インタビュー & 特集
SPECIAL! 『セレブレーション100!宝塚』集中連載 第五回 風花舞さん(1)
宝塚歌劇100周年を記念して、5月18日より公演中の『セレブレーション100!宝塚~この愛よ永遠に~』。この作品に出演されるトップスターさんたちに、現役時代のお話から100周年の思い、OG公演についてなどを、連載でお伺いしています。(※登場順不同)
娘役のトップバッターで登場するのが風花舞さん。「踊りたい」という思いだけで宝塚に入った少女が抜擢され、芝居や歌に目覚め、トップ娘役として大輪の花を咲かせて退団するまでの9年間の軌跡を振り返ります。そこにはあるのは、一段一段変化と成長をし続けることで、自身の、そして娘役の守備範囲を広げた職人の姿――。(取材・文/小柳照久、撮影/熊谷仁男)
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INTERVIEW & SPECIAL 2014 5/20 UPDATE
宝塚時代の初舞台
大浦みずきさん時代の『ベルサイユのばら』で初舞台を踏みました。私の期は初舞台生の抜擢があり、純名里沙がフィナーレのエトワールを、私がバレエのソロを披露したんです。私が踊ったのは戴冠式の場面だったので、後ろに上級生がいらっしゃる中での振付だったんですが、子供のころからずっとバレエは踊ってきていたし、一人で踊るのは普通の事だったので、当時はありがたさとか怖さがわからず、何年かしてから「あれっ?」と(笑)。だけど、隣の稽古場で別の稽古をされていた大浦みずきさんが戻っていらして、一番前の隅っこでごらんになった時はさすがに緊張しました、大浦さんに憧れて宝塚に入ったので。大浦さんがニコニコしながらずっと見てくださって、最後に拍手をしてくださったのが嬉しかったです。
新人公演
組回りの後、配属となったのは月組でした。本公演では4年位、役がほとんどなかったんですが、新人公演やショー、バウホールでは早くから勉強させていただきました。当時の月組は麻乃佳世さんがトップ娘役でした。研2の時、新人公演で初めて麻乃さんの役をいただいたんですが、本当に小さくて華奢な方で、私とはイメージも持ち味もまったく違う上級生だったので、自分にないものを新人公演で求められるのはとても難しかったです。もちろん、聞きに行けば教えてくださいましたが、型にはめようとはしないで、自由にさせてくださったのがありがたかったですね。
後に私がトップ娘役になった時、ダンスに関してはどうしても特殊技術を求められることが多くなりました。新人公演は人のお衣装を着て一回しかできないという大変な状況なので、私の役を演じる後輩にはお稽古場でコツを教え、衣装も「自分が踊りやすいように直してもらいなさい」って言っていました。技術面のヒントだけは時間もないので与えていましたけど、演技内容については好きにして良いよと、それは前のトップ娘役さんから受け継いで、同じようにやっていました。
海外公演
研3の時に大浦みずきさんがOGとして参加されたニューヨーク公演、研5の時に安寿ミラさんが主演のロンドン公演に参加しました。
ニューヨーク公演は最下級生だったのに、当初は大浦さんが踊る場面を踊ったり、大浦さんと二人で踊ったり、学生のための公演では大浦さんの代役として踊ったりしました。私はダンサーとして宝塚に入りたかったので、ダンス公演で、ニューヨークで凄いことをさせていただいていることに、ただただ驚きでした。
ロンドンの時はすでに月組でヒロインも演じていたので、気負いもなく、お客様も「ヒュー」とか声が上がっていて自由な感じで、楽しかったですね。思ったことが声に出る素直な反応は、頑張ってきたことが報われたんだなという感じがして嬉しく思いました。まだ下級生だったので、ロケットも踊りつつ、メインどころもさせてい頂くという感じで、ロケットも踊ってました。この時のロンドン公演で、初めて海外公演でのお芝居上演となったんですよ。
お芝居
研2の時の新人公演『銀の狼』で正塚先生に出会ったことでお芝居に開眼しました。とはいえ、最初はコテンパンにされて何もわからなくて。研5の時にバウホールで久世星佳さんと『WANTED』を演じましたがまだまだで。ようやく、久世さんがお辞めになるときの『バロンの末裔』で先生がおっしゃることがわかるようになりました。久世さんがすごくお芝居がお上手な方で、その間にも『CAN-CAN』ですとか『銀ちゃんの恋』ですとか、一緒に組ませていただいたおかげで、宝塚の正統派の娘役という枠にとどまらない作品を多くさせていただきました。娘役としては麻乃さんをお手本にしていましたけれど、私がトップ娘役になってからは全然カラーが異なっていたので、役づくりについては自分でやるしかなかったのですが、久世さんはまったく私を拘束せず、自由にさせてくださる方で、どう演じても返してくださって、自由に自然に引っ張り上げてもらったという感じがありましたね。最終的には『永遠物語』の吉岡夫人で榛名由梨さんとのお芝居までやらせていただきました。
歌でも求められたステップアップ
真琴つばささんがトップスターになられて『WEST SIDE STORY』の上演が決まった時、実は「アニタを演じたい」と劇団に言ったことがあるんです。でも、1000days劇場のこけら落とし公演ということもありましたし「お前は月組のトップ娘役だからマリアを」と言われまして。自分のいる立場がゆえに、憧れの「アメリカ」が踊れないというジレンマと、自分のキーとは合わない高い音域の歌を歌うっていう、出来ないことへのプレッシャーで、あれほど大変だった公演はなかったですね。体力的なきつさは寝たら治るんですけど、精神的なきつさは解放できなくて。でも、あの公演を頑張ったから、その後が変わったと思いますし、また、マリア役をやりたいと思ってもできるものではないので、すごく幸せなことだったんだなと終ってからは感謝しました。当時はどうしたら良いんだろうとずっとずっと悩んでましたけど(笑)。宝塚のありがたいところは、千秋楽まで何度も見てくださるリピーターの方がたくさんいらして、研1から卒業するまでもそうですけれど、宝塚大劇場の初日から東京宝塚劇場の千秋楽まで、成長していく姿を楽しんでくださること。本当は初日に完璧なものをお見せしなくちゃいけないんですけど、千秋楽までに練り上げて完成したものもありました。常に、「これでいいや」ではなく、「できるようになりたい」と思って取り組んでいましたね。
(2)へつづく。