インタビュー & 特集

INTERVIEW! ミュージカル『ジキル&ハイド』石丸幹二さん

映像に歌にと大活躍の石丸幹二さんが、ミュージカル『ジキル&ハイド』の舞台に帰ってきます。難役への再挑戦、信頼の厚いフランク・ワイルドホーンさんとのエピソード、そして50歳を迎えての心境までいろいろと語ってくれました。(文/小野寺亜紀、撮影/大東佐和子)

INTERVIEW & SPECIAL 2016 3/4 UPDATE


931A2665p――2012年に初めてジキルとハイドを演じられたときの手応えは?
大先輩の鹿賀丈史さんがこの役を何度も演じてらっしゃったので、無意識のうちに意識しながら役作りしていたことを思い出します。そこから自分なりの『ジキル&ハイド』が生まれたのを実感し、もっと演じていたいと思ったピークのところで公演が終わったので、今回再演が叶ってとても嬉しいです。現在50歳の私の、役者としての自分らしさ、また色んな歌の技術を積み上げてきた歌の面での自分らしさを反映できるのではと思っています。

――人間の善と悪がせめぎ合うドラマティックな『ジキル&ハイド』ですが、改めてどのように解釈されていますか?
 人間の善と悪というのは、どんな人間も持っているものだと思います。その悪の部分を表に出さないように努めて人は生きていますが、『ジキル&ハイド』は薬を使って悪の部分を消し去ろうとした結果、逆に悪に支配されていく物語です。その“薬”というのは、何にでも置き換えられるもの。ジキルの場合は、彼に対して理解を示さない周りの環境など、悪が善をしのいでいくだけの強い引き金があった。それがフツフツと沸きあがるところを、今回はより強く見せていきたいですね。ご覧になる皆様にも、自分にとって“薬”は何だろう、と考えていただけたらと思います。

――音楽のフランク・ワイルドホーンさんが、石丸さんの演じる役には3人の人格がいるとおっしゃったそうですね。
 先日ワイルドホーンに会ったときも、「カンジ、覚えているか? 僕は3人の人格がいると言ったよね」と念押しされました。ジキル、ハイド、そして第三の人格は、ハイドの人格を知り、自分の罪に対して思い悩むジキル。それがまた魅力的で演じがいがあり、彼の葛藤は強く出していこうと思っています。またワイルドホーンは「ハイドはお祭りなんだ」と言います。ハイドには悪いことをしている感覚はない、ただ人生を謳歌しているのだと。それは面白い解釈だと思いました。悪を悪と思わずにやってしまう、そこが人間のもろさですよね。

931A2646p――「お祭り」ということですが、実際にハイドを演じているときご自分とはかけ離れた何かを感じたりも?
 はい、自分の中の“解放されている部分”とはこういうものなのだと気付いてしまう瞬間がありました(笑)。例えばお酒を飲むと心が解放されますよね。多弁になったり、大声で歌ったり、普段言わないことをけしかけるように言ってみたり。そういうものが役作りのヒントになりました。かといって、大酒飲みになったわけではないですよ(笑)。

――やはりワイルドホーンさんの楽曲を歌いこなすのはエネルギーが必要ですか?
 ワイルドホーンはよく「肉を食べなさい」と言いますね。確かに体力が必要で、まず体幹を鍛えるのが一番のベースです。また英語と日本語では言語の幅が違うので、日本語でうまく歌えるようにトレーニングする必要があります。僕の解決方法はまず英語で歌ってみるんです。するとそこにヒントがあります。

――物語には婚約者のエマ(笹本玲奈)と娼婦のルーシー(濱田めぐみ)、二人のヒロインが登場します。改めてこの作品に描かれている愛とはどのようなものだと思われますか。
 ジキルもハイドも、何かを求め何かにすがりつきながら生きています。エマは、人生を共に歩んでいこうと思う伴侶であり、母性でもあります。一方ルーシーは、彼のハングリー精神や自主性と共鳴する存在。人は生きていくために必要な結びつきと、本能的に求め合う相手がいるものですよね。ジキルにとってはどちらも必要で…ずるいですよね(笑)。4年前にもご一緒したお二人ですが、技術力が高くて舞台をどう引っ張るかを心得ている女優だから、再演での芝居がとても楽しみです。

――今後も挑戦してみたいことはありますか?
 ちょうどデビュー25年、今がいい節目だと思います。ミュージカルも映像も同じですが、この年齢とキャリアだからこその自分らしさを追求したいですね。例えば、歴史を動かしてきた人物にチャレンジするとか、きっと楽しいでしょうね。歌について言うと、昨秋、デビュー25周年を記念してミュージカルの曲を中心にアルバムをリリースしました。歌は私の原点であり、大切な表現方法。最近は童謡の中に深いメッセージがあることも発見したり。舞台以外の場所でも日本の歌を歌い継いでいきたいと思っています。

931A2695p - コピー

プロフィール 石丸幹二●いしまる・かんじ
1990年、劇団四季ミュージカル『オペラ座の怪人』でデビュー。2007年に退団するまで看板俳優として数多くの舞台に出演する。現在は舞台、映像、音楽、朗読と多方面で活躍。近年の出演作は『ジキル&ハイド』『モンテ・クリスト伯』『兵士の物語』『エリザベート』など。映像は、大河ドラマ『花燃ゆ』『アルジャーノンに花束を』『半沢直樹』など。発売中のデビュー25周年記念アルバム『My Musical Life』では、劇団四季時代から現在までの出演楽曲や、ミュージカルの名曲を収録。デュエット・ゲストに檀れい、花總まり、笹本玲奈らを迎えた豪華版。

 

931A2687p

ミュージカル『ジキル&ハイド』
原作:R・L・スティーブンソン
音楽:フランク・ワイルドホーン
脚本・詞:レスリー・ブリカッス
演出:山田和也 上演台本・詞:髙平哲郎
出演/石丸幹二、濱田めぐみ、笹本玲奈、石川 禅、畠中 洋、花王おさむ、今井清隆、他

◆東京公演
3月5日(土)~20日(日)東京国際フォーラム ホールC
http://www.tohostage.com/j-h/index.html

◆大阪公演
3月25日(金)~27日(日)梅田芸術劇場メインホール
http://www.umegei.com/schedule/497/

 

 


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