インタビュー & 特集
INTERVIEW! 朗読劇『春のめざめ』相葉裕樹さん×高橋正徳さん part.1
青春群像劇の金字塔『春のめざめ』が、12月6日から東京・天王洲 銀河劇場にて上演されます。初めて朗読劇に挑む相葉裕樹さんと演出の高橋正徳さんにお話をうかがいました。(取材・文/武田吏都)
INTERVIEW & SPECIAL 2014 12/4 UPDATE
●稽古を拝見してからインタビューさせていただいているんですが。のっけから失礼かもしれませんが、朗読劇なのにこんなにちゃんと稽古するんだな、というのが率直な感想だったりしまして……。
相葉・高橋 (笑)
高橋 今日も午前11時から始まって、今もうすっかり夜ですからね。
相葉 僕は朗読劇をやるのが初めてなんですけど、朗読劇は2、3日しか稽古やらないのが普通だよ、みたいに聞いてたんです。
●じゃあキャストとしても予想外?
相葉 正直そうですねえ(笑)。
高橋 正直誰も思っていなかったと思うし、僕もそんなつもりじゃなかった(笑)。でも今日も18時くらいでそれまでの稽古場が使えなくなるから、「じゃ、終わる?」って言ったら、むしろみんなが「え?」「やるっしょ!」みたいな空気で(笑)。それで場所を移動して続けたんだよね。お、みんな熱いな!って。
相葉 せっかくやるなら、そうやってみんなで掘り下げた方が楽しいですからね。
高橋 ほんとにね。我々にとっても贅沢な時間ですね。でも逆に普通の芝居だったらそんなに苦労しないかもしれないってところも多いので、稽古期間は1週間あるけど、それでも短いような気がします。
●今回の企画に「春のめざめ」を選んだ理由は?
高橋 新作じゃなく、そして例えば「ロミジュリ」みたいなシェイクスピア以外で、若い人たちが出てくる話という中から、この作品が出てきたんですよね。
相葉 僕は全く初めてこの作品に触れたんですけど、最初に原作をいただいたときは読み進めるだけでも大変な感じで。「何言ってるんだろ?」って部分が結構あって、「これを自分がしっかり考えた上でお客さんに伝えられるだろうか。なかなか難解だぞ」とは思ったんですけど。でも鐘下(辰男)さんの上演台本を読ませていただくと、普段しゃべるような言葉にだいぶ近くなったので、芝居もしやすくなって、感情が乗りやすくなりました。
高橋 原作の面白さは当然あるんですが、やっぱり120年ぐらい前に書かれた話だから、感覚的にわからない部分がある。だったら鐘下さんに、原作の持ってるエッセンスや人間関係をよりピックアップしてもらって、今に通じる物語にしてもらえないかなと思ったんですよ。現代に置き換えるという意味ではなく、そのまま100年前のドイツのギムナジウムが舞台なんだけど、っていう。
●稽古3日目の段階ですが(取材時)、手応えはいかがですか?
高橋 手応えというか……僕は楽しくてしょうがない(笑)。僕は劇団(文学座)に所属していて、若者から年配の人までいるんだけど、同じ劇団だとやっぱり同じ文法を持っているんだよね。
相葉 どこか似てきちゃうというか。
高橋 そうそう。ツーカーみたいなところがやっぱりどこかにあって、それはどこの劇団でも絶対あると思うし魅力なんだけど、そうじゃない面白さっていうかさ。
相葉 いやあ、今回の人たちは面白いですよ、ほんとに。僕も共演経験があるのは(武田)航平くんだけなんですけど。
高橋 この作品は少年少女たち、そして親も、出てくる人たちみんなの価値観がバラバラなのが面白くて。キャストも演劇的な出自っていうか、ある表現に対しての文法が全然違うから、僕自身もすごく新鮮で楽しいです。
●稽古場に入らせていただいたとき、ちょうど栗原類さんワールドが繰り広げられていて、非常に面白かったのですが(笑)。
相葉 いやあ、類くんは想像を超えてきますよね! やっぱりなんか浮世離れしているというか、嘘みたいな存在(笑)。
高橋 それでまだ19歳っていうね。でも超真面目で、すごい一生懸命!
