インタビュー & 特集
INTERVIEW! シアターBRAVA! 10周年記念シリーズ つながる音楽劇「麦ふみクーツェ」〜everything is symphony!!〜渡部豪太さん part.1
坪田譲治文学賞を受賞した、いしいしんじさんの傑作小説を映像×音楽×演劇で立体化。関西中心に活躍するウォーリー木下さんの脚本・演出、音楽家・トクマルシューゴさんの書き下ろし楽曲で新しい音楽劇を作り上げます。「観客はそれぞれ、一人が一個ずつなにか音の発するものを持参すること ※楽器はもちろん、おもちゃ、家事用具、日用品のたぐいでも可。ただしサイレンのみ禁止」と公式サイトやリーフレットに記載されているように、観客も一緒に音を鳴らして(!)参加できる作品とのこと。ユニークなステージに主演として臨む渡部豪太さんに、作品の魅力、意気込みを伺いました。(写真/熊谷仁男 文/片桐ユウ ヘアメイク/atsu.co スタイリスト/ume 衣装協力/BLUE TRICK)
INTERVIEW & SPECIAL 2015 4/9 UPDATE
■独創的な作風を得意とする小説家・いしいしんじさんの世界
——この舞台の原作となる小説『麦ふみクーツェ』はお読みになりましたか?
もう4回くらい読んでいます。というのは面白くて! 最初はひらがなの使い方だとか文体がわかりづらくて、なかなか頭に入ってこなかったんです。でもある時を境に慣れてきたんですよね。ふとした瞬間だったんですけど、分かるようになった途端に雪崩のように言葉が押し寄せてきて、イメージも湧いて。今ではすっかりいしいさんの作品を色々読むようになりました。
——物語は、主人公の“ねこ”と呼ばれる青年がヘンテコな楽団に出会い、恋をして、演奏をして…その中で不思議な現象も起こったりと、ファンタジー世界の出来事のように思えるのですが。
初見だとそうなんですよ。どこの国の出来事かもハッキリ分からないので。でも実は、世の中でわりと起きている事象に塩をひとつまみ加えたくらいだと思うんです。例えば「ネズミの雨が降る」というエピソードがあるんですけど、実際、この世界でも近いことは起こっていて。アメリカの大きな竜巻の後には魚やカタツムリの雨が降ってきたりとか。そういう話を聞くと、多分いしいさんは現実とファンタジーのギリギリのラインをエッジに攻めつつも、それをほんわか描いているのかなと。そのほんわかさが逆に恐ろしいというか、ドキドキする魅力でもありますね。甘いものを押し付けられるわけではなく、かといって後味が悪いわけでもない、本当にちょうどいい塩梅の距離で終わる読後感があります。
——渡部さんが演じる“ねこ”という青年についてはいかがでしょう?
掴みどころがないというか、未だ「“ねこ”ってなんだべ…」という状態ですね(苦笑)。作品全体の流れでは主人公として成長もすごく描かれていますし、ハッピーエンディングっぽくはあるんですけど。今は原作を読んだ後に感じたイイ感じの距離感を、演じるにあたって少しずつ縮めるために再度読んで…という作業中です。
——読み込む度にその距離は縮まってきていますか?
いや、行きつ離れつ…ですね。こうなんじゃないかと思ったことがその通りなようでいて、別の解釈も生まれてくるので。本当に奥深いです。すごくカロリーを消費する本ですけれど、読んでいて飽きない。
——その深い小説を舞台上で“立体化”する音楽劇ということです。
脚本は、原作とは異なる部分も多いです。“ねこ”という主人公を真ん中に据えているのは同じで、登場人物もほとんど一緒ですが、今回の舞台の重きは「つながる音楽劇」なので。原作から抜粋されたシーンや本筋は変えず、客席と舞台の境目を溶かすというか、そういった作品にすることが第一になっています。我々プレイヤーは与えられた役を忠実に生きますし、観客のみなさんは客席でそれをご覧になるわけですが、演劇の、ツバを呑み込む音も耐えられないというような緊張感は全くなくて。踊りたくなったら踊っても構わないというような脚本になっています。
——主人公の“ねこ”は、猫の声真似が得意という役どころですね。
そうです。オーケストラの楽譜って、それぞれの楽器のパートが書き込まれていますよね。そこに「ねこの声」というパートもあるんですよ。実際、誰かの曲にも「小鳥の声」や「おもちゃの兵隊が歩く音」が書いてある楽曲もあるんですよね。それと同じように「ねこの声・朗らかに」と書かれている譜面のパートを担当する、という感じです。
——そのパートの練習方法というと?
まず食事からですね。食事は大体、ごはんに味噌汁をかけたものにして。
——それ、ねこまんまですね…。
あと「ねこのきもち」という雑誌を読んだり、柱を見ると爪を研ぐようにしています。そんなところですかね(笑)。
——なるほど(笑)。
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[プロフィール]
わたべ・ごうた
幼少時より芸能活動を始め、ドラマ、映画、舞台と多方面で活躍中。主な舞台に『夜は短し歩けよ乙女』『余命1ヶ月の花嫁』『ピンクスパイダー』『コーパス・クリスティ 聖骸』『愛の唄を歌おう』『ユーミン×帝劇 Yuming sings…「あなたがいたから私がいた」』などがある。
[公演情報]
つながる音楽劇「麦ふみクーツェ」~everything is symphony!!~
[東京]4月10日(金)~19日(日) 世田谷パブリックシアター
[大阪]4月23日(木)~26日(日) シアターBRAVA!
原作:いしいしんじ 『麦ふみクーツェ』 (新潮文庫刊、理論社刊)
脚本・演出:ウォーリー木下
音楽監督:トクマルシューゴ
出演:渡部豪太 皆本麻帆
朴 璐美 植本潤 木戸邑弥 小松利昌 田中利花 松尾貴史 / 尾藤イサオ
佐嶋宣美 ダンドイ舞莉花
有田杏子 牛尾茉由 岡田啓 小林うてな 斎藤彰子 田中馨 永滝元太郎
兵頭祐香 松延耕資 三浦千明 山本直輝 ヨース毛
熊谷和徳(映像出演)
公式サイト●http://theaterbrava.com/mugifumi/