インタビュー & 特集

INTERVIEW!  「博多座 ニ月花形歌舞伎」平岳大さん

昨年のスーパー歌舞伎Ⅱ『ワンピース』の成功も記憶に新しい市川猿之助さんが、博多座のニ月花形歌舞伎では『男の花道』『艶姿澤瀉祭』『雪之丞変化』で、観客に美しい夢を見せている。その共演者として、『ワンピース』に引き続き出演している平岳大さんに、前作を踏まえて新たに挑む歌舞伎への思いを聞いた。(取材・文/湊屋一子、撮影/増田慶)

INTERVIEW & SPECIAL 2017 2/20 UPDATE

スーパー歌舞伎として『ワンピース』が上演されると聞いたとき、歌舞伎ファンはもちろんだが歌舞伎に興味のない人々もびっくり仰天したはずだ。だがその結果は大成功。そもそも歌舞伎はその時代の話題を劇中に取りいれ、奇想天外なワクワクするストーリーに作り替えるのがお手の物。とはいえ現代の感覚ではなかなか歌舞伎にここまで大胆に慣れる人もそうはいない。それに挑んだ主演の市川猿之助には「これを絶対に成功に導かねば」という、大きなプレッシャーもあったはずだ。その際、共演者の一人に選ばれたのが平岳大だった。もちろん歌舞伎出演は初めて。歌舞伎俳優の中に入って、しかもこれだけの注目作で、自分に求められているものは何なのか……さぞ苦悩もあっただろう。

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「何で僕に?という驚きはありました。もちろん歌舞伎をやったことがないし……ただ、歌舞伎だから特別にどうというのではなく、新しい作品に挑むという点ではどんな作品も同じですから、全力を尽くすだけでしたね」

 前回のスーパー歌舞伎Ⅱ『ワンピース』とは違い、今回の2月花形歌舞伎の『男の花道』『雪之丞変化』は、すでに何度も演じられている作品。それだけに難しいと感じている。

「たぶん『ワンピース』のほうが、むしろ歌舞伎“らしさ”が、全面に出ていたので、歌舞伎じゃないところから来た僕にも“らしさ”が出しやすかった。例えばいいところで見得を切ったり、形で魅せるシーンもたくさんありましたから。今回は華やかな見せ場もたくさんあるけれど、細やかに気持ちを見せていく作品なので、他の共演者の歌舞伎の方たちとどうすりあわせていくのかも見どころになると思います」

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 歌舞伎以外の舞台や映画など、幅広いジャンルで活躍する平にとって、それぞれの違いを乗り越えることは楽しみの1つなのだろう。

「そうですね。歌舞伎=型……もそうなのですが、そればかりではない。もちろん型をおろそかにしていいのではありませんが、子どものころからずっと歌舞伎をやってきた方たちと同じように、1~2ヶ月の稽古で出来るはずがない。型にとらわれすぎることなく、ハートで演じるところに型をつけていく、という気持ちでやっています。今、テレビでも新劇的芝居でも、テンポを早く、セリフも早くしゃべるのが主流の中で、歌舞伎は逆にたっぷりやる。大きく演じる。でも自分の気持ちに嘘をついたり、誇張があってはいけない。大きくたっぷり演じながら、それをリアルにナチュラルに感じさせるのは、ハートだと思っています。演じている人物の気持ちをベースに、あまり型から外れない範囲で、いつも通りにつくっています」

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 昨年亡くなった父、平幹二朗は、歌舞伎を原作にした近松ものなどを得意にしていた。彼の演じた作品を、今、映像で見直したりもしているという。

「『ワンピース』の上演中は父も『王女メディア』に出ていて、見てもらえなかったんですよ。もともとあんまり感想を言う人じゃありませんでしたね。時々ぽろっと『あれは良かったね』なんて言うくらいで……。父は型の好きな人だったと思います。そこにハートがのっかってた。父の型を引き継ぐ、真似するつもりはないけれど、オヤジはどうやってたのか映像で見直しています。せっかく『男の花道』やるんだから、いろいろ聞こうと思ったのに」

 といいながら、すぐに「いや、でも、いたら本当に聞いたのかな?」と首をかしげる。
 父はすでに亡いので聞く術はないが、座長である猿之助には演技の助言を求めたりするのだろうか。

「猿之助さんはびっくりするくらい、全員のことをよくご覧になってますね。ダメ出しして、アドバイスもしてくれます。それでまた言われたとおりにするとお客さまから手が来る(※拍手が起こる)んですよ。そうすると『ほらね、来たでしょう』って。舞台の隅々までみんな見られていると思うから、すごくいい緊張感があります」

 とはいえ要求されることは厳しく、毎回新しい挑戦があるので、楽しいと同時に苦しみもある。

「今回はフラメンコを踊ることになりそうです(笑)。どこにそれがあるのかは、見てからのお楽しみに。アイディアだししているときなんか、本当にいろんな意見が出て、すごく面白いんですよ。でもそれを自分がやるのかと思うと『大丈夫か?』と。猿之助さんは試練を与えてくださる方、ですね(笑)」

 今回は博多座公演というのも、楽しみの1つ。

「博多は活気にあふれていてワクワクする街、華やかなイメージがあります。それにごはんが美味しい! 博多座にいらっしゃるお客さまは芝居に対する集中力がすごくて、じーっと見てくださる。すごくありがたいし、やりがいもひとしお強く感じます。この2月花形歌舞伎は『出来るんですか、こんなに……』というくらい、盛りだくさんな内容ですので、ぜひ昼公演も夜公演もお見逃しないよう、足を運んでいただけたらと思います」

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平岳大●ひら たけひろ
1974年7月27日生まれ、東京都出身。2002年に舞台『鹿鳴館』でデビュー後、映像・舞台などさまざまな分野で活躍。2016年3~4月 スーパー歌舞伎II 「ワンピース」のエース役として出演したのに引き続き、今回も座長猿之助のもとで、『男の花道』『雪之丞変化』に出演する。4月には、大竹しのぶ主演の『フェードル』にイポリット役で出演する。


博多座二月花形歌舞伎
2017年2月3日(金)〜26日(日
■昼の部(午前11時開演)
一、男の花道 二幕
二、艶姿澤瀉祭(はですがたおもだかまつり)
市川猿之助宙乗り相勤め申し候
■夜の部(午後4時開演)
雪之丞変化(ゆきのじょうへんげ) 三幕
市川猿之助早替り並びに宙乗り相勤め申し候

出演: 市川猿之助 市川門之助 市川男女蔵 市川笑也 市川猿弥 市川笑三郎
坂東巳之助 中村米吉 中村隼人 中村梅丸 市川弘太郎 市川寿猿 坂東竹三郎 平岳大

 


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