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『プリンス・オブ・ブロードウェイ』製作発表記者会見レポート
2015年6月17日、ザ・ペニンシュラ東京。ワールドプレミア ミュージカル『プリンス・オブ・ブロードウェイ』の製作発表記者会見が行われたこの日は、日本はもちろん世界のミュージカル界にとって記念すべき日に! 巨匠ハロルド・プリンス、共同演出・振付のスーザン・ストローマン、さらにブロードウェイの第一線で活躍するミュージカルスターや、“宝塚のレジェンド”と言われた元星組トップスター・柚希礼音が登壇。プリンスの声を担う市村正親も駆けつけ、華やかな会見が行われました。(取材・文/小野寺亜紀)
NEWS & INFORMATION 2015 6/21 UPDATE
約200人の報道陣が詰めかけた会見は、ブロードウェイで活躍するシュラー・ヘンズリーによる『屋根の上のヴァイオリン弾き』と『スウィーニー・トッド』からの迫力ある歌唱パフォーマンスからスタート。
彼が、「長く俳優をやっていますが、公演前からこんなに興奮したことはない。ハロルドとスーザンと仕事をするのは俳優の夢。しかも全てがヒット曲なんて!」と語ったのが、この奇跡的な新作の凄さを表しています。
26歳であの名作『ウエスト・サイド・ストーリー』オリジナル版をプロデュース。その後も『キャバレー』『エビータ』『オペラ座の怪人』など数々の傑作を演出し、トニー賞を史上最多の21度受賞している“ミスター・ブロードウェイ”ハロルド・プリンス。彼の人生を、60年のキャリアを彩る名作と共に綴るのが『プリンス・オブ・ブロードウェイ』。ハロルドは「梅田芸術劇場さんから企画を頂き心から喜んでいます。いよいよ世界初演を迎えることができます」と感慨深げに話します。親日家で知られ、「『太平洋序曲』で日本へのオマージュを表現しました」と言う彼が、ここ日本でワールドプレミアを行う意味を一番かみしめているようでした。「伝統を守ると同時に進化を遂げてきたのがブロードウェイ。皆さんとその“財産”を分かち合いたいです」。
『クレイジー・フォー・ユー』『コンタクト』以来の来日となるスーザン・ストローマン。彼女もまた5つのトニー賞を受賞した名演出・振付家。「私たちニューヨークで仕事をしている者は、みんなハロルドから演劇を学びました。彼の素晴らしいキャリアを祝福する舞台に参加することができ、とても嬉しいです。こんな素晴らしいスターたちと一緒に仕事ができるなんてエキサイティング!」と話します。
次々と新しい才能が登場するブロードウェイ。今『オペラ座の怪人』でクリスティーヌ役を演じているケイリー・アン・ヴォーヒーズは、大学在学中にブロードウェイデビューした新星。会見では『オペラ座―』より「Wishing You Were Somehow Here Again」を、どこまでも透き通る歌声と見事な表現力で聴かせました。
そのケイリーの舞台をまさしくブロードウェイで観たというのが、唯一の日本人キャストとして参加する柚希礼音。「お二人の歌声を聴いて震え上がっています(笑)」と不安を口にしながらも、9月からの稽古に向け、7月から単身ニューヨークで英語や歌、ダンスを磨くと気合い充分。「宝塚の現役時代に勉強のためニューヨークへ行った時、ハロルドさんに紹介して頂きました。その時のお話がまさか現実になるとは思ってもみませんでしたが、今日製作発表に参加して本当なのだと実感しました。ハロルド・プリンスさん、スーザン・ストローマンさんという凄い方々とご一緒できるのは夢のようです」。
