インタビュー & 特集
INTERVIEW! Being at home with Claude ~クロードと一緒に~』 松田凌さん×伊達暁さん
Lecture-Spectacle『Being at home with Claude ~クロードと一緒に~』が、7月4日(月)、5日(火)に東京・新国立劇場 THE PITで上演される。
2014年に日本初演、2015年に再演。カナダ・モントリオールの裁判長の執務室で、殺人事件の容疑者として自首してきた「彼」と刑事との緊迫した濃密な会話が展開されていく本作品。今回は、「Lecture-Spectacle(読み聞かせ)」=朗読劇という新たなスタイルで届ける。
稽古初日、「彼」役の松田凌さんと刑事役の伊達暁さんを直撃。それぞれ初演、再演に出演し作品の世界観に触れてきた2人の、来週に迫った公演へ向けての心境を聞いた。(取材・文/金本美代)
INTERVIEW & SPECIAL 2016 7/3 UPDATE
――伊達さんが2014年の日本初演、松田さんが2015年の再演に出演しています。今日顔合わせと本読みをしたそうですが、久しぶりに『クロードと一緒に』という作品に触れて感想は?
伊達:僕は2年ぶりくらいかな。久しぶりに声に出して読んだんですけど、息切れしましたね(笑)。それで「そうだ、こんなにしんどかったんだな」って思い出して、本番に向けてペースを戻さなくてはということを痛感しました。演出が杉本凌士さんに変わって、台本も今回の公演に合わせて手が入ったので、前回の公演でしゃべり慣れたセリフとはちょっと違っているのが新鮮で楽しめました。お客さんも抵抗無く聞けると思うし、それぞれの演出家の色があると思いますね。今回は今回で楽しみです。
松田:僕にとって、『クロードと一緒に』はいままで真摯にやってきた作品の中でも、本当に大きな意味を持つ作品だったんです。だから、今日の稽古で久々に「彼」になってみて不思議な感覚になりました。当時の感覚がにじんできたような。ちょっと怖かったですね。それに加えて、伊達さんが言われたとおり、上演台本が少し変わって、自分のセリフの言い回しとか、刑事との掛け合いも変わっているので、また新しい作品のような感じもあったり。
――2人が今回の出演を決めたのにはどんな思いがあったのでしょうか?
伊達:普通の舞台でなく朗読劇という、別の公演形式でやることに興味を持ちました。完成形がまったく見えないのも新鮮だったし。今日最初の本読みをやって、杉本さんからも音楽の入る場所の説明をしてもらって、やっと少し見えて来ました。音楽が入ったりとか、映像を使ったりもするようで、「別の公演形式の『クロードと一緒に』もありかな」と思い始めています。
――『クロードと一緒に』という作品自体の魅力も、今回の出演を決めた理由にありますか?
伊達:それもあったかな。この作品って、相手にセリフをどう届かせてやりとりできるかっていうのが大きな部分を占めていると思うんです。謎解きだったり、セリフの言葉ひとつの細かい意味っていうよりも、取り調べの時間が36時間を超えて、刑事に対して事件の真相を「彼」が語り出すんだけど、語り出したときに「この人になら」じゃないけど、「36時間という、これだけの時間を一緒に過ごしたこの相手だから話し始めたんだな」っていうスタートが切れるかどうかが勝負なんですね。だから、今回のように、相手役のことを見られない朗読という公演スタイルをとるときにどう成立するかという。それに興味があったし、これからの課題だなという気がしています。
――松田さんはいかがですか?
松田:自分にとって、いい意味でも悪い意味でも大きな作品になっているんですけど、自分自身ほんとうにこの作品のトリコです。会話劇が数多くあるなかで、上位クラスの言葉数の多い、情報量の多い作品だと僕は思うんです。それが逆に観てるお客さんにとっては圧倒される感じになってしまうかもしれないんですけど、それを通り越してというか、いつの間にか自分が話の中に入って依存してしまうという、ある種見てはいけない部分を見てしまっていることが、中毒性となって惹かれている気がしています。僕はもうお話をいただいたら、なにがあっても出たいと言ってしまうくらい手放したくない作品でして(笑)。一方で、伊達さんが言われた通り、リーディングドラマに変わると、どうやってこの作品を届けられるのかなとは思いました。
――松田さんも伊達さんのようにどうなるか想像がつかなかったと。
松田:はい。前回は自分の全てを使って体現することに助けられているところがあったので。今日、演出の杉本さんから、「窮屈になるかもしれないけど、そこをどうやるかっていうのが課題かもしれない」って言われたんですが、ほんとにそうだなって思って。楽しみだと思う部分もあるけど、難しさが一回り大きくなったかも。
――伊達さんは、松田さんが出演した再演をご覧になったんですよね?
伊達:観ました。さっき言った、「あの刑事でなかったら、あれだけの言葉を彼は吐かなかったかもしれない」ってことを、感じた公演でした。今回も松田君にもお客様にもそう思ってもらえるように届けたいなと思いますね。
――松田さんにとっては、初演メンバーである伊達さんとの共演ですね。
松田:僕にとっては光栄だし、ありがたいです。この作品に関わった出演者とは、作品を一緒に作り上げた“戦友”のような絆があると思っていて…。
伊達:その“戦友”意識って不思議と、僕もある。同じ作品をやったってことで、実際には絡んでないとしても。不思議と同じ作品をやった相手役って意味でもそういう“戦友”意識があるよ。
松田:ほんとうですか? この作品だから、より思うのかもしれないですね。身を削ると言うとなんかダサイですけど、どちらもお互いを変化させるためには、自分をしぼり出すくらいの気持ちで言葉を届けないと状況が変わらないって作品だから。
――今回は、初演・再演と警護官役だった鈴木ハルニさんが速記者役として登場することについては?