相葉 こんなに大真面目にやって面白い人もあまりいないと思うし、それが彼の魅力。すごくアグレッシブに、自分の思いとかも高橋さんに伝えたりしながら作っている感じが、見ていて「あ、すごいな」と思います。
高橋 モーリッツ役の中島さんもさ、すごく面白いよね。最初、相葉さんと中島さんのどっちがメルヒオールとモーリッツをやるか決まっていなくて、稽古に入る前にオーディションというか、読み合わせをしてもらったんです。あのときたぶん、相葉さんはだいぶ練習してきてたよね?
相葉 まあ、読んではいました。
高橋 だからダメ出しするとどんどん変わっていくんだけど、中島さんは……(笑)。
相葉 最初ちょっと不安になりましたよね(笑)。
高橋 正直、「大丈夫か?」みたいな(笑)。30分か1時間ぐらいした後に、やっと体があったまってきたみたいになってきて。
相葉 マイペースなんですよね(笑)。
高橋 そう、だから腹に落ちるとかすると、どんどん良くなっていく。相葉さんは、本当はこっちの役をやりたかった、とかあった?
相葉 うーん、僕モーリッツをやりたかったかもしれないですね。やりたいっていうか、メルヒは強い男のイメージがあったんですよ。体育会系っていうか。で、チラシの写真では中島くんはガッとした男っぽい印象だったから、対比として僕がモーリッツかなと。でも実際に中島くんに会ったら、「あ、この人メルヒじゃないな」って(笑)。
高橋 彼はモーリッツにぴったり。ちょっとおどおどしていて、体が大きいのになんかもっさりしていて。(「花子とアン」の)帝大生をやっていたとは思えない(笑)。
相葉 でもぼそっと鋭いこと言ってきたり。昨日も中島くんが「決起集会やりましょうよ」って言い出して、みんなで飲みに行きました。で、みんなであだ名を決め合ったりして。
高橋 今日、それは生かされてた?
相葉 僕は「ばっちって呼んで」って言ったんですけど、誰も呼んでくれない!(笑)
高橋 (笑)。だけどこれ奇跡的っていうか、相当面白いメンバーだと思うんだよね。他にも、欲しがりでやりたがりの(笑)浅草生まれの航平くんとか。彼とカップルの木戸(邑弥)くんはかわいいし。そして、世間的には「え、こんなところに『レミゼ』の笹本玲奈?」って思うかもしれないけどすごくいいし、横田(美紀)さんも最初は真面目な人かなと思ったら、ちょっとオープンになると超面白い人で、一人でゲラゲラ笑ってるし(笑)。
相葉 稽古していく中で、「あ、これ絶対面白くなるな」って。メンバー一人ひとりの色がほんとにパキッと分かれているので、それがきっと面白みにつながっていくと思います。
(part.2へ続く)
[プロフィール]
相葉裕樹
あいば・ひろき
『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』『3150万秒と、少し』『ちぬの誓い』『BACK STAGE』など数多くの舞台で活躍。現在ドラマ『黒服物語』に出演中。2015年『ラ・カージュ・オ・フォール 籠の中の道化たち』『CLUB SEVEN 10th stage』へ出演決定。
高橋正徳
たかはし・まさのり
2004年文学座アトリエの会『TERRA NOVA テラ ノヴァ』で文学座初演出。以降、川村毅、鐘下辰男、佃典彦、東憲司など多くの現代作家の新作を演出している。
[公演情報]
朗読劇『春のめざめ』
2014年12月6日(土)ー7日(日) 天王洲 銀河劇場
作:フランク・ヴェデキント
上演台本:鐘下辰男
翻訳:長田紫乃
脚色・演出:高橋正徳(文学座)
出演:相葉裕樹 中島 歩 笹本玲奈 武田航平 木戸邑弥 栗原 類 横田美紀 金沢映子 櫻井章喜