるんだけど、心の中ではすごく泣いてる。誰からも相手にされなくて、つらいし、さみしい。人一倍、温もりのある言葉や人の温度を欲してるはずだから、そういうものに敏感に反応できるようにありたいですね。例えばおさえちゃんが言葉を発したときに、そのひと言にどれだけ反応できるか。どれだけ気持ちを汲み取っていけるか。セリフや行動の一つひとつにちゃんと反応して、しっかりと変化していきたいです」と語る。佐藤にうってつけの役だと感じるが、舞台に立つ上での難しさも。
「カビ人間のキャラクターは、狙って作れるものでもないというか…説明っぽくなってはいけないし、大事なのは舞台の上での佇まいだったり、空気感だと思うので。舞台に立ったとき、その匂いを醸し出せるかどうか、そのあたりが難しいですね。本番までに、カビ人間としての存在感を出せるようになりたいと思います」
2015年に新たな物語を紡ぐ、カビ人間とおさえの行く末を劇場で見届けたい。

上演は10月3日(土)から25日(日)まで、東京・パルコ劇場にて。
続いて福岡、広島、大阪、仙台、札幌を巡演予定。
詳細はhttp://www.parco-play.com/web/play/dublin2015/

『ダブリンの鐘つきカビ人間』
作:後藤ひろひと
演出:G2
出演:佐藤隆太 上西星来(東京パフォーマンスドール) 白洲迅 大塚千弘
小西遼生 中村昌也 木戸邑弥 明樂哲典
マギー 後藤ひろひと 吉野圭吾
篠井英介
村井國夫

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佐藤 隆太(さとう・りゅうた)
1980年生まれ、東京都出身。1999年、パルコ劇場『BOYS TIME』でデビュー。以降、映画、ドラマ、舞台、各方面で幅広い役柄を演じる実力派俳優。主な舞台出演作品に、東京03 FROLIC A HOLICラブストーリー『取り返しのつかない姿』、Team申番外公演Ⅲ・朗読劇 『お文の影・野槌の墓』、『高校中パニック!小激突!!』『ボクの四谷怪談』など。テレビドラマでは、『HEAT』(CX)、大河ドラマ『花燃ゆ』(NHK)、『人質の朗読会』(WOWOW)、『失恋ショコラティエ』(CX)ほか、映画では『TOKYO TRIBE』、『悪夢ちゃん The 夢 ovie』、『キタキツネ物語~明日へ』、『ツナグ』、『天地明察』、『BRAVE HEARTS 海猿』などに出演。
公式サイトhttp://www.k-factory.net/profiles/ryuta-sato

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