インタビュー & 特集
IMTERVIEW! ミュージカル『フランケンシュタイン』相島一之さん
韓国で大ヒットロングランを記録し、いよいよ初上陸するミュージカル『フランケンシュタイン』。グランドミュージカル初挑戦の相島一之さんは、他の主要キャストと同じく二役を担い、トリッキーな作劇のドラマティックな舞台に飛び込みます。
(取材・文/小野寺亜紀)
INTERVIEW & SPECIAL 2016 12/31 UPDATE
舞台は19世紀ヨーロッパ。科学者ビクター・フランケンシュタイン(中川晃教/柿澤勇人)とアンリ・デュプレ(加藤和樹/小西遼生)との友情、ビクターが生み出した怪物(加藤/小西)の復讐など、“生命創造”“愛と友情”をテーマにした物語がスピーディに展開します。
「台本だけ読むと救いのないお話ですよ。でもそこで、舞台に立つ俳優が何を感じ、何を大切に思うかで物語が“揺れる”のだと思います。今回はダブルキャストの出演者が4人いて、4パターンあるわけです。さらに“スペシャルバージョン”(ビクターとジャックの二役を中川さんと柿澤さんが1公演で演じ分ける)もあるんですよ! 恐らく毎日お芝居も変わってくるでしょう。そういう舞台は私も経験したことがないので、とても楽しみです。このミュージカルの最大の見どころは、ダブルキャストのイケメン4人ですね(笑)。歌ひとつとっても、4人それぞれ全く違って見事です。すごく素敵ですよ。この作品は音楽が主役といっても間違いはありません。音楽で語る要素が大きく、物語を背負っています。激しい楽曲が多く、僕は好きですね。音楽が入ると台本の世界が別なものに感じるという…、もうマジックです。舞台美術も素晴らしく、オーケストラ、照明も加わり、まさに異次元、異空間を確実に創っていくはず。力技的なミュージカルの醍醐味を感じていただけると思います。僕も歌わせていただきますが、そんなに多くはないです(笑)」
音楽活動もしている相島さんですが、ミュージカルは三谷幸喜さんの『オケピ!』や、オフ・ブロードウェイ・ミュージカル『ゴルフ・ザ・ミュージカル』など、意外にも3作のみ。すべてコメディでした。
「こういう“ザ・ミュージカル”という作品は初めてですから、まず稽古が面白いです。ミュージカルは大きい塊が連続してバーン、バーンと飛び出す感じ。普段やっているお芝居は、一つひとつ手先でこねるようにして創り上げていゆきますが、ミュージカルはライブコンサートや、コントにも似ていると感じます。2時間かけて伝えるようなお芝居を、コントでは5分10分に凝縮するから、大きな山が続きますよね。そのような感覚のミュージカルのなかで、今回僕ができること…。これは演出の板垣(恭一)さんともお話していたのですが、大きな山にブリッジをかけていくのがお芝居だと思うし、そういう演劇的なアプローチの仕方が実は色々あるはず。そこを探っていくと面白いと思います」
演じるのは、ビクターの婚約者ジュリアの厳格な父・ステファンと、ギャンブル闘技場に出入りする守銭奴・フェルナンドという真逆な雰囲気の二役。
「昔、三谷幸喜さんがお芝居について言っていたのですが、『まず自分が楽しみ、それによって相手を楽しませることが、お客様を楽しませることになる』と。今回の二役でも、僕がまず楽しむことで、説得力を持たせられると思います。父親役は社会的な規範をもった役ですが、金貸しのフェルナンドは普段の芝居なら“やりすぎですよ”と言われるような役作りにも、チャレンジできそうな気がします。歩き方から何から劇画チックに、アニメの悪役みたいに楽しめたら」
主要キャストがそれぞれ二役というのは、いろいろな意味で面白い試みとなりそうです。
「これは(オリジナルを作った韓国版の)作家の企みなのだと思います。例えば(音月桂さん演じる)ジュリアはビクターをすごく好きなのに、音月さんのもうひとつの役カトリーヌは、アンリ役の役者が演じる怪物を好きになるわけです。恋する相手役が劇中で変わるって、どんな芝居になっていくのか…。みなさん二役を、すごく楽しそうに演じていますね! この二役という試みが、芝居自体を弾けさせるのだと思います。役者は不思議な生き物で、舞台上で楽しんでいると何かを発し、それがお客様にまでいい波動として届くものです。そういうパワーを考えての演出なのでしょう」
フランケンシュタインという題材は日本人にとって親しみがあるものの、よく知られていない部分があるとも。
「僕も含めて、フランケンシュタインというとアニメの『怪物くん』に出てくるフランケンのイメージが大きいじゃないですか。でも本当のお話は、死んだ人間を生き返らせたビクター・フランケンシュタイン博士と、その怪物との葛藤の物語です。そこは日本人のお客様にとってすごく新鮮だと思います。さらに再生医療や、細胞からクローンを生み出すとか現代の進んだ医学とリンクしてくるところもあって。その行き着く先がこの物語の結末なのかと、驚かれるはずです。みなさんに何かを感じていただける、何かが見える作品だと思います。また原作にオリジナルな解釈が加わり、少しボーイズラブの要素も匂いつつ、めちゃくちゃ歌の巧いキャストが歌い上げるという(笑)。本当に盛りだくさんですので、ぜひ劇場に遊びにきてください。相島も頑張っています!」
相島一之(あいじま・かずゆき)
1961年11月30日生まれ、埼玉県出身。1987年から1994年まで劇団「東京サンシャインボーイズ」の全公演に出演。以降も三谷幸喜作品には舞台『オケピ!』『コンフィダント・絆』、映画『12人の優しい日本人』『THE 有頂天ホテル』、TV『竜馬におまかせ!』、大河ドラマ『新選組!』など数多く出演。長年、舞台や映像にと幅広く活躍し、2016年はこまつ座『紙屋町さくらホテル』で好演した。またブルースバンド「相島一之&THE BLUES JUMPERS」を結成し、CDリリースやライブ活動も行っている。
ミュージカル『フランケンシュタイン』
音楽:イ・ソンジュン
脚本・歌詞:ワン・ヨンボム
潤色・演出:板垣恭一
訳詞:森雪之丞
音楽監督:島健
振付:森川次朗/黒田育世
出演:中川晃教/柿澤勇人(Wキャスト)、加藤和樹/小西遼生(Wキャスト)、音月桂、鈴木壮麻、相島一之、濱田めぐみ、他
◆東京公演
1月8日(日)~29日(日) 日生劇場
◆大阪公演
2月2日(木)~5日(日) 梅田芸術劇場メインホール
◆福岡公演
2月10日(金)~12日(日) キャナルシティ劇場
◆愛知公演
2月17日(金)~18日(土) 愛知県芸術劇場大ホール