インタビュー & 特集
Special! スタジオライフの代表作『トーマの心臓』開幕!(2)
萩尾望都先生の不朽の名作漫画『トーマの心臓』。連載開始40年目となる節目の年に、スタジオライフが8度目の再演を果たしました。複数キャストによる上演で、メインキャスト全員をフィーチャーした舞台写真とレポートをお届けします!
(写真/Yukari Watanabe 取材・文/大原 薫)
INTERVIEW & SPECIAL 2014 6/2 UPDATE
(1)より続く。
若手キャストが揃うRieslingチームは過去2回エーリクを演じた松本慎也さんがユーリ役で初登場。『トーマの心臓』の世界をよく知っている人だけに、丁寧にユーリの心をたどって、ドラマ性を深めました。新人の久保優二さんがエーリク役に挑みます。決して器用な演技ではないけれど、真摯に役にぶつかっているのが伝わってきました。まっすぐなエーリクが投げかける波紋の強さを感じさせます。オスカー役として初登場した仲原裕之さん。大人びて振る舞う少年の心の内にある「愛を求める」思いが非常に切なく響きます。「ぼくが望んだのは 気づいてくれることだったんだ 僕が愛しているってことに」という台詞に万感がこもり、新たなオスカー像を作り上げました。
Kabinettチームのエーリク役田中俊裕さん。松本慎也さん演じるユーリの言葉を一言も漏らすまいと集中し、心で感じようとする演技に好感が持てました。ラストシーンに田中エーリクが見せる表情で、ユーリと関わることによってエーリクもまた成長しているということが伝わってきました。
前回公演でユーリを演じた青木隆敏さんはサイフリート役。登場した瞬間から特異なオーラを身にまとった姿が圧巻。レドヴィ役は関戸博一さん。原作とは異なる設定ですが、彼の静謐な視線が舞台版『トーマの心臓』の低音部分を支えます。
少年たちを取り巻く大人の役は、ベテラン勢が演じます。楢原秀佳さんが演じるシュヴァルツはエーリクの亡き母の婚約者。シュヴァルツとエーリクの会話のシーンは「亡き人が生きている人たちの思いをつなぐ」という命の永遠性をまざまざと感じさせて、涙なしでは見られません。トーマの父ヴェルナーの山﨑康一さんはあたたかみと人間性が伝わる芝居。「どうしてお父さん 神様はそんなさびしいものに人間をお作りになったの? 一人ではいけないように」というトーマの問いかけに答えた話に真実が宿り、ヴェルナーの伸ばした手に亡きトーマのぬくもりが感じられます。
決して軽い作品ではありません。でも、3時間かけて少年たちと共に心の旅をすることで、清々しい感情が胸に広がる舞台です。
スタジオライフ『トーマの心臓』は5月24日から6月22日まで紀伊国屋ホール、7月11日から13日までシアタードラマシティにて上演されます。
[公演情報]
スタジオライフ『トーマの心臓』
5月24日~6月22日 紀伊国屋ホール
7月11日~13日 シアタードラマシティ
原作:萩尾望都 小学館文庫(C)萩尾望都
脚本・演出:倉田淳
出演:山本芳樹・及川健・岩﨑大・松本慎也・仲原裕之・久保優二・田中俊裕・青木隆敏 ほか
問い合わせ先:スタジオライフ 03-5929-7039 (平日12時~18時)
http://www.studio-life.com/
RIESLING・KABINETTチーム舞台写真(画像クリックで拡大)