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SPECIAL! スタジオライフ『続・11人いる! 東の地平 西の永遠』開幕!
萩尾望都先生原作の傑作SF『11人いる!』。1月に上演された本編に続いて、その続編にあたる『続・11人いる! 東の地平 西の永遠』をスタジオライフが舞台化。壮大な宇宙空間を舞台に、萩尾作品らしい抒情性を交えながら描くステージをレポート!
(撮影・文/大原薫)
INTERVIEW & SPECIAL 2013 3/8 UPDATE
「未来へ!」
この希望に満ちた台詞で終わったのが『11人いる!』。宇宙船白号での宇宙大学入学試験会場で、予想外のアクシデントに立ち向かい奮闘した受験生たち。彼らが歩き出した未来に何が待ち受けているのかを描くのが『続・11人いる! 東の地平 西の永遠』だ。
宇宙大学にただ一人入学せず、アリトスカ・レ星を統治する国王となったマヤ王バセスカ(王様)。王様からの招待を受けて、タダとフロルはアリトスカ・レに向かうが国の情勢は貧しいものだった。彼らの到着間もなくクーデターが起こり、王様はとらえられる。さらには、隣の星アリトスカ・ラとのいさかいが起きる。アリトスカ・ラは共に受験したうちの一人、ソルダム四世ドリカス(フォース)の母国だった……。
宇宙船白号の中という限られた空間の密室劇だった『11人いる!』に対し、『続・11人いる!』は大きく広がる宇宙空間を移動しながら描かれる壮大なスケールの舞台。大がかりな装置などに頼らず、役者の肉体を使って星々のイメージを生み出す手法によって、小気味よいテンポでストーリーは進んでいく。見る者の想像力をかりたてる舞台だ。
未来への希望を持って歩き出した若者たちが星同士の争いに巻き込まれていく姿には痛みがあるが、現実に直面しながらも懸命に生きる姿は清々しい。特に受験生たちは前回の公演から続演しているので、彼らの人間的な成長がはっきりと見られるのが連続公演ならではの見どころだ。
ゲネプロで拝見したのは、ダブルキャストのうち、Jupiterチーム。曽世海司さんの王様は舞台に登場した瞬間から王としての存在感を示す。素早く進む舞台の中で王様の心情と成長していく様を丁寧に描き出していって、作品のドラマ性を大きく広げた。王様と母国との間で板挟みになり葛藤するフォースは新人・藤森陽太さんが演じる。初の大役となるが舞台映えする容姿を武器に、まっすぐに演じている様子は好感度大。タダの山本芳樹さんとフロルの及川健さんは非常に良いコンビネーションを見せる。
前作では出てこなかった「大人」の存在も、『続』の見どころの一つ。ゾンブル長官の笠原浩夫さんはスケールが大きく、バパ長官の倉本徹さんが確かな演技で舞台を引き締める。アマン伯の牧島進一さんは原作とは違うビジュアルイメージだが、国を思う気持ちにあふれる。
フォースの妹チュチュは関戸博一さん。ヒロイン的な役どころでみずみずしい感性の少女を好演。神に仕える女性オナを青木隆敏さんが神秘的に演じた。
また、ダブルキャストのもう一つ、Marsチームではタダを演じる松本慎也さんがJupiterチームでは珍しい悪役に挑戦。また、Marsでフォースを演じる仲原裕之さんがJupiterでは火消しのレッドを演じるなど、本役でない役でも予想外の活躍を見せるのが、スタジオライフのダブルキャスト制の醍醐味だ。
『トーマの心臓』『訪問者』『メッシュ』『マージナル』と萩尾望都先生の作品を上演し続けているスタジオライフ。宇宙物のSFではあってもそこに生きる人間の姿や心情がしっかりと描かれているところが萩尾作品の魅力であり、スタジオライフの、そして脚本・演出の倉田淳さんの世界の魅力だろう。萩尾先生も「倉田さんが作る世界観に惹かれる」とインタビューで答えていたが、萩尾作品の真髄とスタジオライフの作る世界が見事に溶け合っているのが、この『続・11人いる!』なのだ。
最後に一つ、コアな話を。ゾンブル長官がタダとフロルに偶然宇宙ステーションで会うシーンで、ゾンブル長官がフロルの巻き毛に触れるのは原作にはない設定。これは『トーマの心臓』のギーゼン駅でサイフリートがエーリクと会うシーンのオマージュかと思ったが、違うだろうか? 随所に倉田さんの萩尾作品に対する愛情を感じられるところも、また見どころの一つだ。
★なお、公演に先立ちうかがった、萩尾望都先生のインタビューは、以下からお読みいただけます。
INTERVIEW! 『11人いる!』『続・11人いる!—東の地平 西の永遠—』 萩尾望都さん
[公演情報]
『続・11人いる!—東の地平 西の永遠—』
2013年2月25日〜3月17日 紀伊國屋ホール
原作:萩尾望都 『11人いる!』(小学館文庫刊)
脚本・演出:倉田淳
出演:松本慎也 山本芳樹 内藤大希 及川健 堀川剛史 曽世海司 仲原裕之 藤森陽太/笠原浩夫 他
※名古屋、かめあり、大阪公演あり
公式サイト:http://www.studio-life.com/stage/11nin_2013/
©萩尾望都/小学館