インタビュー & 特集

INTERVIEW! 木戸邑弥さん 『続!! 押忍!! ふんどし部!』

熱血学園ミュージカル cube neXt 『続!! 押忍!! ふんどし部!』が現在、渋谷・CBGKシブゲキ!!にて上演中。主演の木戸邑弥さんに、今までの舞台出演作品を振り返りと、1年の怪我療養からの復帰作となる出演中の作品について、お話をうかがいました。
(撮影/熊谷仁男 舞台写真撮影/櫻井隆幸 取材・文/臼井祥子)

INTERVIEW & SPECIAL 2013 9/13 UPDATE

今は廃れてしまった伝統の「白ふん流し」を復活させようと奮闘する高校生たちの熱い友情の物語『押忍!!ふんどし部!』(以下おすふん)。2010年に初演、以後、再演を繰り返し、今年4月には連続ドラマにもなった学園コメディの新作が、前回よりパワーアップしていると評判です。

主演は、おすふんの初演、再演で主役を演じた木戸邑弥さん。昨年、公演中のアクシデントで一年間休業していた木戸さんにとって、復帰作となる舞台。その意気込みや、これまでの舞台について、お話をうかがいました。

●これまでの舞台について教えてください。木戸さんの初舞台はミュージカル『テニスの王子様』(以下テニミュ)ですね。

はい。高校生の時でした。僕は小学生の時にダンスを習っていたので、一年に一度発表会があって、2000人くらいの観客の前で踊っていたんです。だから人前で何かをすることには慣れていたし、いつか自分がプロとして舞台に立てたら、とも思っていました。でも、出演が決まって、『テニミュ』を初めて観た時には圧倒されました。こんな大きな劇場で後ろのお客さんまで届けるのは難しそうだな、勉強しないといけないことがたくさんあるなと思って。

『テニミュ』に出ていたのは2年間くらい。独特なカンパニーですよね。男の子しかいないし、チーム(学校)ごとに集まって、一丸となって目標に向かってひた走る。支え合って話し合って、部活みたいな感じでした。キャストだけじゃなく、スタッフさんも含めてみんなで家族というか、寮にいるようなそういう一体感、団結力がありました。

●その次に出た舞台が『おすふん』の初演。初主演は緊張されましたか?

まさか河原雅彦さん演出の舞台に、こんなに早く立たせていただけると思っていなくて、それも主演で、うれしい反面プレッシャーが大きかったです。この作品で河原さんに、お芝居に対する考え方の基礎を教えていただいたし、たくさんの引き出しを与えていただきました。

僕はセリフの言い回しがうまくなくて、河原さんに「気持ちはちゃんと作れているから、セリフはその気持ちどおりにやればいいんだよ」と教えていただいたんです。ちょうどそのころ、共演の(川原)一馬が、僕と逆に、気持ちを作る過程で壁にぶつかっていて、それで僕と一馬の抱えている課題を、対比して説明して下さったんです。それで、ああそういうことなんだと思いました。たぶん一馬もそうで、お互いを手本に一歩前に進めたと思います。

『おすふん』の再演の前に、『ROCK MUSICAL BLEACH』(以下ブリーチ)と『有毒少年』に出演しました。

『ブリーチ』は、『テニミュ』以来の漫画原作の舞台。『テニミュ』も『ブリーチ』も原作が好きだったので、変に崩すようなことはしたくない。でもただ原作どおりのことをやっても意味がないんじゃないかと思って。だから原作を崩さないように大切にしながら、そこにプラスしていくことが、役作りをする上で必要なことだと思っています。『おすふん』はオリジナル新作だったので、キャラクターも一から作り上げてゆく事ができてやりやすかったところもあって、それを経ての原作ものということで、かえって難しい部分もありました。役者として自分がやりたいことと、僕の演じる役がどういうキャラクターかということの間をどうつなぐか。僕だけじゃなく、若手4人で悩んで、休憩時間はみんなで並んで原作漫画を何度も読み直したりしました。

『有毒少年』はオリジナルストーリーですけど、末満(健一)さんの中で世界観に堅い芯があって、そこを崩さないで作る難しさがありました。でも事務所の先輩がたくさん出演している恵まれた環境で芝居ができて、稽古場は面白いし、勉強になりました。先輩方が、稽古場でいろんな引き出しを出してくるんですよ。もしそれがやりすぎだったら末満さんが止める。それを見ていて、「稽古場で一回思いきりやってみる」ということを教えていただきました。

