インタビュー & 特集
SPECIAL!『エリザベート TAKARAZUKA20周年 スペシャル・ガラ・コンサート』ゲネプロレポート
『エリザベート』宝塚歌劇初演から20周年を記念したスペシャル・ガラ・コンサートが梅田芸術劇場メインホールで開幕! 初日の前日には、水夏希さん主演版、姿月あさとさん主演版のフルコスチュームバージョンの公開舞台稽古が続けて行われました。『エリザベート』を熟知した歴代メンバーだからこそ、さらなる領域へと踏み出したような深みが端々に。コンサートということを忘れるような圧巻の舞台、その模様をレポートします。(取材・文/小野寺亜紀、撮影/岸隆子(Studio Elenish))
INTERVIEW & SPECIAL 2016 12/15 UPDATE
2012年のガラ・コンサートを踏襲した舞台装置は、3つの階段&スロープなどを配したシンボリックなもの。この階段&スロープがときに、黄泉の国へと通じる道にもなり想像力をかきたてられます。舞台上でオーケストラ演奏も行われ、「キッチュ」では演奏者も一緒に楽器を揺らして盛り上がったりと一体感のある演出。また何色にも変化する照明、光の帯が、陶酔の世界へといざなってくれます。
まず2007年雪組版と同じ水夏希さん(トート)、白羽ゆりさん(エリザベート)たちを中心に上演された「フルコスチュームバージョン」。冒頭のトート登場のシーンから、水トートは宝塚時代を凌駕する魅惑的な歌声と、繊細かつ押し出しのある役作りで劇空間を支配します。退団後6年のブランクがあるとは思えないぐらい、男役・水夏希がそこに。上演時と同じボリューム感ある黒羽根を見事に操り、一つ一つのしぐさが美しい。手にはやはり以前と同じくタトゥーが。この手の甲をときにそっとエリザベートの顔に沿わせるなどして、観ている方はドキドキさせられます。トートの怒りや憤り、哀しみが全編通して手に取るように分かるトート。だからこそ、ラストでエリザベートが胸に飛び込んできたときの喜びの表情に、感情移入できるのです。
白羽さんのエリザベートは美しく気高く、そして儚い。特に今回は儚さが際立っているように感じ、それは様々なものを背負っている重み、強く生きることの反動で膨らんだエリザベートの人生観を反映させての役作りなのだと感じました。初風緑さん演じるフランツの品格、樹里咲穂さん演じるルキーニの軽妙さ、涼紫央さん演じるルドルフの憂いある目の表情、未来優希さん演じるゾフィーの気迫。どれも現役時代や2012年のガラ・コンサートよりグレードアップ。樹里さんはこの後(姿月バージョンで)、アクの強さを封印して優しいフランツを演じてみせるから、さらに驚きです。
他にも元雪組トップ娘役・月影瞳さんの少年ルドルフ、元宙組トップ娘役・紫城るいさんのリヒテンシュタインなど、なんと豪華な配役か。宝塚歌劇団の歌姫・美穂圭子さんや、ベテラン男役の飛鳥裕さんが、「ミルク」の市民として熱唱している姿にも胸が熱くなります。その「ミルク」のコーラスたるや、劇場の壁が震えそうなぐらいのボリューム圧。こんなところでも『エリザベート』20周年の底力を感じたのでした。美穂さんのマダム・ヴォルフは初演時も相当なインパクトでしたが、ルキーニとの絡みが多いコンサートバージョンは、さらに艶やかさがアップしていました。
エルマー(夢輝のあ)やジュラ(蓮城まこと)の、声色をグッと抑えた後半の役作り。可憐なヘレネと皇后への哀憐が伝わるスターレイを演じた音花ゆりさん……。書き連ねても足りないほど、それぞれの演技、歌が心に残ります。
姿月あさとさんのトート、大鳥れいさんのエリザベートで上演された「フルコスチュームバージョン」は、姿月さんの一見本心を隠したような冷たい表情のトートと、芯の強さをドンと秘めた大鳥さんのエリザベートでまた違った趣。黒い手袋をはめた姿月トートは、歌唱もただ力強く伸びやかに歌うというのではなく、少し異質な声色も混ぜるなど様々な声を操る姿に、熟練の技を感じました。「最後のダンス」の高音シャウトは独壇場。こんなにパワフルなトートなのに、動揺した心を落ち着かせるように自らの髪をそっとなでるなど、演技も繊細です。大鳥さんのエリザベートは、ただ強いだけではない、心が折れそうになるキワの演技をじっくり見せてくれます。「私だけに」のナンバーもやはり魂が宿り素晴らしい。湖月わたるさんのルキーニは、トート閣下への忠誠心と狂気を絶妙にブレンド。余裕で舞台を楽しんでいるように感じました。
マイクを持って歌う「フルコスチュームバージョン」は、扮装していながらも歌い手の個性や人生が役の輪郭としてさらに浮かび上がってくるよう。マイクに歌を、想いをぶつけるというスタイルが、真っ直ぐに役の生き様を届けてくれます。黒天使もいない、霊廟もない、そんな舞台なのに、立ち上がってくる楽曲のパワーや心情の深さは計り知れません。これも『エリザベート』の表現者として楽譜と格闘し続けたキャストたちの力なのでしょう。
今コンサートでは、さらに初演メンバーが集まる「モニュメントバージョン」(写真下)、歴代出演者が名曲を歌い継ぐ「アニヴァーサリーバージョン」があります。20周年ゆえと言わず、今後もぜひこのガラ・コンサートで名作の魅力を伝え続けてほしいです。
※2017年1月発売予定『omoshii mag vol.8』は宝塚OGの特集です! こちらでも『エリザベート スペシャル・ガラ・コンサート』インタビューや舞台写真などをたっぷりお届けする予定です。お楽しみに!
【公演データ】
三井住友VISAカードpresents
『エリザベート TAKARAZUKA20周年 スペシャル・ガラ・コンサート』
脚本・歌詞:ミヒャエル・クンツェ
音楽・編曲:シルヴェスター・リーヴァイ
オリジナルプロダクション:ウィーン劇場協会
構成・演出・訳詞:小池修一郎
演出:中村一徳
出演:一路真輝、麻路さき、高嶺ふぶき、稔幸、香寿たつき、えまおゆう、姿月あさと、白城あやか(東京公演のみ)、湖月わたる、月影瞳、彩輝なお、花總まり、安蘭けい、春野寿美礼、朝海ひかる、大空祐飛(東京公演のみ)、瀬奈じゅん(東京公演のみ)、水夏希、大鳥れい、霧矢大夢(大阪公演のみ)、紫城るい、白羽ゆり、凰稀かなめ(東京公演のみ)、龍真咲、ほか
<宝塚歌劇団>※特別出演
轟悠(東京公演のみ/大阪公演はビデオ出演)京三紗、飛鳥裕、五峰亜季、美穂圭子、凪七瑠海(東京公演のみ)
◆大阪公演 12月9日(金)~18日(日) 梅田芸術劇場メインホール
◆東京公演 2017年1月8日(日)~20日(金) Bunkamura オーチャードホール
梅田芸術劇場 東京:0570-077-039 大阪:06-6377-3800
URL:http://www.umegei.com/elisabethgala20/