そしてこの日、ハロルド・プリンスの声を市村正親が担うことが発表されました。1988年の『オペラ座の怪人』日本初演でファントムを演じた彼が、その一節を歌いながら貫禄の登場。ハロルドのことを“ハル”と呼び、ときには抱き合って再会を喜びます。市村は27年前、ハロルド自身に市村ファントムの歌を聴いてみたいと言われたことを披露。オーディションを受ける予定がなかったので一晩で歌を覚え、見事役をつかんだと言います。「なぜ僕を選んでくれたのかと尋ねたら、『歌よりも、目が危なかったから』と(笑)。その後も『蜘蛛女のキス』など色々やらせて頂きました。彼の作品を10本ほど演じている日本人俳優は僕ぐらいでしょう! 彼こそが劇場の人。日本の劇場を最も愛する僕が、劇場の人、プリンスの声をやるなんて運命的なものを感じます」と市村。ハロルドは「運に恵まれ、リスクを冒しても勇気を忘れずチャンスをつかむという僕の人生のテーマを考えた時、それを表現できる人はイチ(市村)以外考えられなかった!」と大きな信頼を寄せます。
舞台は数々の名曲・名シーンをスーザンの新しい振付も交えて再構築。ブロードウェイに憧れるレオン(柚希)という役での新しいダンスナンバーも。スーザンは「礼音さんの技術の確かさ、類稀なパフォーマンスに感動しました。彼女とは全体の稽古が始まる前に、ニューヨークで二人きりでリハーサルを重ね、彼女自身にも参加してもらいながら振付を考えたいです。彼女が一番最初から関わっていくという試みです」と。聞けば聞くほど柚希の重責、ブロードウェイでも稀にみる贅沢な創作現場となるであろうことが見えてきます。柚希は「先日、渡辺謙さんがブロードウェイで挑戦するドキュメント番組を観て感動しました。私も宝塚を退団した後、安泰な道を選ばず宝塚時代よりも高い壁に挑戦しようと決めました。楽しみながら頑張りたいです!」と力強く語ります。
ハロルドが柚希に寄せる期待も相当なもの。「彼女は素晴らしいダンサーであり、歌も素晴らしい。ブロードウェイの次の日本人のスターは礼音さん!」と最大級の賛辞を贈ります。舞台ではレオン役以外にも、『くたばれ!ヤンキース』『蜘蛛女のキス』などのシーンで劇中の人物を演じるナンバーも用意。衣裳については、「ハロルドさんたちが私のファンの皆さんもショックを受けないようなもの、“カッコいい女子”みたいなものも考えて下さっているんです」と柚希。ハロルドは「実はね、一度だけズボンも履いてもらう予定です。『太平洋序曲』の水夫のシーンです」と、サプライズ的な“男役”についてニッコリ打ち明けます。柚希が「周りは本物の男性ですし、男役に見えなかったらどうしよう」と言うと、「大丈夫、安心して! ちゃんと男役になるから」とハロルド。宝塚観劇歴もあるハロルドならではの勝算があるようです。
終始、和やかな雰囲気で行われた製作発表。まずはこの日本公演を成功させることが、今後の世界展開へのカギとなるそうです。ブロードウェイの観客も羨ましがるであろう、贅沢なクリエイティブスタッフ&スターたちの競演。恐らく二度とない顔合わせの“一生に一度”クラスの感動を、まずはここ日本で味わって!
三井住友VISAカードpresents
ワールドプレミア ミュージカル『プリンス・オブ・ブロードウェイ』
演出:ハロルド・プリンス
共同演出・振付:スーザン・ストローマン
脚本:デヴィッド・トンプソン
音楽スーパーバイザー・編曲:ジェイソン・ロバート・ブラウン
舞台美術デザイン:ベオウルフ・ボリット
衣裳:ウィリアム・アイヴィ・ロング
出演:ラミン・カリムルー、柚希礼音、シュラー・ヘンズリー、ケイリー・アン・ヴォーヒーズ、エミリー・スキナー、ナンシー・オペル、デヴィッド・ピトゥ、マリアンド・トーレス/市村正親(プリンス役声の出演)、ほか
◆東京公演
10月23日(金)~11月22日(日) 東急シアターオーブ
◆大阪公演
11月28日(土)~12月10日(木) 梅田芸術劇場メインホール
公式HP http://pobjp.com/