僕の演じた「有毒少年」という役は、これまでは女性が演じてきた役で、男性が演じるのは僕が初めてだったんです。それは末満さんにとってもチャレンジだったろうし、僕にとってはプレッシャーでした。男が演じることをマイナスにしたくなかった。男女でやることによってリアルな恋愛の匂いがしてしまうと壊れてしまうようなファンタジックな世界観を、少年少女のピュアな部分を大切に、その先を匂わせないように演じました。

やらせていただくお仕事一つひとつに学べることがたくさんあって、本当に僕は恵まれていると思います。

●『ブリーチ』『有毒少年』を経て、2012年の1月に『おすふん』の再演に出演。初演時と違いがありましたか?

初演の時はとにかく必死だったんですけど、この作品、もっとやっていいんだなと気がつきました。初演の時は、周りがキャラの濃い人ばかりで、富永一郎太という「何の変哲もない事が悩み」という、普通の高校生の役がぶれちゃったら周囲との振り幅が見えにくいのかなって思っていたんですけど、でもいろいろ経験して、僕ももっとやりたいことがたくさん出てきた。

気持ちが楽になって、周りも見えるようになって、富永は基本はツッコミだけど、時にはボケてみたりもして。そういうのを稽古場でやっていたら、河原さんに「木戸くんは余裕ができたね」って言っていただけて、うれしかったです。

●そして夏に『タンブリング』vol.3に出演。舞台上で新体操にも挑戦されました。

リアルタイムでドラマを観ていましたし、舞台もDVDで観て、とにかく新体操のクオリティーを上げたい、高校生のチームくらいのレベルに持っていきたい、という気持ちが強かったです。新体操が上手にできないということで作品の良さ、芝居の良さを無駄にするようなことはしたくなかった。

新体操だけじゃなく、未体験なことが多い舞台でした。(増田)哲治さんの演出が独特で、ダンスのように、見せ方を細部まで意識されるんですよ。「このセリフは何番の位置に立って」っていうふうに、芝居の中で立ち位置を細かく決めるんです。動線をそこまで意識して動くのは初めてでした。

●その本番中に、事故がありました。

その当時は、悔しいって気持ちが一番大きかったです。何が悔しいって、ケガして自分が舞台に立てないという悔しさより、周りに迷惑をかけたことに対しての悔しさが大きくて……。でも迷惑をかけた中、周りの方はみなさんすごく優しくて、誰も僕を責めない。申し訳ない気持ちとともに、本当に僕は、今まで関わって頂いた方々、皆さんに恵まれているんだとあらためて気づかされました。

一年経って、あの時ケガしなかったらって気持ちはもちろんありますが、でも今は、気づかせてもらったことや勉強になったことがたくさんあったので、それがプラスになってるような、あの経験があってよかったと言える日がくるといいなと思います。

●その再スタート、第一歩が『続!! 押忍!! ふんどし部!』になります。

そうですね。『おすふん』、再演、再々演とやって、ドラマ版もあって、やっと続編になります。「最初のヤツのほうが面白かったよね」って言われないように、クオリティを上げないといけない。お芝居にしても、ダンスも歌も、レベルを上げていって成功させたいなって気持ちで稽古をやっています。

初演から一年後の話で、富永一郎太がやる気を失って……というところからのスタート。前作よりハチャメチャになっていると思いますし、笑いどころはたくさんあります。ドラマや再々演(富永役は白洲迅)によって『おすふん』の中で過ぎた一年はすごいものがあって、僕も「富永どうした!?」って思うほどなんですよ。僕もこの一年、体は動かせないけどお芝居を観たり、いろいろ勉強をして引き出しを増やしてきて、復帰したら『おすふん』でこういうことをやりたいなって思って準備していたんですよ。でも続編の台本を読んだら、キャラクターが予想外の富永になっていて、「そこの引き出しあんまり増やしてないぞ!?」ってなりました(笑)。面白さを見せつつ、ただ笑いだけの芝居でもないので……試行錯誤をしています。

●久しぶりの稽古場はいかがですか?

