インタビュー & 特集
「この物語を冒険するかのごとく取り組んでいます」 矢崎 広さん×柳下 大さん×小川ゲンさん×佐野 岳さん
『Shakespeare’s R&J』~シェイクスピアのロミオとジュリエット~が1月19日、シアタートラムにて幕を開けた。『ロミオとジュリエット』が禁断の書とされている厳格なカソリックの高校生が、この本と出会い、寄宿舎を抜け出して4人で遊びながら演じていくうちに…。2003 年にロンドンでジョー・カラルコ演出によって初演され話題を呼び、ヨーロッパやアメリカで繰り返し上演されてきた話題作である。稽古真っ最中の昨年12月末に、出演する4人に話を聞いた。(撮影/笹井タカマサ 文/臼井祥子)
INTERVIEW & SPECIAL 2018 1/19 UPDATE
●台本を読んだ時の感想を教えてください。
矢崎 最初に読んだ時は、難しい脚本だなと思いました。『ロミオとジュリエット』と言いながら、「学生」という言葉がたくさん出てくるし、読めば読むほど不思議な魅力に取り憑かれる感じがしました。
柳下 僕も難しかったです。読むたびに解釈が変わってくるし、実際いろんな解釈ができる脚本なんだろうと思います。だからその時の座組によってまったく色が違う作品に仕上がるような戯曲なんだろうなと。
小川 僕は難しいなと思うと同時に面白いなとも思いました。「学生」が『ロミオとジュリエット』を演じはじめて、台本を読んでいると、気がつけば『ロミオとジュリエット』の世界に入っている。どこからどういう状態でこれを演じるんだろうと思っていたんですけど、その境い目は僕たち次第でどうにでもなるんですよね。そこが面白いなと。
佐野 普通の『ロミオとジュリエット』をやってはいけないなと思いました。男4人でやるってことに色々な意味で面白さを感じるので、そこを僕たちが自分たちで楽しんで作っていけたらと思っています。
●稽古を重ねてきて、手応えは?
矢崎 やっと固まったと思ったらポロポロッと崩れてしまったりするので、まだまだですね。というのも、大くん(柳下)も言っていましたけど、この作品はいかようにもできる側面があるので、僕たち4人と(演出の)田中(麻衣子)さん、みんなの了解や「これだね」っていうのがないといけない。自分が一人で好き放題やろうと思えばいくらでもできますが、それだけじゃだめなので。
小川 稽古をしていると毎回新しい発見があるんですよ。でも発見があると、あれ、じゃあ今まで考えていたのは違うのかなってなるので。
矢崎 そうなんですよね。今はまだ試行錯誤しています。
●ご自身の演じられる「学生」たちに、共感するところはありますか?
佐野 いけないことをする時のワクワク感、高揚感は、自分にも覚えのある感覚で、そこは僕は入り込みやすかったです。
矢崎 彼らは純粋だし、寄宿学校で抑圧された毎日の中で、自分をぶつけるものを無意識に探してると思うんですよ。若いころの僕は、夢や憧れや理想と、それに対しての現実、自分の欲望といったものとの境い目がよくわかってなかったのかなと思うんですが、一時期の欲望ですぐに要らなくなってしまうものを欲しがったりしていました。彼らのがむしゃらな部分は、そういう昔の自分とかぶるかもしれないです。
柳下 僕は工業高校で、ほぼ男子校だったので、女の子の話で盛り上がったり、ちゃかしたりする場面はわかる気がします。楽しいかけがえのない時間を経験してるんだなって。
佐野 「学生」たちは、演じることによって普段出せない感情や味わったことのない感情に出会ったりしているんですが、僕も実生活で出せないものをお芝居で出せているなと思うので、その辺は、同じ感覚なのかなと思います。
●稽古を拝見して、台本の印象よりずっと激しいなと感じました。皆さん普段取材でお目にかかる時はとても温厚な方だなと思うのですが、この激しさはどこから引き出しているんでしょうか。
柳下 僕は本質ですよ。
3人 (笑)。
柳下 誰でも仕事モードになることはあると思うんですけど、そういう感じで取材の時は取材モードの柳下大が出てくるんです。常に温厚なわけじゃなくて、セリフがなかなか入らなくて、イライラして部屋で一人でベッドを蹴飛ばしたりすることもありますもん。今回も夜中に10回くらいやりました(笑)。どこから引き出してます?(矢崎に)
