インタビュー & 特集
INTERVIEW!百鬼オペラ『羅生門』吉沢 亮さん Part1
イスラエルの演出・振付家、インバル・ピント&アブシャロム・ポラックによる新作『羅生門』が9月にBunkamuraシアターコクーンにて上演されます。2013年に日本初演されたオリジナルミュージカル『100万回生きたねこ』(2015年に再演)に続き、今回は芥川龍之介をモチーフにしたオリジナル作品。柄本 佑さん、満島ひかりさんと共に主要キャストに名を連ねる吉沢 亮さんに、本稽古に臨む前の心境をうかがいました。(取材・文/高橋彩子、撮影/本多晃、ヘアメイク/藤尾明日香、スタイリング/荒木大輔)
INTERVIEW & SPECIAL 2017 7/15 UPDATE
――芥川龍之介の小説『羅生門』『藪の中』『蜘蛛の糸』『鼻』と芥川自身の人生を題材にする、百鬼オペラ『羅生門』。まだ台本は上がっていないとのことですが、原作に対してはどうお感じですか?
面白いです、人間の真理を突いていて。しかもそれが、直接的に書いているわけではないのに、ちゃんと読み取れるようにできているのが素晴らしくて、巧いなあ、やっぱり天才なんだなあって思います。僕自身は小学生のころに読んだ記憶はないのですが、小学校の教科書にも載っているというのがわかる気がします。中でも、個人的に好きなのは『鼻』。コメディタッチというか、可愛らしい世界観で、でも奥が深くて。自分ではコンプレックスがあって悩んでいる部分でも、実はそれがあったほうがその人が魅力的に見えることってありますよね。
――今回、吉沢さんが演じるのは、柄本 佑さんと対峙する役どころだとか。
『藪の中』のパートでは、そうです。柄本さん演じる多襄丸(たじょうまる)に、満島ひかりさん演じる妻・真砂(まさご)を奪われる、武弘役です。気になるのは、黒澤(明)監督の映画『羅生門』にも描かれる多襄丸と武弘との戦いがどういう演出になるのかということ。普通にやるというより、コンテンポラリー・ダンスみたいなのものが思いっきり入りそうだなと思うので。
――インバル・ピントさんとアヴシャロム・ポラックさんはイスラエルのダンスカンパニーを率いる演出・振付家ですが、彼らの舞台は何かご覧になっていますか?
『100万回生きたねこ』の映像を観ました。最初の音楽でまず引き込まれたし、美術も衣裳もきれいで、そういう色々な要素が舞台全体の質を高めている印象でした。あの賑やかで楽しい世界が、今度は芥川龍之介とどう結びつくのか、まだ想像がつきませんし、コンテンポラリー・ダンスというものを今までやったことがないので、不安も大きいです。
――インバル・ピントさんには一度、会われたそうですね。
インバルさんが春に来日したとき、ダンサーの皆さんと一緒にワークショップを受けたんです。二人一組になり、体の一か所をくっつけて、そこだけは離れないようにしながらお互い自由に動く、という課題を出されたのですが、一か所動かせないだけで不自由にもなるし、普段使わない筋肉をいっぱい使うんです。楽しかったし、「もっとこういう動きをしたい!」という思いも出てきました。まだそれを表現するだけの身体能力が備わっていなかったので、ほとんど何もできずに終わってしまったんですけど。
――今もダンスのレッスンを受けていらっしゃると聞きました。
『羅生門』の振付助手をなさる皆川まゆむさんなど、コンテンポラリーが得意なダンサーの方に教えていただいています。そのレッスンがまた独特で、たとえば、しりとりをして「リス」と言われたらリスの動きをして、相手に「スイカ」と投げ、相手がスイカの形になって……というのをどんどん繋げて一つの踊りにしたものを、二人で覚えて踊るとか、そういう感じで。基本的なコンテンポラリーの動きみたいなものもあるにはあるけれど、それ以上に、発想の中から生まれるものが大事だから、どんどんイメージを広げられるようでないと太刀打ちできないんですよね。コンテンポラリー・ダンスには、想像力と、それを実現できる身体が必要になってくる。変わった動きが多いだけに、鍛えずにやり続けると身体を壊してしまいそうなので、今は柔軟やストレッチもかなり頑張っています。僕、もともと身体がめちゃめちゃ硬いんです。最初のころよりは柔らかくなりましたけど、でもまだまだ、相当硬くて。
――柄本 佑さんとの合同レッスンも経験されたようですが、どうでしたか?
柄本さんは発想が僕とはまったく違うんです。僕一人だと、けっこうきっちりやっちゃうし、自分の中でなんとなく「こんな感じの動き」というのをパターン化してしまうんですけど、柄本さんはいきなり変顔を入れてきたりする。全然違うものを持っている人と踊るととても面白いし、自分もこれを取り入れたい!と思う瞬間がたくさんありました。ただ、柄本さんも身体が硬いとおっしゃっていたから仲間だと思っていたのに、実際には僕よりずっと柔らかかったのには焦りました(笑)。
――でも、硬い身体ならではの面白さみたいなものも、ありそうですしね。
ありそうですよね。掘り起こせば色々なところから色々なものが出てきそうで楽しみです。レッスンでも、発想段階では他愛もないようなことも、やり抜いて踊りにするとすごくカッコよくなったりして。人間にはこんな動きができるんだ!と新鮮です。僕は普段、役者としてセリフや声のトーンで演じることが多いけれど、これまで知らなかった身体の振り幅や細かい動きに出会って、この作品を乗り切ることができたら、役者として進化できる気がします。
※⇒インタビューPart2へ続きます。
*衣裳クレジット=パンツ17,000円/JieDa(KIKUNOBU TOKYO=03-6455-0535)、その他スタイリスト私物。
吉沢 亮(よしざわ・りょう)
1994年生まれ、東京都出身。2009年、アミューズ全国オーディションで受賞し、芸能活動を開始。映画・ドラマ『仮面ライダーフォーゼ』などを経て、13年『ぶっせん』でドラマ・舞台初主演。主な出演作に、ドラマ『水球ヤンキース』『地獄先生ぬ~べ~』『オトナ女子』、映画『アオハライド』『さらばあぶない刑事』『オオカミ少女と黒王子』、舞台『ライ王のテラス』(16年/宮本亜門演出)ほか。2017年は映画『トモダチゲーム 劇場版』(主演)、『銀魂』が公開。主演映画『トモダチゲーム 劇場版 FINAL』(9月2日)、『斉木楠雄のψ難』(10月21日)ほか多数の公開を控えている。2018年公開の映画『リバーズ・エッジ』(行定 勲監督)、主演映画『あのコの、トリコ。』に出演することも発表されている。
百鬼オペラ
『羅生門』
[東京公演]2017年9月8日(金)~25日(月)Bunkamuraシアターコクーン
※兵庫公演、静岡公演、名古屋公演あり
原作:芥川龍之介
脚本:長田育恵
作曲・音楽監督:阿部海太郎
作曲・編曲:青葉市子/中村大史
演出・振付・美術・衣裳:インバル・ピント&アブシャロム・ポラック
出演:柄本 佑、満島ひかり、吉沢 亮、田口浩正、小松和重、銀粉蝶
江戸川萬時、川合ロン、木原浩太、大宮大奨
皆川まゆむ、鈴木美奈子、西山友貴、引間文佳
ミュージシャン:青葉市子、中村大史、権頭真由、木村仁哉、BUN Imai、角銅真実
※詳細はhttp://operashomon.com/をご覧ください。