インタビュー & 特集

SPECIAL! 舞台『鱈々(だらだら)』稽古場ルポ

いよいよ10月7日から天王洲 銀河劇場にて、舞台『鱈々(だらだら)』の上演が始まります。そのタイトルといキャスティングといい、なにかと話題の韓国発の戯曲で、演出は栗山民也さん、キャストは藤原竜也さん、山本裕典さん、中村ゆりさん、木場勝己さんの4人芝居。先日、都内稽古場にお邪魔して、熱くぶつかり合う演技合戦を拝見! 一足早く、この作品の熱量をお届けします。

INTERVIEW & SPECIAL 2016 10/5 UPDATE

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韓国の教科書にその作品が掲載されているほどの大御所作家・李康白(イ・ガンペク)の作品を、演技達者な4人の日本人キャストでお送りする『鱈々(だらだら)』。
稽古見学のその日は、4・5・6場の稽古が予定されており、ラジオの仕事終わりで山本裕典が稽古場に到着するやいなや、時間が惜しいとばかりにすぐに稽古が始まった。

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舞台は、倉庫の中。藤原演じるジャーンと山本演じるキームは、ここで寝泊りしながら倉庫番をしている。倉庫の中の荷の仕分けこそが絶対的世界と信じて、黙々と作業する真面目一徹のジャーンに対し、いい加減で粗野な同僚のキームは悶々とした不満を抱いていた。そこで、キームは一計を案じ、勝手に荷物をすり替えて、ジャーンを混乱させることに成功。ジャーンはそのことばかりに気をとられ、イライラしながら倉庫中をウロウロ。キームはその間、彼らの倉庫に出入りしているトラック運転手(木場勝己)で、交際中のミス・ダーリン(中村ゆり)の父親に、イカサマの花札勝負を挑まれていた…。

中央の小さなテーブルで、自分の彼女の父親に、どんどん手持ちのお金を巻き上げられていくキーム。ふたりを演じる山本と木場のやり取りは、いかにもギャンブルの場面らしく駆け引きの緊迫感が迫ってくる。といっても、木場演じる父親のほうは、イカサマで絶対負けないわけだから、その立場も何もかもが優位なのだけど。
中村ゆり演じるミス・ダーリンが、途中キームに賭け事をやめるようを促すも、結局有り金を巻き上げられてしまうことに。激しく悔しがるキーム・・・。大金を手にして上機嫌の父親は、キームを連れて飲みに出かける。倉庫に残された、ジャーンとミス・ダーリン。倉庫街のすべての男と関係をもってきたミス・ダーリンは、自分の魅力になびかないジャーンに対し、執拗に迫る・・・。

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演出の栗山民也は、ひとつの場面が終わるたびに、演出助手とともに、椅子ごと舞台のところまで移動する。一人ソファーに座る藤原、テーブルの前で親子仲良く座る木場&中村、床に直に座って演出家と向き合う山本。栗山は、そんな役者たちとともにセットのテーブルを囲んで円陣をつくり、ダメ出しをはじめた。
「全財産をかけた勝負を挑んでいるので、もっと動物のように激しい勢いで叫んで」と山本に指導が入る。ほかの部分もひとつひとつせりふを振り返りながら、丁寧に演技指導がつけられる。

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ダメ出しを一通り終えた後、もう一度、同じシーンを繰り返した。ダメ出しされたところが目に見えて大きく変化し、ますますコミカル味が増して面白い場面に。初日までには、さらに何段階もブラッシュアップされることだろう。

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続くシーンは藤原竜也と中村ゆりの2人きりの場面。間違えて倉庫に残されたほうの箱を、開ける開けないで丁々発止のやりとりがあり、箱を開けさせまいと顔を真っ赤にして身を挺して頑張る藤原の姿に、演出席からも笑いが起こる。
演出家から、さらにリクエストが飛んだ。「止めようとする彼を、足で蹴って!」。
もちろん、場面はさらに面白くなり、蹴られた瞬間には、藤原自身が少し笑ってしまったほどだった。本番は果たしてどうなっているのか?(アドリブチックで楽しみなシーンとなった)

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次々の稽古が進む中、休憩時間に藤原と山本に話を聞くことができた。

藤原「栗山さんには、短い時間だけど深くていい時間をいただいています。この戯曲は、山本君の演じる役と僕の演じる役が巧く対照的に書かれていて、優れた作品。ジャーン役と自分自身も、似ている部分はありますよ。“この動作が自分の人間性なんだ”と思うところとか。

山本「確かに竜也くんは普段もしっかりしてるから、ジャーン役ほど極端ではないけれど、似ているところはあるな、と感じますね。僕は僕で、“キーム役のまんまですね”といわれますが(笑)。対照的な部分が、そのままふたりの素に近いかもしれません。先ほどの稽古で栗山さんが、“動物的に”とおっしゃってたんですが、僕自身にもそういうところがあるので、キームの気持ちはわかります」

藤原「今回は、2人芝居のようなものですから、やるとなると、やはり難しいですね。深いなと思いますが、その分、面白いです」

山本「僕は、いまだに緊張します、藤原さんとやるのは(笑)。ちゃんとできるのかな、って不安になります。毎日、マラソン大会の前の週みたいな気持ち(笑)。夜も眠れない」

藤原「いい緊張だよ(笑)」

山本「でも、稽古がうまくいくと、ものすごい達成感がありますね。ものすごく気持ちいい」

藤原「4人で演じ、栗山さんが演出しているシンプルで深い作品です。濃密な時間になればと思っていますので、ぜひ見ていただきたいですね」

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今回、静の藤原竜也に動の山本裕典というイメージの、好対照な役柄。特に藤原は、稽古場を見る限りでは、いつものほどばしる感情を抱えた役柄とは違って、控えめな感じで新鮮に映った。ミス・ダーリンがどんなに口説いてもなびかなかったわけ――それも今回の役が新鮮な理由のひとつだろう。劇場でこれまで見たことのない藤原竜也を、そして果敢に藤原竜也に挑む山本裕典を、さらに演技達者な役者たちのバトルを、ぜひ見てほしい。

VISUAL

舞台『鱈々(だらだら)』
2016年10月7日(金)~10月30日(日) 天王洲 銀河劇場
※11月にツアーあり(長野、静岡、大阪、福岡、鹿児島)

作:李康白(イ・ガンペク)
演出:栗山民也
出演:藤原竜也、山本裕典、中村ゆり、木場勝己


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