矢崎 僕も自分の持っているものですね。僕は大くんみたいに器用じゃないから、こういう場所で、取材を受けている時の自分が出てきたりはしないですし、なるべくなるべく役に自分を近づけていきたいから、自分が知らないものは資料を読んだり先輩方に教わったり映像を見たりして広げていこうとはしていますが、それでも舞台上にいる自分は、自分の中にある、持っているものなんだと思います。山形からリュック背負って出てきて、初めて一人暮らしをしてゴミの捨て方がわからずに、大家さんにゴミを見られて返されて、「ごめんなさい」って持ち帰った後、「うわーっ」って部屋に撒き散らした、10代の時の経験とか。すんごい恥ずかしかったんですよね。
柳下 恥ずかしいものが入っていたんですね?(笑)
矢崎 10代でしたからね(笑)。そういういろんな経験が引き出しになっている気がします。
佐野 自分にないものは出せないですよね。いい役者さんは引き出しが多くて、多ければ多いほどいろんな場面に対応できると思うんです。まだまだ自分は少ないので、これから色々なものを見て経験していきたいと思います。舞台にはいろいろ出させてもらっていますが、こういった大きな劇場でやる作品に挑戦できる機会はなかなかないので、今回はそれがうれしいですね。
小川 皆さんが言っていたように、僕も自分の中にあるものしか出せないです。僕は普段おとなしくて、あまり怒らないほうなんですけど、怒鳴ったりする芝居は嘘じゃなくて、自分の中にある感情なんですよね。僕も、部屋で一人でベッドを叩いたりすることはあるので。
●皆さん、共演は今回がほぼ初めてだそうですが。
矢崎 そうなんですよ。大くんとは、テニミュ(ミュージカル『テニスの王子様』)やドラマ『赤い糸』でご一緒しているんですが、絡みはなく、岳くん(佐野)とは、共通の友人はたくさんいるんですけど、これまで会ったことがなく、ゲンくん(小川)とも初めましてです。
柳下 同じ事務所の瀬戸(康史)が出ていた舞台に出演されていたので、僕はゲンさんの舞台は拝見してました。その時ゲンさんは子どもの役をやってたので、僕はてっきり年下だと思って、瀬戸に「ゲンくんっていくつなの?」って聞いたら「ゲンさん? 年上だよ」と言われまして(笑)。聞いといてよかったです。
小川 (笑)。僕は全員初めましてなんですが、もちろんお名前は知っていました。この舞台の前に矢崎さんの朗読劇を観させていただいたんですが、自分と同い年とは思えなくて、「大人だなあ」って。
矢崎 あの時はヒゲを生やしていたからね(笑)。
柳下 でもこのメンツは不思議だよね。共通の知り合いはいっぱいいるのに、共演経験がなくて。
矢崎 うん。でもみんな真面目で、すごくいい空気だなって思ってる。
●ありがとうございます。最後に一言ずつ、意気込みをお願いします。
小川 『ロミオとジュリエット』という作品を通して、僕たち4人の学生たちの関係性を見せていけたらと思っています。
佐野 何回観てもわからない、観た回数だけ新しい解釈ができるような作品になると思うので、ぜひ全公演観ていただきたいです。
矢崎 全公演! 推すなぁ(笑)。
佐野 何回観ても新しい発見がありますから(笑)。
柳下 学生たちがシェイクスピアの『ロミオとジュリエット』を演じるという、普通と違った形の『ロミジュリ』なので、もちろん『ロミオとジュリエット』を知ってる方はより楽しめると思うんですけど、知らない方にも学生たちの青春ものとして観られる作品だと思います。だから知らない方にも観ていただきたいですね。
矢崎 難しい作品ではあるんですが、僕たち4人でぶつかりながら答えを探して、この物語を冒険するかのごとく取り組んでいます。ぜひお客様にも劇場で、僕たちと同じような気持ちで、この物語の核を一緒に探しながら楽しんでもらいたいです。
初日直前に行われたゲネプロの写真が届きましたので、合わせてご紹介します。
公演は2月4日(日)まで、シアタートラムにて。詳細は下記をご覧ください。
[公演データ]
『Shakespeare’s R&J』~シェイクスピアのロミオとジュリエット~
1月19日(金)〜2月4日(日) シアタートラム
原作:W・シェイクスピア 脚色:ジョー・カラルコ
翻訳:松岡和子 演出:田中麻衣子
出演:矢崎 広 柳下 大 小川ゲン 佐野 岳
お問い合わせ:トライストーン・エンタテイメント ●03-3422-7520(平日12時~17時)
公式ウェブサイト:http://tristone.co.jp/RJ