インタビュー & 特集

INTERVIEW! 舞台『銀河英雄伝説』田中芳樹先生 part1

2011年1月より始まった舞台『銀河英雄伝説』。4月14日にいよいよ「第二章自由惑星同盟篇」が幕を開けます。上演に先立つ4月上旬、原作者の田中芳樹先生にお話をうかがいました。

(取材・文/臼井祥子)

INTERVIEW & SPECIAL 2012 4/14 UPDATE

『銀河英雄伝説』は1980年代に刊行されたSF小説で、数千年後の未来を舞台に、宇宙戦争や政権闘争、人々の日常ドラマまでを描いた壮大なスペースオペラです。2011年に舞台化され、「第一章 銀河帝国篇」と外伝2作品が上演されました。その続編として4月14日より、銀河帝国と戦う自由惑星同盟サイドを描く「第二章 自由惑星同盟篇」が始まります。

●今年で創刊30周年を迎える『銀河英雄伝説』ですが、舞台化のお話が来たときはどう思われましたか。

失礼ながら物好きな人もいるものだなあと思いました(笑)。アニメになった時もそうだったんですけども、想像もしていなかったことが起こるものだなあと。小学校の先生が、卒業して数十年経った教え子が国民栄誉賞を受賞したと聞かされたような、不思議な気持ちでしたね。

●その段階で、どんなふうに上演されるか具体的なイメージは抱かれました?

舞台化の話は以前にも何度かあって「艦隊戦どうするんだろう」とかぼんやりと思っていましたが、実現するとは思っていなかったので。今回本当にやるらしいとわかって狼狽しましたね。どんな作品になるか想像できませんでしたが、ただ熱心に言っていただいて。「商売になるかわからんぞ」って原作者は思ったんですけども(笑)。おそるおそる出演者の方にお会いすると、皆さんとても熱意を持ってやってくださっているので感激しました。

●先生は普段、舞台はご覧になるほうですか?

そんなに観ないです。ロンドンに行った時に『オペラ座の怪人』を観て、「ミュージカルっていうものは、けれん味を100%出し尽くした表現形態のジャンルなんだなあ」と感じたことがあります。その後、日本でもドイツでも観たのですが、同じ作品でもお国柄が出るのですよね。ドイツで観た時は怪人がいかにもドイツ語で政治演説をやっているぞという感じがしました。「我々は、断固として戦わねばならぬ!」とか。もちろんそんなこと言っていませんけどね(笑)。

●『銀英伝』の舞台はご覧になっていかがでしたか。

そうか。こう来るか。艦隊戦はこういうふうに表現するのか、と。

あと舞台の面白いところは、映像と違って、舞台の端っこに立っている、今スポットライトの当たっていない俳優さんがどうしているのかを観ることができることですね。いろんな楽しみ方があるもんだなあと思いました。

●観る人によって受けとめ方も違ってくるのですね。

小説もそうなんですよ。実は小説は本を出した段階では完成していないんですね。読者さんに読んでいただいて、それぞれ受けとめていただいて、例えば十万人の読者さんがいてくださったら、十万種類のパラレルワールドができるんです。そういった意味では舞台も小説も同じだと思うのですが、やっぱり視覚に訴えてくるだけ、違う味わいがあるなあと思いました。

イベントでファンの質問に答える田中先生

●クリエイターさんにとって、意図したものと違う見方で受けとられたり、それをさらに、ほかのクリエイターの方が公式に別の形で表現することは、どんなことでしょうか。

だいたいにおいて私の感じていることとそんなに差はなく公演していただいたように思いますので。ただ、なるほどこの役者さんはこういうふうにこの役を解釈していらっしゃるのかなと、面白く感じるところはありました。

とにかくラインハルト役の松坂桃李さんはひたすらかっこよかったですね。それから「オーベルシュタイン篇」はオリジナルストーリーでしたから、裏にある部分をこう解釈してこう演じていらっしゃるのかと。原作者なのに、時々「そうだったのか」と感心して観ていました。それと「オーベルシュタイン篇」では「犬をどうするんだろう」と思っていたんですけど、こういうやり方があったのかと驚きましたね。

●オーベルシュタインの犬を影絵で表現していたんですよね。お話はオリジナルストーリーでしたが、本当に原作にありそうな話でしたね。

充分に作品世界の共通項を共有していただけたんだなと思います。

以前栗本薫さんが『グインサーガ』を舞台になさった時は、栗本さんが演出も脚本も劇中歌の作詞もなさったし、出演者もご自分で選ばれた。なさらなかったのは作曲だけなんです。そこまで徹底して原作者の作品の延長線上におくか、それができなかったら信用して全面的におまかせするか、どっちかですね。

僕にはとてもそんなエネルギーがないですから、全面的に信用しておまかせして、それでいい結果が出たと思います。中途半端に口を出すと両方に不満が残っていいことないんですよ。

●田中先生は、純粋に観客として舞台を楽しまれたのですね。

そうですね。楽しめました。でも時々カッコつけた台詞が出てくると恥ずかしくなってちょっと下を向いたりしてしまうんですが(笑)。文章を書いている時は、ここはシェイクスピアふうに行こうかなとか、そんなふうに思って書いているんですけど、それを役者さんに朗々と、よく通るいい声で言われると、「ああ、カッコつけたかなあ」と恥ずかしくなるんですよ。

(part2に続く)

 

[プロフィール]

田中芳樹

たなか・よしき
1978年『緑の草原に……』で幻影城新人賞を受賞してデビュー。1982年より『銀河英雄伝説』を発表、アニメ化もされる人気作品になり、88年には同作で星雲賞(長篇部門)を受賞。2006年には『ラインの虜囚』でうつのみやこども賞を受賞する。そのほかの主な作品に『アルスラーン戦記』『創竜伝』『薬師寺涼子の怪奇事件簿』シリーズなど。

 

[公演情報]

『銀河英雄伝説』第二章 自由惑星同盟篇

東京国際フォーラム ホールC 4月14日(土)〜22日(日)
NHK大阪ホール 4月28日(土)〜29日(日・祝)
原作:田中芳樹 「銀河英雄伝説」シリーズ(創元SF文庫刊)
脚本:村上桃子 演出:西田大輔 音楽:三枝成彰
総合監修:田原正利 総合プロデュース:多賀英典
出演:河村隆一、馬渕英俚可、野久保直樹、大澄賢也、天宮 良、中川晃教、はねゆり、井田國彦、金澤博、荒木健太朗(Studio Life)、伊藤哲哉、長澤奈央、桑代貴明、中村誠治郎、大山真志、仲原裕之(Studio Life) 、川隅美慎、松井 誠、西岡徳馬 他
問い合わせ:
サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(全日10:00-19:00)
キョードーインフォメーション 06-7732-8888
http://gineiden.jp/


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