インタビュー & 特集
スタジオライフの音楽劇『カリオストロ伯爵夫人』公演レポ
アルセーヌ・ルパンの最初の冒険と恋を描いた『アルセーヌ・ルパン カリオストロ伯爵夫人』をスタジオライフが音楽劇として舞台化。『翼を下さい』の村井邦彦さんが全編にわたって作曲を担当していることでも注目される舞台が、7月4日に開幕した。生バンドによる演奏と役者の生歌が、さらにスタジオライフの世界観を押し広げている。
(写真/Yukari Watanabe・文/大原 薫)
INTERVIEW & SPECIAL 2013 7/19 UPDATE
開幕するとまず、ヴァイオリン・パーカッション・ピアノの生演奏が音楽を華麗に奏でる。村井邦彦さんの音楽が全編を通して演奏されるが、場面によって様々な印象を紡いでいるのが素晴らしい。冒険活劇にふさわしい軽やかなミュージカル調の曲もあれば、スタジオライフらしい心情に迫る音楽も……と多彩な表現で、まず観客の心を惹きつける。
そして、宇野亞喜良さんによる舞台美術。アラベスク調の豪華な装置が客席上部まで張り出して飾ってあるのがまず目を引く。本編の舞台では宇野さんのイラストが映像として映し出される。たとえばルパンの疾走シーンではそれに合わせて背景が動いたり、カリオストロの根城である船内のイラストと実際の役者の姿が入り混じって見える「だまし絵」ふうの効果もあったり、あるいは絵の中から突然役者が登場したり。ルパンの冒険譚にぴったりの不思議な効果が物語を盛り立てる。
公演はToi、Et、Moiの3チームによるトリプルキャストでの上演。松本慎也さんのラウール・ダンドレジー(アルセーヌ・ルパンの若いときの名前)、関戸博一さんのカリオストロ伯爵夫人のToiチームの模様をレポートしよう。
人間の心に潜む清濁の両面に光を当てているこの作品。「濁」の象徴である、カリオストロ伯爵夫人と、「清」の象徴であるクラリスの二人に同時に惹かれ、揺れ動く気持ちを持つラウール。この心理のせめぎ合いが大きなドラマを生み出すのが今回の舞台だ。
二人の女性に同時に惹かれる……というと優柔不断な人? と思わせるかもしれないが、松本さんは彼の心の機微をしっかりと描いて、ラウールを生きた人物像にしている。何よりも20歳のルパンとして活発でエネルギーに満ちた姿を見せるところが、冒険譚の主人公としては相応しい。
そして、謎めいた美しさを見せる関戸博一さんのカリオストロ伯爵夫人。ヘアメイクも宇野亞喜良さんのスタッフが直々に行っているとあって、舞台写真でもおわかりのとおり、絶世の美女に変身! 堂々たる「悪女」ぶりだが、その中に潜む純真さも垣間見せる。同期の松本さんと初めての恋人役を組んで、息の合ったところを見せた。
清純なクラリス役を演じたのは宇佐見輝さん。今回が大抜擢の新人とあって、初日はややぎこちなさが見られたものの、透明感のある演技に期待が集まる。
秘宝を巡ってカリオストロ伯爵夫人と争うボーマニャンの倉本徹さんが確かな人物像を造形。特に2幕冒頭のラウールとのシーンは台詞の応酬で、手に汗握るような見事な心理戦を繰り広げて、ドラマチックに芝居を盛り上げる。ブリジット・ルースランの鈴木智久さんは艶やかな女優をインパクト強く演じ、カリオストロの手下レオナール役の船戸慎士さんの暗さを秘めた迫力も忘れ難い。
そして、物語の水先案内人のムッシュ・エル役は客演のtekkanさん。今回の公演を終えた後はNY国際フリンジフェスティバル招聘公演『Count Down My Life』でニューヨークの舞台に立つという実力者が、確かな歌声を聞かせた。ストーリーテラーと見せていて実は……? という謎解きにもご注目を!
Moiチームは岩崎大さんのラウール、青木隆敏さんのカリオストロ伯爵夫人。そして、Etチームのラウール役は公演当日に配役が発表されるとのことで、キャスティングもミステリアスなものになっている。
スタジオライフの音楽劇『アルセーヌ・ルパン カリオストロ伯爵夫人』は7月21日まで、シアターサンモールにて上演されます。
[公演情報]
スタジオライフ『アルセーヌ・ルパン カリオストロ伯爵夫人』
7月4日~21日 シアターサンモール
原作:モーリス・ルブラン
脚本・演出:倉田淳
作曲:村井邦彦
美術:宇野亞喜良
出演: 松本慎也/岩﨑大/関戸博一/青木隆敏/宇佐見輝/倉本徹/仲原裕之/船戸慎士/tekkan(客演)/牧島進一/緒方和也/神野明人/鈴木智久/松村泰一郎/藤原啓児 他
問い合わせ先:スタジオライフ 03-5929-7039 (平日12時~18時)
http://www.studio-life.com/