めっちゃ緊張しました。お芝居をするのが久しぶりで。感覚が戻るのに少し時間がかかりました。

●ピアニストが何日か練習しなかったら指が回らなくなってるみたいな?

そんな感じですかね(笑)。この指動かなくなってるわーって、そんな感じで。でもやっぱりやり続けていくと自分の中にだんだん戻ってくるんですよね。その成果を、待ってくれていた皆さんに、お届けしていきたいと思います。

続編ということでもプレッシャーがありますし、再々演で白洲迅くんが富永をやってくれて、また僕がやるってことでもプレッシャーあるし、一年ぶりの復帰作ということでもプレッシャーがあって……プレッシャーだらけですよね。

でもやるしかない。ガムシャラにやって、本番を観ていただいて、後はお客さんがどんな感じ方をされるかですが、できるものをできる範囲で精いっぱい頑張って、盛り上げられたらいいなと思いますね。

●その次は映画化とか?

できたらいいですね(笑)。ドラマを観て、ドラマにはドラマの面白さがあるって思ったんですよ。舞台には舞台の、映像には映像の面白さがある。『おすふん』はなんでもありなので、映画化もいいですよね。さらにまた続編もいいですよね。でも何年生の設定なんだ?って問題もありますけども。学園を牛耳っている羽鳥兄弟が一年後、まだ卒業していないという謎設定ですからね(笑)。

一年という月日で変わったのは僕だけじゃなくて、役も、キャストたちも成長しているので、これからも、そういったところも楽しみにして頂きたいですね。

●最後に皆さんにメッセージをお願いします。

こうやって『続!! 押忍!! ふんどし部!』に戻ってこれた、お客さんの前でお芝居ができる環境に戻ってくる事ができたのは応援してくださる皆さんのおかげだとおもいます。大勢の方に心配やご迷惑をかけてしまったので、これから、恩返しがしたいです。この作品も、そしてこれから出演させていただく舞台があれば、絶対面白い舞台にしてみせようと思っているので、これからも木戸邑弥、そして『押忍!! ふんどし部!』を応援していただけたらと思います。

●木戸さんはこれから、どんな俳優になりたいですか?

『おすふん』も『有毒少年』もありがたいことに主役を演じさせていただいたんですが、僕自身の俳優としての憧れとしては、主役の脇にいながら強い印象を残すことができる、そんな演技ができる俳優になれたら、と思っているんです。主役を食う程の存在感を発揮できる役者になりたい。うちの事務所には、そんな尊敬できる先輩も多いので、先輩達を見習いたいと思っています!

『続!!  押忍!! ふんどし部!』は、9月16日まで渋谷、CBGKシブゲキ!!にて上演中。

[公演情報]

『続!! 押忍!! ふんどし部!』

2013年9月6日~16日 CBGKシブゲキ!!
脚本:細川 徹
演出:河原雅彦
出演:木戸邑弥 川原一馬 海老澤健次 君沢ユウキ 加藤 諒 坂口涼太郎 冨森ジャスティン 金井成大 / 明樂哲典 広瀬諒人 / 白洲 迅(特別映像出演) 緒方陽太(新人) / 柳橋さやか 小松利昌 林 希 田鍋謙一郎 清水 宏
公式サイト●http://osufun.com/

[プロフィール]

きど・ゆうや

1992年11月9日生まれ、奈良県出身。 ミュージカル『テニスの王子様』で初舞台を踏み、以後、数々の舞台に出演。また『ごくせん THE MOVIE』や『ごくせん』『イケ麺そば屋探偵』など映像の仕事でも活躍している。ドラマ『押忍!! ふんどし部!』シーズン2への出演も決定。
公式サイト●http://kido-yuya.syncl.jp

[ドラマ情報]

DANCE & MUSIC 熱血学園ドラマ 『押忍!!ふんどし部!』シーズン2 放送決定!!

tvk(テレビ神奈川)、TOKYO-MXほか にて2014年1月~オンエア
出演:白洲 迅 木戸邑弥 川原一馬 上山竜司 海老澤健次 坂口涼太郎 君沢ユウキ 冨森ジャスティン 金井成大 加藤 諒 /古田新太 ほか
公式サイト●http://osufun.com/


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