インタビュー & 特集

『PHOTOGRAPH 51』矢崎広さん「ロザリンドのひたむきさやまっすぐさには、学ぶことがとても多いです」

映画『めぐりあう時間たち』で2003年にアカデミー賞を受賞したニコール・キッドマンが、2015年にイギリス・ウェストエンドで主演し、大好評を博した『PHOTOGRAPH 51』。DNAの二重螺旋構造を写真に収めることに成功した女性研究者ロザリンド・フランクリンの物語が、2018年4月に上演されます。ロザリンド役・板谷由夏さんの下、個性的な男性キャスト5名が集結! そのひとり、20代のイギリス人科学者レイ・ゴスリングを演じる矢崎広さんに、この作品に臨む気持ちを聞きました。(文/金井まゆみ、撮影/笹井タカマサ)

INTERVIEW & SPECIAL 2018 1/13 UPDATE

DSC_0804——今回の『PHOTOGRAPH 51』という作品への出演が決まって、まずどんな気持ちを抱きました?

 ロンドンでニコール・キッドマンが主演して大好評だった作品、しかも少人数でやる作品だと聞いて、「おもしろそうだな」と興味がわきました。もともと、少人数のキャストで創るお芝居って好きなんですよ。その後いろいろ資料をいただいて内容を知りましたが、女性が活躍するのが簡単じゃなかった時代に科学者として研究に打ち込んだロザリンドのひたむきさやまっすぐさには、自分がこれからも役者をやっていく上で学ぶことがとても多いんじゃないか。そう感じましたね。

——ロザリンドを取り巻く5人の男性研究者の中で、矢崎さんが演じるのはレイ・ゴスリング。20代のイギリス人科学者で、親しみやすくて少し不器用、というパーソナリティーの持ち主だそうですね。彼について、矢崎さんが現在抱いているイメージはどのようなものでしょうか。

 科学者だから聡明というか頭のいい人であることはもちろんですが、それ以上に、冗談好きで上司に変な呼び名をつけてみたりする、お茶目な部分があるんです。キングスカレッジという研究所の中でも、みんなにかわいがられるようなキャラクターなのかなと思いますね。僕自身、レイのようにカンパニーの中で愛されるキャラクターでいられたらいいな、と思っているんですけど。

——キャストは板谷さんと矢崎さんの他に、神尾佑さん、橋本淳さん、宮崎秋人さん、中村亀鶴さん、というメンバー。橋本さん、宮崎さんとは、以前共演していますね。

 (宮崎)秋人とは、なんだかんだで結構久しぶり(ミュージカル『薄桜鬼』以来)ですね。その頃は“後輩”っていう感じでしたけど、最近、「すごく大人になったな」と思います。いろいろなところで活躍しているし、今の宮崎秋人と共演するのはすごく楽しみです。嘘をつかないというか、がむしゃらなところが人としても役者としても「いいな」と思っていますから。
 あっちゃん(橋本)とは共演もしていますが、たまに飲みの席で会ったり、僕が彼の出ている舞台を観に行ったり、彼も僕が出ている舞台を観に来てくれたり。彼は僕が「出たい!」と思うような舞台に出ているし、舞台の上での自然なたたずまいだとか、僕が持っていないものをたくさん持っている。大好きな役者さんだし、僕があっちゃんを勝手に先輩視して甘えている部分があります。この作品でまた共演できて、すごくうれしいですね。
 板谷さん、神尾さん、亀鶴さんは「初めまして」ですけど、素敵な先輩方ですよね。板谷さんはドラマで拝見しているし、神尾さんは舞台の『飛龍伝』を観てすっごく気になった役者さんです。亀鶴さんは歌舞伎の世界の方ですけど、そういう方とストレートの翻訳劇でご一緒させていただけること自体がおもしろそう。みなさんには、学ぶことしかないな、と思っています。

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——この作品の登場人物は、全員が科学者。専門用語なども含めて、観客にとっても、たぶんキャストの皆さんにとっても、あまりなじみのない分野ではないかと思います。

 専門用語もたくさん出てくるでしょうし、難しいセリフもありそうですね。何より、科学者って何かを超越している人じゃないかと思うんですよ。だって、十字の形をしている写真を見て「DNAは螺旋状かもしれない」なんて普通は思わないじゃないですか。そこに気づけるわけですから。しかも全員が科学者ですし。これは大変ですね。でもまだ、入門書を読んでどうにかなるレベルなのかさえわからないですけど……。少なくとも、DNAについては事前に勉強しておこうと思います。

——俳優さんは出演される作品によって、いろいろなジャンルのことにふれる機会があると思います。その都度勉強するのも結構大変じゃないかと。

 役づくり、つまり作品のためですから、僕は苦にはならないですね。でもその作品に入っている間は当たり前のようにその分野にふれていますけど、千秋楽を過ぎた頃に「これはおもしろいかもしれない」なんて、もっと追求したくなっちゃうことも(笑)。いろいろなジャンルにふれて挑戦させていただく機会が多いので、結果的に多趣味になる役者は多いような気がします。

——この作品の演出を担当するのは『サンディ・イン・ザ・パーク・ウィズ・ジョージ』 を現在ブロードウェイで上演中のサラナ・ラパインさん。矢崎さんはトム・サザーランド(2015年『タイタニック』)など海外の演出家とご一緒された経験も多いですね。

 言葉の問題はありますけど、「Yes」と「No」さえあれば結構伝わります(笑)。トムとも、「俺はこうやって演じたいんだ」ってジェスチャーしたら(トムが)「No」。「じゃあこれ!」「No」、「次、これ!」「No」ってどんどん出していくと「OK、OK」。そんな具合で芝居がどんどん創られて、同時にカンパニーもどんどん仲よくなっていって、という感じでした。だから、海外の演出家さんだからといって特にどう、ということはないですね。

——話は変わって、昨年矢崎さんが出演された『ジャージー・ボーイズ』が第24回読売演劇大賞最優秀作品賞、『宮本武蔵(完全版)』が同優秀作品賞を受賞されたことをはじめ、以前にも増して作品も役どころも充実しているように感じられるのですが。

 あの2作品は、とても評判がよくて。楽しみながら創ったものが評価されるのは本当にうれしいですし、自分としても賞に見合った力をつけていきたいと思います。仲間に力を貸してもらいながら、ひとつひとつの作品を全力でおもしろくしていきたい。前以上に意欲も出てきたし、さらにもう一段階成長しなくちゃいけないと思っている自分がいます。

——そういう意味でも、『PHOTOGRAPH 51』はとても楽しみです。

 この作品から、レイという役から、役者として学ぶことはすごく多いと思います。レイはもちろん、“周りのみんなから見たロザリンド”という視点が描かれることになるのではないかと。彼女から何かを感じとる男性たちの姿を観て、お客様自身も何かを感じていただければ。6人のチームワークを大事にして、素敵な作品にしていきたいと思います。

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【作品情報】
『PHOTOGRAPH 51』
作:アナ・ジーグラ
演出:サラナ・ラパイン
出演:板谷由夏、神尾佑、矢崎広、橋本淳、宮崎秋人、中村亀鶴
東京公演:2018年4月6日〜22日 東京芸術劇場 シアターウエスト
大阪公演:2018年4月25日〜26日 梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ

 


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