インタビュー & 特集
INTERVIEW!伊達暁さん『Being at home with Claude〜クロードと一緒に〜』
1985年にカナダで初演された『Being at home with Claude〜クロードと一緒に〜』。その後ロンドンで上演され、本国カナダでは映画になった物語が、日本初上陸を果たします。若い男娼である「彼」と、彼の殺人容疑を取り調べる刑事はWキャスト。稲葉友さん扮する「彼」とコンビを組む刑事役の伊達暁さんにお話をうかがいました。
(取材・文/コヤマシズコ)
INTERVIEW & SPECIAL 2014 5/12 UPDATE
■Interview■
●稽古が始まって2週間ほどだそうですが、手応えはいかがですか?
ちょっと焦ってるかなぁ。今回Wキャストなんで、単純計算で日程の半分しか稽古出来ないんです。その一方で戯曲は普段の倍やらなきゃいけない内容だしセリフの分量なんで、4倍ヤバいんじゃないかっていう感じ。僕、セリフを覚えるのはどっちかっていうと得意な方で、稽古始まって一週間で入るんですが、今回はまだ。多分この戯曲ならではのまどろこしい言い方もあるんだと思います。僕が演じる刑事としては殺人の動機を知りたいだけ。なのに「彼」がストレートに語らないから、仕方なく同じことを繰り返したりして、効率よく会話が進まないんです。
●演出の古川貴義さんとは、2009年の『ヘッダ・ガブラー』以来の顔合わせですね。
あのときも海外の戯曲でしたが、すでに完成されたものがあった。今回古川君が上演台本を作るところからなんで、苦労はひとしおだと思います。演出家としてはシンプルですよ。答えをひとつに決めつけず、いろいろな解釈を残した演出をするし、俳優にはある程度自由にやらせてくれる。俳優を単純に動かすだけじゃなく、芝居を活かそうという方向性があるんで安心出来ますね。
●キャストとして向き合う、稲葉友くんについて聞かせてください。
稲葉くんは……、ジュノンボーイですね。端正……じゃないな、かわいいイケメン。役者としては変なクセもなく、素直なお芝居をします。柔軟に対応してくれるので共演者としてはやりやすいし、それが二十歳そこそこで出来るのはスゴイなと思います。その頃の僕? 穴があったら入りたい。フツーの素人ですよ。思い出したくもない(笑)。
●では伊達さんは、いつから“フツーの素人”でなくなった?
ここまでがアマチュアで、ここからプロ、みたいな意識はないです。役者で食べてく、という思いはぼんやりと20代半ばにはありました。でも、どっか好きでやってる、楽しくてやってる感覚は今もあります。お金をもらう、という意味での線引きはあるんでしょうけど、気持ちとしては学生時代に遊びの延長でやってた頃と同じですね。
●来年3月末に閉館が予定されている、青山円形劇場での上演ですね。
今まで何回かやりましたけど、円形は僕にとって特別な場所でもあるので、なくなっちゃうのは単純に寂しい。だから今回機会をいただけたのは、個人的にありがたいです。もしも円形に来たことがないお客さんがいたら、ぜひ来てほしいなと思いますね。
●この作品に足を運ぶ方々に、楽しみにしてほしいことは?
36時間ぶっ続けで取調べをした後からスタートする話なんで、実際はグダグダ状態だと思うんですよ。でも円形で寝不足っぽくやってもしょうがない。膨大な言葉の洪水を、お客さんに気持ちよく浴びせかけられたらと思ってます。僕らが話してる内容は100%理解出来ないし、する必要もない。それはお客さんの自由だし、僕も人の芝居を観るときは好きなところを観たり、セリフを聞いてないときもある。だけどせっかくこの作品を観るんだったら、言葉のリズムを楽しんでほしい、ってところはありますね。
[プロフィール]
伊達 暁
だて・さとる
1975年7月14日生まれ、東京都出身。
阿佐ヶ谷スパイダースのメンバー。2014年7月には舞台『カッコーの巣の上で』(演出:河原雅彦)の出演が控えている。
■稽古場Report!■
「時間があれば遊んで行ってください」という伊達さんからのお誘いに甘えて、インタビュー後の稽古を拝見。伊達さんは上着を脱いだスーツ姿でノーネクタイ。稲葉さんは黒のスウェット上下で、明るい金髪(映画作品の撮影用の髪色だそうです)が印象的。演出を手掛ける古川さんは稽古場の奥に陣取り、360度観客に囲まれる円形劇場の感覚を稽古の段階から意識させています。
まずは台本修正作業からスタート。語尾や言い回しの微調整が古川さんからアナウンスされ、俳優たちが自分の台本に書き込みます。続いて、「彼」が立てこもる判事室での取調べのシーンへ。稽古場中央には大小の机があり、どうやら大きい方は判事の立派な机のよう。伊達さん扮する刑事はときに穏やかに、ときに激しい口調で責め立てるのを、稲葉さんが演じる「彼」はのらりくらりとかわしている。一旦止めて、古川さんからセリフの細かいニュアンスについてのコメントが伝えられました。
次に古川さんいわく「余興の時間」。稲葉さんの長ゼリフで語られる情景を、伊達さん・古川さん、そして取調べに立ち会う速記者・警護官役の井上裕朗さん・鈴木ハルニさんの4人で再現します。なんでも膨大すぎるセリフを覚えやすくするために別チームで試した手法だそうですが、これがなかなか演劇的で面白い。残念ながら実際の舞台では見られないそうだが、このスタイルでの上演があってもいいのでは? と感じました。
手強い戯曲に、楽しみながら取り組む様子が伺えた稽古場。円形劇場いっぱいに言葉のシャワーを降り注ぐべく、濃密な稽古の日々は続きます。
『Being at home with Claude ~クロードと一緒に~』は5月14日〜18日まで、青山円形劇場にて上演されます。詳細は以下のリンク先にてご確認ください。