伊達:今日やった限りでは、まだラトレイユ(警護官の名前)だよね(笑)。
松田:ですね(笑)。
伊達:もっと頑張ってもらわないとね!(笑)
松田:ハルニさんは唯一初演、再演の全公演出演している人だから、もしかしたら自分たちより(警護官の)イメージが出来上がってしまっているかもしれないですよね。今回は、それをぶちこわしてもらいたい。
伊達:でも、速記できなそうだよね(笑)。
松田:できなそう(笑)! 完全に刑事の右腕感がないですよね。なんだか紛れ込んじゃった感じ? …こんなこと言ってるとハルニさんが乱入して突っ込まれそうですけど(笑)。
――ライブ・ミュージシャンの水永達也さんがどう絡んでいくのかも気になりますね。
伊達:水永さんが生で音を入れてくださるんですけど、大変だろうなと思います。入れどころもそうだけど、音量、音質も気を遣うんだろうな。
松田:僕たちと舞台上にいますからね。3公演毎回音が変わるだろうし。もう1人のキャストが加わったみたいな感覚で立っていてくれると思うので、自分たちも力にしたいですし。助けられているなって思いました。
伊達:今日、こんな感じって実際にギターとシンバルの音を聞かせてくれてイメージが広がったね。
松田:今回、新たな見どころのひとつじゃないでしょうか。生演奏は。
伊達:ノックとかの効果音や、普通にセリフの後ろで流れているときもあるけど、強い心象を残したいところに音を入れていただいて、それが絶妙。
――音楽がどう作品に絡んでいくか、これは注目ですね。
松田:これまでは、台本を放してやっていたけれど、今回はしっかりと本を読んで言葉を聞かせる。『クロードと一緒に』を朗読劇にするのは実はすごく難しいと思うんですけど、「朗読劇か、なるほどな、と思ったりもする。具体的にどこがそう思ったかを説明するのは難しいんだけど…。でも、舞台の設定である1967年7月5日のちょうど50年後が始まる年にできるというのもなんだかいいですよね。
――どんな空間になるのか、楽しみになりました! 最後に、楽しみにしている皆さんへ、メッセージをお願いします。
伊達:朗読劇とはいえ、本を持って口先だけでしゃべってるわけではないので。やっぱりある状態にならないとそのセリフは言えないわけです。そういう意味では、動きまわってはいないけれど、その状態になってる読み手=俳優を見ることで逆に想像する余地は大きくなるんじゃないかなという気がしています。動かないからこそ、「実際はこの人はのたうちまわっているんじゃないだろうか」とか、「この人は壁を蹴ってるんじゃないだろうか」っていう想像の余地が、お客さんに広がるんじゃないかな。“動かない面白さ”を楽しんで欲しいですね。
松田:それ素敵ですね…。いま伊達さんのおっしゃったことが全てで付け加えることはありません。
伊達:これいろんなところで使って!
松田:「…って伊達さんが言ってました」って?(笑)。でも、ほんとうに伊達さんの言った通りです。自分の中での最終目標はそこかなと今、感じられましたし、多分それによって、[P2]前回観た方も今回初めて触れる方も「彼」という存在、刑事という存在、新しい世界に間違いなく出会えると思います。
Lecture-Spectacle「Being at home with Claude ~クロードと一緒に~」は、7月4日(月)、5日(火)に東京・新国立劇場 THE PITで上演。
<プロフィール>
まつだ・りょう/1991年9月13日 、兵庫県出身。2011年デビュー。2012年、舞台『ミュージカル『薄桜鬼』初主演、2013年、ドラマ『仮面ライダー鎧武/ガイム』にレギュラー出演。以降も舞台、映画、ドラマで活躍。今後の出演作に、2016年8月12日(金)京都劇場にて、ミュージカル『薄桜鬼』HAKUMYU-LIVE2、9月1日(木)東京、大阪、北九州にて、舞台「瞑るおおかみ黒き鴨」出演。
だて・さとる/1975年7月14日、東京都出身。96年、演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」の旗揚げに参加。以降、同ユニット公演のほか客演多数。近年は、ドラマ、映画、CMナレーションなど映像へも活動の場を広げている。7月6日から、つかこうへい七回忌特別公演『新・幕末純情伝』(紀伊國屋ホール)出演、11月には阿佐ヶ谷スパイダース『はたらくおとこ』の出演が控えている。
【公演概要】
Lecture-Spectacle『Being at home with Claude~クロードと一緒に~』
日時:2016年7月4日(月)19:30開演、7月5日(火) 12:00開演/16:00開演
会場:新国立劇場 小劇場 THE PIT
作:ルネ=ダニエル・デュボワ
翻訳:イザベル・ビロドー/三宅 優
上演台本・演出:杉本 凌士[劇団 男魂(メンソウル)]
出演:松田 凌 鈴木 ハルニ 岩尾 祥太朗/伊達 暁
ライブ・ミュージシャン:水永達也
料金(全席指定・税込): 一般5,950円 当日6,850円 学生券(7月5日の2公演のみ)3,500円
公式サイト:http://www.zuu24.com/pre/withclaude2016/
※15歳未満入場不可(映画のR-15と同程度のセクシュアルな表現があるため、15歳未満の入場をお断りします)