インタビュー & 特集
INTERVIEW! ミュージカル『手紙』藤田俊太郎さん×柳下大さん(1)
東野圭吾のベストセラー小説『手紙』を原作にしたミュージカル『手紙』が、1月20日初日を迎えました。2016年の初演から演出を務める藤田俊太郎さんと、主人公・直貴をWキャストで演じる柳下大さんに、稽古中に、お話をうかがいました。(取材・文/臼井祥子)
INTERVIEW & SPECIAL 2017 1/22 UPDATE
『手紙』は、弟の学費のために殺人犯となってしまった兄・剛志と、兄が犯した罪のために加害者の家族として苦難の道を歩むことになった弟・直貴の物語。日本のオリジナルミュージカルとして、2016年に三浦涼介が弟役、吉原光夫が兄役で初演され、大きな話題を呼びました。
「オリジナルミュージカルなので、歌も演出もすべて初めて世に出すものでしたから、全員でアイデアを出しあい、全員で試行錯誤して取り組みました」と話すのは、演出の藤田さん。
「思い出してみると、とんでもない戦いでしたね。みんな喧嘩して、みんな仲悪くなって、納得できなくて歌稽古の途中で帰った人もいました。たとえば藤田さん(ご自分のこと)とか(笑)。キャストだけではなく、全クリエイターがずっと稽古場にいて、全員一丸となって意見を出し合いながら乗り越えて作った作品です。だからこそ、前回やったメンバーは家族のようだと思っています」
その作品の再演に、直貴役として、太田基裕さんとWキャストで出演する柳下さんは、初演をDVDでご覧になったそう。その感想は…。
「初演の上演時にも評判は聞いていたのですが、とにかく衝撃的でした。もともと藤田さんとご一緒したいと思っていたので、『手紙』の演出を観て、より楽しみになりました。たとえば“舞台上と客席を逆転する”という発想に心をつかまれました。DVDなのに世界に入り込めて、その熱量、情熱が伝わってきて……だから、こういう作品にかかわれるんだということがうれしいです」
初演時も再演時もオーディションを行い、書類選考をとおった200人ほどの応募者に藤田さんは「あなたが考える凶器を持ってきてください」と要求したのだそう。その理由は…。
「僕が“全員が加害者を演じること”がこの芝居には絶対的に必要なことだと思っているからです。誰しもが直貴や剛志になりうる話なんですよと、それを演じられる強さを役者に求めていたからです」
そして、柳下さんが心をつかまれたという演出を、再演では一新するのだと熱く語りました。
「この一年間でいろんなことがありました。とんでもない凶悪犯罪があって、しかもそれがすでに風化しかけている。そういう時代のなかで、まずは前回自分が興奮したアイデアを捨ててみよう、と思いました。だからフライヤーに宣伝文句として書いてある、前回話題になった演出は、今回はやらないんですよ(笑)。アイデアに没入すべきじゃない。それよりも音楽が希望としてきちんと鳴り響くことを大切にしたい。そして前回できなかった、託して終わった“希望を描く”ということ、それをいかに歌で表現していくかということを、きちんとやりたいなと思いました。そうして、新しい直貴を迎えようと」
迎え入れられる新しい直貴の一人、柳下さんは、稽古初日には事前の歌稽古で、「1月20日に出来上がっているべきものが、すでにできていました」と藤田さんが絶賛するほど準備万端で稽古をスタート。
「ミュージカルはあまり経験したことがないので…」と控えめに言葉を選びながら「この作品は、お芝居と歌の境目をなくそうとしていて、言葉にできないものが必然的に歌になってしまっているという形で、稽古をしています。そういう意味でも、これまであまり出たことのない作品で、今まで自分が感じなかった感情、言葉にできなかった感情を、メロディの助けを借りて表現しています。今、ここで、どんな感情で演じればいいのか、いろんなシーンで試しながらやっています。それをやらせてもらえる環境であるということが、とても楽しいです」
さらに歌についてどんな準備をしたかたずねると「とにかく歌うことです」という答えが返ってきました。
「歌稽古の初日には歌詞が(頭に)入っていて、見ないで歌える状態にしていました。自分でできることをやっていないと、追いついていけない作品だとわかっていたので。稽古が始まったら、表面的なことではなくて、中身を作っていくことに集中したかったんです」
(part.2につづく)
ミュージカル『手紙』は、1月20日から新国立劇場 小劇場、そして2月11日から新神戸オリエンタル劇場にて、上演中です。
詳細は下記の公式サイトにてご確認ください。
http://no-4.biz/tegami2/