インタビュー & 特集
INTERVIEW! 『BOLERO』東山義久さん
東山義久さんがEntertainment Dance Performance Show『BOLERO』を始動! ジョン・ミルトンの叙事詩「Paradise Lost」をモチーフに描くスペース・ダンスオペラで、ラヴェルの名曲『ボレロ』を新たな振付で踊る場面も見どころです。 開幕直前、東山義久さんにお話を伺いました。(取材・文/大原 薫 撮影/望月研)
INTERVIEW & SPECIAL 2013 10/22 UPDATE
僕が目指しているのはエンターテインメント・パフォーマンス。でも、ダンスの分野に限っていうと、今日本で上演されているのはいわゆる「ダンス公演」という枠を超えないものが多い気がするんです。
――確かに、「ダンス公演」というと、いくつかのダンスの場面がオムニバス的に構成されていて、統一したテーマがないものが多いかもしれませんね。
そうなんです。もちろんそういった舞台も必要だとは思いますが、自分がお客様だったらもっと違う形でもダンスを楽しみたい、自分が見たいものが見られないんだったら、自分で作った方がいいんじゃないかと(笑)思いました。ダンス・エンターテインメント・パフォーマンスのステージを通して、舞台界のダンサーたちの可能性を提案していこうと。だから、これは今回限りの公演でなく、BOLEROカンパニーとして今後第2回、第3回と定期的に公演を続けていきたいと思っています。
――なぜ『BOLERO』をタイトルに選んだのですか?
僕は元々ダンスに憧れて始めたわけではなくて、「ダンスってどんなものだろう、どんな人がやってるんだろう」と思ってダンスを始めたんですね。そのころ、モーリス・ベジャール振付でジョルジュ・ドンが踊った『ボレロ』を見て、「すごい」と思って。音楽の中でダンサーたちが舞い踊る姿がとても神々しく見えたんです。そのときから「いつか、こういうステージをやってみたい」と思っていました。ベジャールの『ボレロ』へのオマージュとダンスを始めたときの自分の気持ちを基盤として、『ボレロ』をやってみたいと思ったんです。
ジョン・ミルトンの叙事詩『Paradise Lost(失楽園)』をモチーフに、オープニングから最後までその世界観を保ちながら、様々なダンスを繰り広げていきます。そして、作品の最初と最後を飾るのが『ボレロ』。オープニングがBOLEROカンパニーのオリジナルの『ボレロ』、そして最後にはラヴェルの『ボレロ』をこのカンパニーで新しく提案しようと思っています。
――コンテンポラリー・ダンサーの平山素子さんをゲストに、東文昭さん、長澤風海さん、桜木涼介さんなど多彩なダンサーが出演されますね。
今回選んだメンバーは僕が思うダンスのプロフェッショナルたち。まだ若いけれど、とても芝居心があって、僕とはとてもフィーリングが合いますね。今回はカンパニーメンバーのうちの3人が振付を担当します。
――公演全体では何人の振付家さんが担当してらっしゃるのですか?
8人ですね。振付家が変わることによってまったく動きも違ってくる。今回は音楽も多彩で、タンゴやスパニッシュだったり、ただ「ボーン……」という音が鳴っている中で踊るようなコンテンポラリーのシーンだったり。それに最初と最後にはボレロ。それぞれの曲に合わせて異なる振付家が振付することによって、非常にバラエティに富んだダンスをお見せできると思います。今回はバレエダンサーであっても、ジャズもタンゴもコンテンポラリーも踊らなければならない。あらゆる種類のダンスをオールマイティに見せられるのがBOLEROカンパニーのメンバーですね。
――新しいものを作り出すのには大変なパワーがいると思います。そのモチベーションとなっているのは?
