インタビュー & 特集
Special! スタジオライフの代表作『トーマの心臓』開幕!(1)
萩尾望都先生の不朽の名作漫画『トーマの心臓』。連載開始40年目となる節目の年に、スタジオライフが8度目の再演を果たしました。複数キャストによる上演で、メインキャスト全員をフィーチャーした舞台写真とレポートをお届けします!
(写真/Yukari Watanabe 取材・文/大原 薫)
INTERVIEW & SPECIAL 2014 6/2 UPDATE
ドイツのギムナジウム(高等中学)に通う少年たちの透明な時を描いた『トーマの心臓』。
ユーリを愛するがゆえに自死した少年トーマ。だが、ユーリはトーマの思いを受け入れることができなかった。半月後、トーマにそっくりのエーリクが転校してきて……。
ギムナジウムという周囲から隔絶された世界をそのまま再現するには、男優のみの劇団であるスタジオライフがもっとも相応しいといえるでしょう。さらに、脚本・演出の倉田淳さんの関係性を重視した演出で、少年たちの揺れ動く心のひだを丁寧に写し出します。
漫画を舞台化する「2.5次元舞台」ではキャラクターの再現を第一義とする作品もあります。それらと一線を画するのは、出演者一人一人が自分の物語として役を生きていること。人との関わりの中で、あるいは心を閉ざし、あるいはあたたかい思いを受け入れて変化していく様を役者さんたちが体現。人は孤独ゆえに、人を求めなければ生きていけない……役者さんたちの真摯に役に生きる姿が、私たちに大切なものをもう一度思い出させてくれるのです。
1996年の初演以来8度目の上演ですが、今回は舞台美術(乗峯雅寛さん)を一新することで、新たな『トーマの心臓』の世界に踏み込んでいきました。登場人物の繊細な心の動きにスポットを当てる照明(阪口美和さん)も非常に印象的。図書館で、トーマが遺した詩が隠されている「ルネッサンスとヒューマニズム」の本に触れるレドヴィの手元のみが明るくなることによって、レドヴィが「僕の聖堂」と称する本のイメージが鮮やかに広がります。また、クライマックスのエーリクとユーリの対話のシーンで、エーリクの姿がまるでラファエロの絵から抜けだしたような優しい輝きに満ちることも、ドラマをより引き立たせるのです。
今回の上演では『トーマの心臓』を上演初期から支えてきたキャスト、そして、新たに役に取り組むキャストが登場し、新鮮な息吹を吹き込みます。
Auslese チームの山本芳樹さんは今回で7度目となるユーリ役。過去の傷に囚われて心を閉ざす憂いの影を濃く漂わせるのが山本ユーリの真骨頂ですが、7度目にして新たなアプローチを見せて、さらに人物像に奥行きを増しています。11年ぶりのエーリク役、及川健さんは「役に生きるとはこういうことか」と実感させられるほど。相手の空気に敏感に反応して笑い、泣き、怒る。感情豊かなエーリクでした。こういうエーリクだから、閉ざされたユーリの心を動かすことができたのだろうなと感じます。岩﨑大さんはオスカー役。以前、オスカーの幼少期を描いた『訪問者』で同役を演じているだけに、自分の「父」との思い出を語るシーンに実感がこもりました。
(2)に続く。
[公演情報]
スタジオライフ『トーマの心臓』
5月24日~6月22日 紀伊国屋ホール
7月11日~13日 シアタードラマシティ
原作:萩尾望都 小学館文庫(C)萩尾望都
脚本・演出:倉田淳
出演:山本芳樹・及川健・岩﨑大・松本慎也・仲原裕之・久保優二・田中俊裕・青木隆敏 ほか
問い合わせ先:スタジオライフ 03-5929-7039 (平日12時~18時)
http://www.studio-life.com/
ausleseチーム舞台写真(画像クリックで拡大)