インタビュー & 特集

INTERVIEW! 『マーキュリー・ファー』 高橋一生さん Part.2

2015年2月1日(日)からシアタートラムで上演されている『マーキュリー・ファー Mercury Fur』に出演中の、高橋一生さんに、Part1から引き続き、お話を伺いました。(文/武田吏都、撮影/増田慶)

INTERVIEW & SPECIAL 2015 2/7 UPDATE

Part1からの続き)

2014-1201_oms-0364――基本的にどの登場人物も血縁的につながる者がいる――つまり誰かの兄であり、誰かの弟であり、というようなところにも普遍を感じたのですが。ちなみに高橋さんご自身、ご兄弟は?

いますよ。僕が一番上で、下に4人います。冒頭で2人が、「お前を殺す」「お前を殴る」って言いながら抱き合う場面があるんですけど、その関係性はすごくわかりやすいですよね(笑)。シンプルに言ってしまえば、お兄ちゃんが弟に対してちょっとバカにしたりするから弟がいじけてしまって、それを見て「お前、かわいいなあ!」っていう描写なのですが。そういう、すっごく腹が立つけど憎らしいほど好きだ、みたいな根源的で複雑な兄弟愛みたいなものが冒頭の何ページかで簡潔に語られていて、その時点で作品としてすごい完成度だと思うのですが、どこまで表現できるかというのは逆にプレッシャーに感じます。

――私生活上の、兄としての高橋さんも、弟さんにそういう愛情を抱いている?

2014-1201_oms-0224いえ、無関心を装います(笑)。でないと、弟たちからしたら苦痛だと思いますよ。「すごく愛してる」っていうのが見えるって、すごくキツいことだと思うなあ。だから「ふーん」って感じではいるのですが。そうじゃないと僕、芽が伸びていく途中でなんか横槍を入れてしまいそうで(笑)。自分の中にわりと兄貴感のようなものがあって、それを自覚しているのでしょうね。でもエリオットは、「物理的に手を出してでも本当に助けないとコイツ(=ダレン)はヤバいことになる」と思っている。だからダレンをなんとしても助けるために、自分が常人でいなければダメだと思い込んで、自分に銃口を突きつけながら生きてきた人間なんですよ。うん、やっぱりこの狂ってしまった世界の中で、エリオットが一番常人的な思考を持っていると思います。『レインマン』でいうトム・クルーズ(の役)のような。

――なるほど。あれも兄弟の映画でしたね。その弟ダレンを演じる瀬戸康史さんとは初共演です。

「ああ、なんてかわいいんだろう」とか「なんて素敵な男なんだろうな」という感覚が、瀬戸さんに対してはありますね。でも見た目とのギャップというか、すごく男らしい方なのではないかと思います。

――高橋さんの視点での読み解きを伺って、ますます舞台を拝見するのが楽しみになりました。

2014-1201_oms-0155

“今が楽しい”というのが一番だなって、この年になって思うようになりました。全世界たぶん同じだという気がするのですが、今って、苦しんでいないと自分を認識できなくなってきている気がして。傷つけられたら痛いから、自己認識できる。ずっとそのループで、でもそれってエネルギーの無駄遣いというか。悲しんでいれば、辛ければ、自分が認識できるってすごく寂しいことだし、そうじゃなくても生きられるし、本当は。そんなことに気づき始めた自分と対比すると、見えてくるものがあります。おおよそエリオットは楽しんでないなあ、必死だなあっていう(笑)。どっちが上でどっちが下というわけではなくて、エリオットはずっと迷ってしまっている、苦しんでしまっている、そして傷つけ合わないとわからない人間なんです。

★★★ 高橋一生さんからのメッセージです ★★★

プロフィール
たかはし・いっせい
1980年12月9日生まれ、東京都出身。デビュー以来、さまざまな映像・舞台で幅広く活躍。特に近年はテレビドラマへの出演が多く、昨年はNHK大河ドラマ『軍師官兵衛』をはじめ、『信長協奏曲』『ペテロの葬列』『夜のせんせい』などの好演が記憶に新しい。世田谷パブリックシアター『4 four』の演技にて2012年第67回文化庁芸術祭賞演劇部門芸術祭新人賞受賞。


『マーキュリー・ファー』
2015年02月01日(日)~2015年02月22日(日)
シアタートラム
[作] フィリップ・リドリー
[演出] 白井 晃
[出演] 高橋一生/瀬戸康史/中村 中/水田航生/小柳 心/小川ゲン/半海一晃/千葉雅子
[お問い合わせ]世田谷パブリックシアターチケットセンター 03-5432-1515

2月28日(土) 兵庫県立芸術文化センター
3月8日(日) キャナルシティ劇場

[ストーリー]
ボロボロの部屋に兄弟がやって来る。パーティーの準備にかかるが、そこに1人の男が突然顔を出し、「バタフライ」が欲しいので手伝うと言う。しばらくするとローラと呼ばれる美貌の人物が現れる。そしてもう1人、このパーティーの首謀者らしき男と謎の婦人がやって来る。彼らはパーティーのためにそれぞれの役割を、異常なほどの饒舌な会話を交わしながら行う。やがて、パーティーゲストがやってきて、パーティープレゼント(と呼ばれる青年)が用意されるのだが、パーティープレゼントの異変により、パーティーは思わぬ展開に…

 

 

 

 

 

 

 

 


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