僕はずっと挑戦しながら舞台を続けてきて。最初はダンサーとして始めたのにストレートプレイに出たり、歌だけのミュージカルに出演したりしてきました。僕が考える舞台人はいろいろな表現ができる人だと思っていて、その集大成としてDIAMOND☆DOGSを始めたんです。それから10年。思うようにいかないこともたくさんありましたね。10年の間には目指す方向が変わって来て卒業していくメンバーもいました。そのころは組織的にも未熟だったというのもあるけど、そういう彼らが望む場を用意してあげられなかった自分も悔しくて。皆が僕をリーダーと呼んでくれるなら、ちゃんと形として残さなきゃと思ったんですね。今は、歌に関してはボーカルの二人でライブをやったり、僕と三人でディナーショーをやったりしてるんです。あるいは『PASSION KURENAI』では僕以外のDIAMOND☆DOGSのメンバーが邦楽アーティストとコラボしたり。DIAMOND☆DOGSからいろいろなスタイルの発信ができるようになった。
こうして僕が「新しいものを生み出す」「ゼロを1にする」ことができるのは、メンバーの存在が大きいですね。僕はメンバーが大好きなんですよ(笑)。今回の『BOLERO』のカンパニーとも、一緒にゼロを1にする作業に取り組んで、新しいものを生まれる瞬間を一緒に見たいと思いますね。
――DIAMOND☆DOGSでの活動や昨年のDANCE ACT『ニジンスキー』もそうですが、東山さんが作られるものは非常に独特の世界観を持ってらっしゃいますよね。
そうですね。僕は結構特殊な経歴を持ってると思うんですが(笑)。『ニジンスキー』上演の前に、プロデューサーや(脚本・演出の)荻田(浩一)さんと「東山しかできないジャンルを作りたい」と話したときに「それはダンスアクトというジャンルじゃない?」ということになったんです。たとえば、ニジンスキーという人を舞台で表現する場合、若かりしニジンスキーをバレエダンサーが演じて、晩年の狂気に陥ったニジンスキーを別の俳優さんが演じるというパターンもありますよね。でも、踊りもするし、芝居もする、狂気に陥る前も後も演じられるのは、おこがましいけど僕しかないと思ったんです。
――確かに、東山さんが作り出す舞台は他では見られないもの。「東山義久というジャンル」になっている気がします。
そうなっていけたら嬉しいですね。僕は劇団☆新感線の舞台も大好きなんですが、キャストが誰であれ「新感線なら見に行こう」って思うじゃないですか。DIAMOND☆DOGSもBOLEROも「東山が関わってる舞台なら見に行こう」と思っていただけるものにしていきたいなと思いますね。
※稽古場レポート&写真もこちらに掲載中!!
プロフィール
東山義久
1976年3月21日生まれ、 大阪府出身。1998年、大学卒業と同時にミュージカル「Shocking!Shopping!」で初舞台。以後、しなやかな躍動感を個性として、舞台を中心にTV・CM・映画等へ活躍の場を拡げてゆく。2000年、東宝ミュージカル「エリザベート」にトートダンサーとして出演し、その妖艶な踊りと感性豊かな煌きが周囲の注目を浴びる。その後、「Rhapsody in Dream」や「DECADANCE」等への出演を経て、2003年春、自らを中心とするEntertainment Unit “DIAMOND☆DOGS”を始動、リーダーとして出演の他、舞台構成・総合演出も手掛け、2011年ビクターレコードよりメジャーデビュー。 2005年〜09年に東宝ミュージカル「レ・ミゼラブル」にアンジョルラス役で出演、2009年〜12年には新宿FACEにてミュージカル「ALTAR BOYZ」にリーダーのマシュー役にて出演、連日満員の観客にその圧倒的存在を印象づけた。また2012年春には「ニジンスキー〜神に愛された孤高の天才バレエダンサー〜」に主演、DANCE ACTという独自のジャンルを確立した。 その他、「宝塚BOYS」「銀河英雄伝説」などのストレートプレイや、DANCE STAGE「DANCE SYMPHONY」、ミュージカル「戯伝写楽」「D〜永遠という名の神話〜」(主演)「眠れぬ雪獅子」(主演)などの話題作にも多数出演、歌・ダンス・芝居のジャンルを問わず多方面に表現活動を展開している。
『BOLERO』
2013年10月23日(水)〜27(日)
天王洲銀河劇場
構成・演出:宇治川まさなり
音楽: la malinconica
振付:原田薫/港ゆりか/ANJU/桜木涼介/東山義久/平山素子
出演:東山義久/東文昭/穴井豪/長澤風海/三井聡/北川優佑/田極翼/桜木涼介/金田あゆ子/池田美佳/Tyrone Herlihy(タイロン・ヘリヒー)/Matthew Denley(マシュー・デンリー)
ゲスト:平山素子
料金:S¥8,000/A¥6,500(全席指定・税込)
問:銀河劇場チケットセンター03-5769-0011
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